噂の懺悔室で
ダーッと書いてパッと投稿。頭を空っぽにお読みください。
よろしくお願いします!
「精霊王リオン様、その名のもとに嘘偽りなくわたくしの罪を告白します」
とある王国の中心にある教会。その教会の片隅には自ら犯した罪を懺悔するための小部屋があり、貴族が訪れ己の過ちを告白する。
世間が休日の午後、教会の司祭であるヒューバートは今日もそんな貴族たちの罪に耳を傾ける。
「今までの罪を思い出し、精霊王リオンの慈しみを信じ、あなたの罪を告白してください」
「わたくしには婚約者がいます。家同士の為の政略結婚、お相手の方は家柄、性格、知力共に申し分無い方です。しかし、わたくしはその方を愛することができません。違う方を愛しているのです」
この手の話はよくあり、男女共に婚約者以外の者を愛しているや、婚約の為に別れたが忘れられないなど様々ある。
貴族であるヒューバートは職業柄婚約者がいない。神に仕える身である為、生涯司祭でいる場合は独身ということだ。なので、こういった話を聞くと貴族は大変だな、と思う。
今回の相談者はどこかの貴族のご令嬢だろう。目をつぶり相手の告白をゆっくり聞く。途中相槌を打つことはしない。
「わたくしは、家族のことも、愛する彼のことも捨てられないのです。彼をとれば、家族を裏切り、縁を切られる。家族をとれば愛のない結婚をし、彼との縁がなくなる……わたくしにはどうしたらいいのかわかりません。精霊王リオン様、愚かなわたくしをお助けください……」
きっとこの小さなカーテンの向こうにいる彼女は、いろいろと考え、誰にも相談ができなく苦しかったのだろう。告白の途中、涙で声をつまらせていた。
ご令嬢が嫁ぐのか、婚約者が婿に入るのかはわからないが、自分と想い合う相手と添い遂げたい。しかし家族は裏切れない……
ヒューバートは深呼吸をし、集中する。すると先程まで金髪だったヒューバートの髪が徐々に銀髪に変わる。閉じていた目を開くと、グリーンだった瞳は金色に。
まわりの空気が変わる。カーテン越しでもこの空気を感じ取ったのだろう。ガタッと椅子が動く音がした。
「精霊王リオンはあなたの告白を聞き、次の言葉を授けました。今まで信じていたことは偽りである。己の狭い世界だけでは真実は見えない。世界を広げ、真実を知ればおのずと道は開ける、と」
「どういうこと……?信じていたことは偽り?リオン様!何が偽りなのですか!教えて下さい!」
お告げを聞いたあと、カーテン越しに座っていた彼女が急に取り乱した。
しかし、これ以上は教会と国が定めた規則上教えてはならない。それはヒューバートが持つ特殊な能力のためだ。見た目が変わったのもこの能力を使ったからである。力を使った容姿は言い伝えられている精霊王リオンと同じだった。
この国は稀に能力持ちが生まれる。能力とは様々あり、ヒューバートの能力はこの国ができてから記録の無いものだった。対象の過去・現在・未来が視える能力。国王はヒューバートの能力を<精霊王との共鳴>と呼んでいる。
普通は他の司祭、シスターが日常的なアドバイスをするだけで終わる。ヒューバートは能力を利用し、週に一度だけランダムに数時間だけ担当するのだが、その際のお告げは直接精霊王リオンからの言葉になる。そのお告げが的確だと巷では噂になっている。
きっと彼女もその事に気づいたのだろう。噂の司祭に当たった。ということはこのお告げは本物。
「あなた自身で真実を見抜くのです。考え、行動しなさい。」
「わかりました……愚かなわたくしを導いてくれた精霊王リオン様に感謝いたします。」
彼女が退室したあと、目を閉じ深呼吸をする。先程の記憶を思い出し彼女がどんな選択をするか想像する。
国王には“対象の過去・現在・未来が視える能力”とだけ伝えてある。しかし、実際は対象に関係ある人物のこともわかるチート級な能力だった。
彼女は公爵令嬢で、想っている相手は格下の子爵の次男。この男が一言でいうと最低な男だった。
何人もの女性と関係を持ち、子ができれが堕胎させ、捨てるという行為を繰り返していた。彼女は公爵令嬢という立場をわかっており、身体を許すことはなかったようだ。男は身体だけの関係は諦め良い金蔓にしていた。
彼女には幸せになってもらいたい。政略結婚の相手は侯爵家の三男、こちらは彼女に一目惚れをしているらしい。彼女にはきっと良い未来は訪れる。そう確信するヒューバートであった。
元の容姿に戻ったのを確認すると、そっと懺悔室を後にした。
読んできただきありがとうございました。
毎回感謝しております。うう、ありがてぇ……
もしかしたら続くかもしれません。多分。めいびー。