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3話 絶体絶命?

前回のあらすじ

森の中で迷子になっていたところ、森のくまさん…ではなく黒くて大きくてとっても!格好良い!!(ここ重要)獣に出会い…捕食されかけています。


ふふ、絶体絶命っという感じですねぇ。


何を呑気な。と思うかもしれませんが私、これでも結構焦っているのですよ?本当ですよ?

彼を仕留めたとしてどう処理したものか、とか。

食べるにしてもあの大きさを捌くのは骨が折れそうですし、

そもそも私の性癖どストライクなあの方を殺すのはちょっとなぁでも私も死にたくないですしぃ…うーん。


あ、因みにこんな危機的状況な訳ですが特に恐怖はありません。

…正直、兄達による護身術稽古の時の方が命の危機を感じましたね。あれは…普通の人は死ぬのでは無いですか?

普段はとっても私に甘い人達なのですが、こと教育に至ってはとてつもなく厳しかったのです。寧ろ鬼でしたね鬼。

お陰様で大抵の人には勝てるようになりました。

まぁ、未だに兄達には1度も勝てた試しがないのですが…


ところで…彼は何故に襲ってこないのでしょうね?


かれこれ出会ってから5分は経過しています。

普通の獣ならば物陰からいきなりガブッ!と来ますが、彼は既に叢から出ている状態です。


こんな自分よりも小さくひ弱な存在を未だに生かしているのでしょうか?

出会ってからずーっとグルグルと唸りその口からはダラダラとヨダレを垂らしながらも一体何故…?


まぁ、死にたくは無いので良いのですが。


しかし、それでも少し動いたその瞬間に襲いかかってきそうでもあります。

そんな緊迫した状況の中、何度目かの溜息をつきました。


はぁ、困りましたねぇ…


その時私はあることに気づきました。

あの…なんか、泣いてます?

あ、いえ、正確には涙は見えませんので実際に泣いている訳では無いのですが…。

一見その瞳には狂気が宿っています。しかしチラチラと他の感情も垣間見えました。それはこの状況に、いえ、およそ今の彼に相応しくない深い悲しみと絶望、苦しさが揺らめいて見えます。

到底、捕食者の目でありませんでした。

私がここまで落ち着いていられたのもその瞳の中に狂気はあれど殺気が微塵も含ませていなかったからかもしれませんね。


「…あの、何がそんなに悲しいのですか?

…何があなたを苦しめているのですか?

私を殺さないのは…何故ですか?」


答えが返ってくるとは思っていません。

対話が可能だとも思っていません。それでも、問いかけずにはいられませんでした。


『ア…ジテ…』


その時です。声が聞こえました。


驚きました…。この未知なる生物は人語を解し、それどころか対話が可能なくらいには知能が高いようです。

異世界説が濃厚になってきましたね!いえ、最早確定ですかね。

ところでその声帯どうなっているのですか?とっても構造が気になりますねぇ。


彼は未だに何か言葉を発しています。

それはとても拙く、聞き取りずらいものでした。


『ジデ…ネガ、イ…』


彼は何かを必死に何かを願っているようです。


「…何を、私にして欲しいのですか?」


私は慎重に問いかけます。

すると、彼は一瞬狂気をなくしました。

その代わり生気を失った暗く澱んだ瞳を向けハッキリとこう、言葉を零しました。


『コロシデ…』








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