9話 草原のその先には…
「風が気持ちいいですねぇ」
現在、私はルツの背中に乗って草原の中を疾走中です。
え、お前まさかあの小さな子猫サイズのあんな可愛い子の上に乗っているのか?!なんて奴だ!とか思わないでくださいよ?勿論違いますからね!私はそこまで非道な人間では…と言うよりも、そもそも非道ではありません!
ルツは今、当初出会った頃と同じ2m超の大きさになっているのです。そう、角を折られ(折ったの私ですが)弱体化していた彼は高魔力の漂うあの森に長くいた為か、思った以上に回復が早く、しかも以前よりも強くパワーアップしているようなのです!凄いです!さすが私のペッ…ゲフンゲフン相棒です!
というのも新しく額に生えた宝石のようなもの(魔石に近いもののようなのですが若干違うそうです)のおかげで今までよりもとーっても質の良い魔力を集めることができるようになったんだとか。
そのせいか、体のサイズを自由自在に操れるようになったそうです。…本当にその体どうなっているのです?
それと、後々気づいたのですが…ルツの姿も黒曜石のような美しい毛皮は変わりませんがその瞳は美しい金へと変化を遂げていたのでした。
森の中は常に薄暗かったですからねぇ。
全然、気づきませんでした。
彼のお陰でこの草原も早く抜けることが出来るだろう。と期待していたのですが…残念なことに私の想像以上にこの草原は広く、森を出てからかれこれ3日はたっています。
未だに視界を埋め尽くすのは草のみ。正直飽きました。
こんな時、空腹を感じない体は便利ですね。ここには食料となりそうなものは当然ながら一切見当たりませんから。一応、保存の効く非常食と森で採取した木の実などはありますが…なるべく手はつけないようにしています。
私のペッ…相棒ことルツがいるお陰で私は一切疲れることなく、寧ろ彼の背中の上で暇を持て余している程です。
それに、夜は夜で彼のもっふもふな毛皮で寒さに凍えることなく眠ることが出来るので大変助かっています。
と、この様に当初予定していたものよりも楽に旅をすることができているのです。
ルツを拾ったあの時の自分グッジョブ!です。
『…なぁ、なんか変なこと考えてないか?』
「いいえ、そんなことこれっぽっちも考えていませんよ?それよりも、この草原いつになったら抜けられるのですかねぇ」
『話しそらしたな…さぁな。俺にもわからん』
「そうですか…それは残念です。森の次は草原…はぁ、草ばっかりですねぇ。そろそろ別のものが見たいです…」
それからさらに3日たったある日のこと。
『…い!おい!サク起きろ!』
ルツの上でついうたた寝をしていた私は彼の声に叩き起されました。
「はい!あ、いえ、私は別に寝ていませんよ!」
『そんなことどうでもいい!あれ見ろ!』
「はい?…!!」
そこには漸く草原以外のものが見えました。
それは、あまりにも私達には見なれたものでした。
…森です。
「また森ですか!もう、森はうんざりですぅー!!」




