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AKUYAKU☆令嬢に転生したおっさんのAKUGYOU記1  作者: うさぎ蕎麦
2章「おっさん、ルチーナ・ファルタジナに転生する」
6/40

6話

『Sを言い訳にすんなよ。全く、俺はオリハルコン並みに強度のあるメンタルを持っているから良いけどさ』

『でもー肉体は豆腐ですよねー? 田中さん身体鍛えて無かったですよねー?』

『どう考えても精神的な話の流れで何故肉体の話が出て来る! 確かに俺は身体を鍛えて無くてお腹はぶよぶよしていたけどさ! てか、精神の強度は肯定するんかい!』

『うふふふふー。私、田中さんが日夜自分の精神をハンマーで叩いて鍛えていた事知っていますから!』

『精神はハンマーで叩けねぇよ! 仮に叩けてもハンマーで叩いて強くなる精神ってなんやねん! ちゅーか、ハンマーで叩いた結果オリハルコンになるって俺の精神すげーなおい!』

『やだー。自分で比喩表現しておきながら私に当たり散らすのですかー? そんな自己中心的な思考ですから、ハイ・ウィザードになったのですよー?』

『やかましい、タダのツッコミじゃボケぇ!』 

『やだー。可憐でびゅーてぃふるで美人な女神クリスティーネちゃんが分からない訳ないですよー?』

『ボケとツッコミだのいじりに来ている話の何処に容姿が関係あるんじゃい! もうええ。それで、クリスティーネさんは何処にいるのだ?』


 いい加減収集が付かなさそうなので、この流れを無理矢理断ち切り次の話へ進める。


『私の事はクリスなりクリスティーネちゃんで良いですよー。距離感の掴み方が』

『女神に対してなれなれしく出来る方が異常と僕は思いますが、それで、クリスの居場所は?』


 また話が脱線しそうになったので、クリスティーネの話を遮った。


『ううー、良いじゃないですかー?』


 クリスティーネがゴネ出しそうなので、俺は無言の圧力で切り返す。


『わ、分かりましたよー、鏡台の引き出しがあるじゃないですかー? 引き出しの中から私が居住するエリアに行けますよー。ほら、机の引き出しの中からタイムマシンと繋がっている某有名漫画と同じノリですー。入り口は田中さんの記憶がリンクする前は繋がってなかったので細かい事の心配は無用ですよー』

『分かった、今から其方に向かう』


 俺は、鏡台の引き出しを開けまずは中を覗き込む。

 クリスの言う通り引き出しの奥は漆黒の暗闇が広がっており、そこからどこか別の空間へ繋がっている事が予測出来る。

 予め正解を知っていなければ踏み込もう、なんて考えには至らないが今回は答えを知っている手前多少の勇気さえ捻りだせば飛び込む事は可能だ。

 俺は、一つ深呼吸をしまずは鏡台に付属されている椅子の上に乗り恐る恐る右足から入れ引き出しの中広がる異空間へ突入した。


―キルミール家中庭―


 ここには本作正ヒロイン枠であるステラ・キルミール嬢がお住まいになっている邸宅だ。

 キルミール家は、ファルタジナ家よりも広い領土を持ち、その広さは凡そ30平方キロメートルである。

 これはタルティア王国最大クラスの領地であり、国内最高クラスの貴族であるキルミール家に対しタルティア王国は縁談を持ち掛け、第四王子である、エリウッド・タルティア・アスモフ王子とキルミール家長女、ステラ・キルミール嬢との婚約が成立していたのである。

そのステラ嬢であるが、歳はルチーナと同じく14歳で背丈や体形は女子平均だ。。

 ブラウンカラーで滑らかなミドルヘアーをし、アクセサリーとして薄水色のカチューシャを身に付けている事が特徴である。

 美しく、また清らかに礼儀正しいその風貌は王子様を射止めた事もあり、大衆からの評判も高く、王子との婚約が決まった後も陰ながらに想いだけを伝える男性は後を絶たなかった。

今日は、エリウッド王子がお忍びで来訪しており、ステラ嬢との甘いひと時を過ごしていた。

 小鳥のさえずりが優しく耳にひびき渡り、おだやかな風が柔らかく身体を包み込む。

 本邸の中庭に配置された木製のテーブルに配備されている木製の椅子に座り、陶器製のカップに注がれたローズティーを、対面に座る王子とたしなんでいる。

 可憐で清楚な王道令嬢ステラの婚約者、エリウッド・タルティア・アスモフ王子は笑顔でこたえながらローズティーをゆっくりと口にする。

 エリウッドは、肩程まで掛かる美しいブロンドヘアーをそっと撫でた。

 その仕草を見たステラは口元にそっと手を充て柔らかい笑みを浮かべる。

 髪の美しさだけで無く、日々の鍛錬により鍛え上げられた美しき肉体、男性の平均よりも高い長身、そして誰がどう見てもイケメンと認める美しき容姿。

 ステラと同じく、婚約が決まった後にも関わらず令嬢、他国の王女から陰ながら想いを伝えられる事は多い。

 どちらも清く正しき心も美貌をも持つ完璧なカップルであろう。


「フフ。美しい君を妃に迎え入れらるこの僕は幸せな人間だよ」


 甘いマスクを持つイケメン王子様が、優しい笑みを浮かべながらステラに対してそっとささやく。

 彼にこの様な事を言われ、ほれこまない女性などまずい居ないだろう。


「わたくしも殿下と共に歩むこれから先の人生を幸せに感じとうございます」


 美しく清楚な令嬢ステラもエリウッドと同じく、天使が舞い降りたかの様な柔らかな笑顔を返す。

 彼女もまた、ほれ込まない男性を探す方が無理だろう。


「にゃーお」


 ゆったりとした甘いひと時を過ごす最中、茂みの中より1匹の猫が飛び出すと華麗な跳躍を見せる。


「Oh、宝は守るSA」


 猫の跳躍を見た瞬間その着地点を予想、テーブル中央と判断したエリウッドは、テーブル中央に置かれたクッキーが盛られた皿をそっと救い出す。

 ドスッ。エリウッドの、クッキー救出劇が終わった直後テーブルの中心に猫が前足から着地し、美しく綺麗なテーブルクロスに泥を付け、汚してしまう。


「あら、可愛らしいお客様ですね」


しかし、テーブルクロスを汚されたにも関わらず、ステラはにっこりと猫に対し微笑みを投げかける。

 貴族令嬢によっては、例え動物相手であろうがテーブルクロスを汚された事に対し激高する者もいるだろうが、怒る事無く猫に対し手招きを見せるステラは優しい令嬢である。


「ノンノンノン。お腹は空いてないかい? これはYOUの好物じゃないKA?」


 エリウッド王子も同じく、突然の乱入者に対し怒るどころか、キラリと輝く笑みを見せ皿に乗るクッキーを1枚手に取り猫に差し出す。

 同じ状況であるならば怒り散らし、下手をすれば猫を斬り捨ててしまう王子も居るだろうが、クッキーを差し出すエリウッドもまた心優しい王子なのだろう。


「みゃーお」


 猫は一つあくびをすると、テーブルの上をのそのそと歩き、ステラの膝の上に乗り身身体を丸めた。


「良い子ですわね」


 ステラは膝の上で丸まった猫の頭を優しく撫でた。


「フフッ。YOUは雄猫なのか、ならば仕方無いのSA」


 エリウッドは、再びキラリと輝く笑みを見せながら髪を掻き揚げ、手に持つクッキーが乗せられた皿をテーブルクロスが汚されていない場所に置いた。


「にゃおーん」


 と、草むらの中に隠れていたもう一匹の猫が草むらから飛び出し、エリウッドの膝へ飛び乗り、猫撫で声を上げチラチラとエリウッドが持つクッキーに視線を向ける。


「HAHAHA。YOUは良い子SA」


 エリウッドは、手に持つクッキーを猫に与え、ステラと同じく猫の頭を優しく撫でたのである。

突然の来訪者を受け入れた二人はこのまま夕日が沈むまでの間、神聖とも言えるデートを続けたのであった。

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