表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生したおっさんは悪役令嬢になりきれない  作者: うさぎ蕎麦
2章「おっさん、ルチーナ・ファルタジナに転生する」
6/53

6話

―キルミール家中庭―


 ここには本作正ヒロイン枠であるステラ・キルミール嬢がお住まいになっている邸宅。

 キルミール家は、ファルタジナ家よりも広い領土を持ち、その広さは凡そ30平方キロメートルである。

 これはタルティア王国最大クラスの領地であり、国内最高クラスの貴族であるキルミール家に対しタルティア王国は縁談を持ち掛け、第四王子である、エリウッド・タルティア・アスモフ王子とキルミール家長女、ステラ・キルミール嬢との婚約が成立していたのである。

そのステラ嬢であるが、歳はルチーナと同じく14歳であり身長は特別高い訳でも低い訳でも無いこの時代の平均値。

体形はやや細身ですらっとしたモデル体型であり、流石は貴族令嬢と言ったところだろう。

ブラウンカラーで髪の長さは肩程にまでかかっているおり、チャームポイントとして頭に薄水色のカチューシャを身に着けている。

これがまた中々に似合っており彼女の魅力を一層引き立てている。

 ステラは、その様に美しい貴族令嬢である為かエリウッド王子との婚約が決まった後ですら、せめて彼女に想いだけをと伝える男性が後を絶たないと言う。


 そんな美しく魅力的なステラ嬢であるが、今日はお忍びで自分の元へ来訪してきたエリウッド王子と甘いひと時を過ごしているのであった。

 ステラ嬢の庭園では、小鳥のさえずりが優しく響き渡り風も穏やかであり天気も良好。

 まるでステラ嬢とエリウッドを祝福するかの様に穏やかで柔らかい空気が広がっている。

 

 ステラ嬢とエリウッド王子はこの庭園中央に配置されている木製のテーブルセットの椅子に向かい合う形で座り、幸せな時間を過ごしている。

 テーブルの上には陶器製のカップに注がれたローズティーと数種類のクッキーが乗せられている陶器製の丸いお皿が乗せられていた。


「フフッ、君みたいに美しい女性を妃として向かい入れられるこの僕は幸せな人間さ」

 

 エリウッド王子はローズティーをゆっくりと口にし、肩程まで掛る自らの美しいブロンドヘアーをそっと撫で柔らかな笑みを見せる。

 女性ならば思わず見とれて当然なくらい美しい髪、それだけではなくエリウッドは日々肉体を鍛錬しているのか、身に着けている服の上からでも鍛え上げられた美しい肉体を垣間見える事が出来る。

 そして身長も男性の平均よりも高い。

 誰がどう見てもイケメンであり、現代日本に居るならばほぼ間違いなくアイドルとしてスカウトされるだろう。

 ステラ嬢と同じく、彼女との婚約が決まった後からも密かに思いを寄せていた女性達から想いを伝えられている。

 どちらも、多数の異性からとって非常に魅力的なのである。



「わたくしも殿下と共に歩むこれから先の人生を考えるだけでも幸せで御座います」


 ステラ嬢もまた、エリウッドに対し心底幸福に満ちた笑顔で返す。

 それは平穏に包まれた空間に天使が舞い降りたかの様だった。


「ハハハ、それは光栄な事さ。美しい君を手にした私は兄達からの嫉妬が凄いのさ」


 エリウッドは再度自分の髪をかき上げ笑顔を見せる。

 本当に笑顔が耐えない彼は心の底からステラ嬢と過ごす時間を幸せに思っているのだろう。


「まぁ、そうでしたか。わたくしなんかよりも他国の王女様の方が素晴らしいと思いますのに。それに他の貴族令嬢だってわたくしよりも素晴らしいお方で溢れているのではありませんか?」


 ステラ嬢もまたエリウッドと同じく笑顔を絶やさない。

 だが、僅かながらにステラ嬢の目が曇る。

 なぜならステラ嬢の言う通り、王族からすれば貴族令嬢はそこまで大した存在ではない。

 結婚するにしても別の国の王女と結婚した方が政略的にも優位を取れる為国としてもそちらの方が良い訳である。


「ノンノンノン。そんな事は無いさ」


 エリウッド王子がウィンクを見せながら人差し指を小さく左右に振って見せる。

 自分にとってステラ嬢が一番と言いたいのだろう。

 

「そうですか? お気持ちは嬉しいのですけれど、わたくしからすればファルタジナ領にお住いのルチーナ様はわたくしよりも美人ですし、髪の色もわたくしの様に地味な色で無くお美しいブロンドカラーをしています」


 確かにステラ嬢も美しい。

 一般人レベルなら間違いなくそうであろう。

 しかしながら、王族や貴族令嬢レベルであるとどうしても1歩劣ってしまうとステラ嬢自身がそう思い込んでいるのである。

 例えエリウッド王子がステラ嬢を肯定しても、彼女自身肯定しきれていない様子で謙遜しておりそれは傲慢な性格で無い事の表れでもある。

 

「ルチーナ嬢か。確かに彼女も非常に美しいさ。けれどステラ。僕は彼女の様な傲慢な女性は苦手なのさ。あの様な自信過剰であり他人を平気で蹴落とす人間が妃となって毎日僕のそばに居ようものなら僕の精神がおかしくなってしまうよ」


 エリウッドの口から、ルチーナがよく居る悪役令嬢の様な性格をしている旨が零れる。

 しかしながら、貴族として生まれブロンドカラーの髪とエメラルドグリーンの瞳を授かり絶世の美女として君臨し我がままに育てられたとするならばそれが普通と言えば普通かもしれないが。

 

 「それは意外です。わたくしが知るルチーナ様は非常にお優しいお方でした。わたくしとエリウッド様との御婚約を盛大に祝福して頂いておりますし」


 ステラ嬢は、ルチーナとのやり取りを思い出す。

 貴族達が集まるパーティでルチーナと会話する事があるが自分を罵倒したり卑下したり、その様な言葉を発せられた覚えはない。

 それに、自分だけではなく様々な令嬢にも優しく振舞っていた。

 でも、エリウッドの口からは真逆の言葉が出て来た。

 それは何故だろうとステラ嬢は思った。


「そうなのかい? 僕が君に会う為こっそりとパーティに忍び寄った事は何度もあるだろう? 僕は彼女が他国の王女達の悪口を叩いている様を何度も見ているんだ。確か男性貴族達の前でだったかな」

 

 エリウッドはルチーナの悪事を思い返し顔を曇らせる。

 上手く言語化出来ていないだけでまだまだ彼女の悪事を知っていそうだが。

 

「そうなのですか? それはつまり、この国の王子様を狙う人間を減らしたい意思の元でしょうか?」


 にもかかわらず、何故彼女は自分と第4王子であるエリウッド様との婚約を祝うのだろう? とステラは疑問に思う。

 

「多分そうさ」

「では、何故ルチーナ様はエリウッド様とわたくしとの婚約を祝福したのでしょう?」


 もしもエリウッド王子の言う事が本当だとするならば、ルチーナは自分とエリウッド王子との関係に対して悪く言うはずなのだけれど。

 ステラは小さく首を傾げ、目の前に提示された疑問に対し熟考をする。


「ははは、それは僕が第4王子だからじゃないかな? 確かに僕はこの国の王子だけど第4王子だからね、父や母からの期待は大きく無いしだから僕の権力は大した事無いのさ。そうだね。この国一番の領主の息子よりは高い位じゃないかな?」


 エリウッド王子が言う通り、王位継承権の強い第一王子の方が国王や女王から期待されその権力もまた大きい。


「よく、分かりません」

「きっとルチーナ嬢は、第一王子との婚約を狙っているんじゃないかな? 兄さんは、父と母の期待があまりにも大きくて未だに勉学、肉体の鍛錬、兄さんを成長させ続けているんだ。そのせいもあって婚礼に繋がる話は全て父と母が却下しているって聞いているのさ」


 ステラは、ルチーナの事を野心が高いと考える。

 自分には真似出来る事じゃないなと思い、自分にはエリウッド王子が居るしステラからすれば彼でも十分過ぎる位高根の花なのだから。

 一貴族令嬢に過ぎない自分が、王族との結婚にこぎつけられる事自体極めて素晴らしい事である以上、少なくとも自分はそれで十分と思うしそれ以上を望みたいとも思わなかった。

 

「ルチーナ様はやはり、素晴らしいのですね」

「君がそう言うのならばそうだろうね。僕がルチーナ嬢の考え方と合わないだけさ」


 エリウッド王子はフッと笑みを見せるとカップに残っているローズティーを飲み干した。


「それは致し方ありませんね」


 ステラ嬢も同じくカップに残っているローズティーを飲み干す。

 しばしの間二人はお互いを見つめ合いながら心地の良い沈黙を続ける。

 心地の良い空気が周囲を包み込んでいると茂みの中より1匹の猫が飛び出し二人が座るテーブルセットを前にすると華麗な跳躍を見せる。


「Oh、宝は守るSA」


 にゃーおと可愛い鳴き声をし、跳躍をした猫を見た瞬間エリウッド王子はその着地点を予想、それがテーブル中央と判断したエリウッドはそこに置かれたクッキーが盛られた皿をそっと救い出す。

 ドスッ。

 鈍い音を立て猫がテーブルの中央に着地した。

 エリウッドの良い反応によりクッキー達は無事救出されたものの、白く美しいテーブルクロスには猫の足跡がくっきりとついてしまう。

 

「あら、可愛らしいお客様ですね」


 ステラ嬢は突然の乱入者にも優しく微笑んで見せる。

 どうやらテーブルクロスを汚された事は一切気にも留めていないみたいだ。

 貴族令嬢によっては、例え動物相手であろうがテーブルクロスを汚された事に対し激高する者もいるだろう。

 しかし、怒る事無く猫に対し笑顔を見せ手招きするステラは優しい令嬢であろる。


「ノンノンノン。お腹は空いてないかい? これはユーの好物じゃないか?」


 エリウッド王子もステラ嬢と同じく突然の乱入者に対し怒る事無く、キラリと輝く笑みを見せ皿に乗っているクッキーを1枚手に取り猫に差し出す。

 これもまた、同じ状況であるならば怒り散らし下手をすれば猫を斬り捨ててしまう王子も居るだろうが、その様な事をせず猫にクッキーを差し出すエリウッドの心はやはり優しい。


「みゃーお」


 猫は、エリウッドから差し出されたクッキーを嬉しそうに食べ始める。

 その姿を二人は微笑ましいく眺めている。

 やがて、差し出されたクッキーを食べ終えた猫は一つあくびをすると、テーブルの上をのそのそと歩き、ステラの膝の上に乗り身身体を丸めた。


「ふふ。良い子ですわ」


 ステラは膝の上で丸まった猫の頭を優しく撫でる。


「フフッ。ユーは雄猫なのか、ならば仕方無いのさ」


 エリウッドは猫が自分の元に来なかった事を少しばかり悔しく思った。

 しかしながらその感情をステラに悟られまいと、再びキラリと輝く笑みを見せながら髪を掻き揚げ、手に持っているクッキーが乗せられた皿をテーブルクロスが汚されていない場所に置いた。


「にゃおーん」


 草むらの方から別の猫の鳴き声が聞こえて来た。

 この猫はクッキーが目当てなのか、草むらから飛び出しエリウッドの膝の上へと飛び乗った。

 猫はもう一度可愛く鳴き声を出すと上目遣いでエリウッドを見つめ、クッキーのおねだりをする。


「ハハハ。ユーは良い子さ」


 猫にこの様な可愛いおねだりをされてしまったらエリウッド王子も応えるしかないだろう。

 エリウッドは、手に持つクッキーを猫に与え、ステラと同じく猫の頭を優しく撫ではじめる。

二人は突然の来訪者と共に、太陽が赤く染まるまで幸せなひと時を過ごしたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ