53話
「ふぅむ、貴女がそんな事を言うとは思いませんが、隣のお嬢さんならばそう言うでしょう」
鋭いな、この爺さん。
伊達に年は食っていないと言ったところか。
「いいえ、ルチーナ様は嘘を付きません!」
すぶさまステラ嬢が俺を庇う。
結局彼女に発言させてしまったが、この神父の力量を見誤った俺のミスか。
だからと言って、少し面倒になる程度で済むからどうでも良いと言えばどうでも良いが。
「まぁ、良いでしょう。最終的に責任を取るのはルチーナ様なのですから」
神父がフッっと笑って見せる。
ステラ嬢の性格を一瞬で見極めた上での反応か?
「そう言って頂けると光栄ですわ」
俺はステラ嬢に対し、これ以上口を挟むなと手で伝える。
「しかしながら、そのシスターと父親と合わせてその後はどうするのですか? 教会としても今更貴重なシスターを親元にお返ししろと言われましても困りますし。お父様の方としても今更子供を養う余力があるかと言われたら難しいと思いますが、何か良い案でもおありですか?」
神父が言う事は最もだ。
いや、それ以前にまるですべてを見透かされている様に感じる。
が、この村の状況で仮に子供1人を食わせる余裕すらある人間ならこの爺さんが把握しているだろうしとっくの昔に親元に返しているだろう。
しかし、あのおっさんの話に出て来た5年と言う数字を信じたとしても、少なくとも5年は再会出来ていない。
おっさんの状況を知っていて、再会させない方が双方の為と判断して会わせて居ないのかは分からないが、これ位小さな村ならばそっちの方が可能性が高い。
また、再会した事を知った村役人の誰かが、しっかりとトドメを刺す為更に刺客を送る可能性もある。
とは言え、少なくとも数年以上前の話を蒸し返してくるとは考え難いか。
万が一そうなったとしても、俺が介入するならばその可能性を根絶させる事も可能と言えば可能だ。
ただ、この爺さんが俺に対し交渉を仕掛けて来た事も考慮すると、この神父が俺に何を要求するか次第ではあるが幾ら俺が領主とは言えたった1組の親子に使うリソースとしてはあまりにも大きいくなりそうではある。
後はこの爺さんがどこまで知っているかも気になるが……。
「良い案ですか? 領地に掛かる税率を下げたけれど、それだけでは不満だったかしら?」
正直交渉事はやった事が殆ど無いから苦手だ。
だからと言ってそんな事はいってられない。
これで相手がどう出て来るか次第だが。
「ええ、不満です。人財とは非常に貴重でしてね。育成にもコストが掛かりますし何より彼女と同じく人間性の優れた、正に神の申し子と呼ばれるシスターの代わりを見繕えと言われましてもたったそれだけの見返りで従う事は出来ません」
コイツは俺に感謝する事も無い。
正直コイツは何様だ? 健常な人間ならば、改善傾向を知った時点で更なる改善に期待をすると思うが。
俺が少女だからと舐めているのか、はたまた裏で何か怪しい事をやっているのか。
まぁ、その怪しい事も元おっさんの俺なら何なのか察しは付くけどな。
で、減税の話に疑問を抱かない時点でコイツはその事を知っている。
知った上でこの話を展開したとなると私腹を肥やす事を望んでいるか、手籠めに出来ている部下を手放したく無いか大体その2択に絞れるか。
一応、俺の領主としての手腕を試している可能性も考えられなくはないが、それならばもっと高圧的になるか1度俺に対し賛美の言葉を吐くはず。
だが、相手の歳を考慮する限り読み筋の1つとして入れられなくも無いか。
なら、相手の目的は大方3択に絞って問題無いか。
「コストですか? ならば例えば幾らお望みですか?」
まずは相手の要求が金である可能性を潰しにて見る。
が、神父は怪訝そうな表情を浮かべ、
「人財とは非常に貴重ですからね、お金には代えられませんよ」
と、神父が視線を落とし、眼球を左右に動かしながら言う。
その視線の先は、私の胸元をコンマ数秒、続いてステラたんとサナリスを1秒ずつ程だ。
ってこのやろう! 俺が貧乳で悪かったな貧乳で!
それは置いて、つまりこの神父は手籠めに出来る駒を求めている可能性が飛躍した。
まぁ、これで俺を試している可能性は0だろう、元々薄い読み筋だったし一々潰す必要もない。
なら、その見返りはステラたんとサナリスが読み筋の本線になるか。
「流石神父様ですわ。シスター業は神聖で純白で穢れの無い少女で無ければその代わりを務める事が出来ません」
ぶっちゃけ、シスターなんて適当な孤児の中から育て上げても務まるとは思うし現にそのシスターもそうとは思うけれど。
「ふむ、分かっておる。だからそうじゃな、そう」
ここで不自然に言葉を止める神父。
核心は自分で言わないやや卑怯者なタイプか。
別に現代と違ってICレコーダーで発言を記録されるなんて事もないのにそうするとなれば、裏でシスターを手籠めている人間ならよくある性格としか思えん。
ま、ここまで分かっている以上一旦引き下がって別の手を考えるしかあるまい。
ステラたんを差し出せばその日の内に手籠められても不思議じゃないしサナリスを差し出せばこの神父諸共教会が消し炭になっても可笑しくない。
俺は、1次選考で落とされたし何より領主である以上俺がシスターになるのは不可能だからな。




