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悪役令嬢に転生したおっさんは悪役令嬢になりきれない  作者: うさぎ蕎麦
2-1章「領主になったけれど」
49/49

49話

 実は現代地球のスラム街とは想像より酷いモノではなく、住んでいる家の質は先程の家族達が住む家位のレベルであり、雨風を凌ぐ事位は出来るみたいだ。

 いや、その辺り現代の地球はなんだかんだ言って技術が発達したから、貧困層でも電気はなけれど雨風を凌ぐ事は可能なまで生活水準が上がったのかもしれない。

 それらの屋根に使われるトタン板だってこの世界の技術力では簡単に入手できるとも思えないし。

 ホームレスか。

 そう言えばアメリカでは若者ですらホームレスになっている人がいるって話もあったな。

 技術発展の末、金持ちによる無尽蔵な搾取の結果と思ってはいるが。

 今いる世界の技術レベルなら分かりはするが、現代の技術ですらそうなってしまう、世界情勢を見る限り悪化傾向なのだから民主主義と言うのが正しいのか分からない。

 分からないが、少なくとも今は領主としてやれる事をやるしかないか。

 

 街の東側にある橋の1つに辿り着いた。

 橋が掛けられている川の幅は10M程で、俺達が住んでいる地元によくある小さな川と言った感じだ。

 橋の幅は4-5人が列に並んで通れるくらいで普通の橋と言ったところだ。

 川の水はあまり綺麗ではない。

 時代を考えると、数多の排水を川に垂れ流しているからと考えられる。

 が、ただ単に、大雨が降った後かも知れないが。

 この時代でも、もう少し山の方へ向えば綺麗な小川が見られるのかもしれない。

 

 橋の下をそっと覗き込むと中年っぽいおじさんが1人。

 やせ細っており、いつ栄養失調で死んでも可笑しくないように見えるが、座る気力があるだけまだ大丈夫なのだろうか?

 それ以外のスペースには寝る時に掛けるであろう毛布みたいなものが置かれている。

 ここを拠点としている人間のモノだろう。

 それが、2、いや3つ見られる。

 このエリアにはこのおじさんを含め4人の人が住んでいるのだろうか。

 

 そのおじさんが俺の気配に気付いていない。

 座りながら、橋の裏側を漠然と眺めている。

 生きる気力も活力も何もかもが感じられない。

 人生の現実を突き付けられ、全てを諦め死が訪れるその瞬間を呆然と待っているだけと感じられる。

 動物の本能として、死の恐怖に抗えないが故目の前を流れる川へ飛び込もうとはしないのだろう。

 或いは、ホームレスとは言え仲間がいるからかもしれないが。

 

 

 どうする? 彼と接触するか?

 しかし、先の家族とは違い子供がいる様には見えない。

 また、救ったところでこれから先子供を作る可能性も0に近いだろう。

 冷酷に考えれば、領地として考えればここまで落ちた人間は残念ながら見捨てるしかない。

 ここまで落ちてしまえば、仕事があるかも怪しいから今回下げた税金の恩恵を受けられるかも疑問。

 仮にそれにより食糧支援が出来る人間が現れたとしてもそのリソースは未来のある子供達や若者に割くべきだろう。

 

 日本に居た時だってそうだ。

 俺達おっさん、氷河期世代の人達は国から見捨てられているも同然なんだ。

 苦しくつらい時代を生き抜いた、報われない時代を生き抜いた。

 しかし、待っていたのは、国からの支援は若い人間達。

 企業だって、若い人間への給料は上げるが俺達おっさん世代で彼等より技術はあっても給料は上げない。

 なんて話はよく聞いた。

 

 だから、日本国がやって来たように一領主として俺も、心を鬼にしてでもこれら未来の見えないおっさんは切り捨てるしかない。

 さもなくば、守れるモノも守れなくなってしまう。

 俺が覚悟を決め、この場を立ち去ろうとするが、

 

「すみません」


 橋の下からステラたんの声が聞こえて来た。

 まぁ、そりゃーそうなるか。

 彼女は目の前に困っている人が居たら放っておけない正義に溢れる少女なんだから。

 それが、16歳の小娘となれば今目の前にいるホームレスと接触して助けようとするのは当然の事だよな。

 そんな性格の少女が、己の正義を抑制し見届ける、何てことは人生2週目でも無い限り不可能に近い。

 この盤面をどうにかするのもおっさんの仕事なのだろう、しかたあるまい。

 

 俺はそう言えば自分にもあった学生時代の正義感を思い出し、ステラ単の元へ歩みを進める。

 

「あー。なんのようか? 俺に剥ぐモノはなにもねぇぞ?」


 自分へ向け声を掛けたステラたんに、虚ろな目のままのおっさんがゆっくりと振り返る。

 どうやら彼は身なりの整った私達から物をはぎ取る事も私達を売り飛ばそうともする気力すらない様だ。

 いや、彼がそこまでの悪党ではないからホームレスになってしまったのかもしれないが。

 

「見受けしたところ、あまりにも酷く困窮されている様でしたから、私達に出来る事は無いかと思いまして」


 相手がみすぼらしい格好をしたおっさんであろうが真っ直ぐな瞳を向けるステラたん。

 

「ははは、お嬢ちゃんは貴族令嬢か? 気を付けな、この村は分からんが、別の村なら売り飛ばされちまうぜ? お嬢ちゃんみたいなタイプは悪党にとってカモだからな、騙されちまってドン、だ」

 

 おっさんの話では、この村は領地内では治安が良い方なのだろう。

 で、恐らく盗賊団が幾つも存在する村もあると考えた方が良いか。

 領地の状況が悪すぎる以上、生きて行く為に盗みをし女子供を売り飛ばす集団が居ても、それ等が集まる村はむしろ無い方が異常なくらいか。

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