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37話

「そ、その、ステラさんが私の衣服をひん剥いたんですよぉぉぉぉ」


 サナリスの言い分だと、ステラ嬢が無理矢理サナリスの衣服を引っぺがした様に聞こえる。


「そうですか? わたくしの耳にはサナリスがステラ嬢との脱衣勝負に完膚なきまで負けてしまってすっぽんぽんになってしまったと聞えてきましたわ」

「はい、ルチーナ様、そうで御座います」


 この状況下ですらにっこりと笑顔を見せながら答えるステラ嬢だ。


「ふぇぇぇぇん、そうですよぉぉぉ。でもっ、でもっ、全裸なんて恥かしいですぅぅぅ。殿方に見られるなんて嫌ですぅぅぅぅ」


 一応魔族も裸姿を男に見られる事は恥ずかしい様だ。


「貴女の言っている事も間違いではありませんわ。しかし、勝負に負けた以上受け入れるしかありません」


「る、るぢぃぃぃなざまぁぁぁぁ!?!?!?」


 サナリスが涙を浮かべながら俺の元にすがり寄ろうとする。

 って、これ、俺の服で鼻を噛むパターンじゃないか!?

 俺は咄嗟にサイドステップを踏みサナリスを回避。


「はわっ!?」


 俺に回避されたサナリスは、ドテッと音を立て地面に突っ伏す事になった。 


「と言いたい所ですが、今からアーブラハム邸に侵攻を掛けますわ。真面目な場面ですので、今はサナリスの衣服を返してあげなさい」

「ルチーナ様のご命令でしたら致し方ありません」


 ステラ嬢はほんの僅かながら残念そうな表情を浮かべると、サナリスに勝負の結果剥ぎ取った衣服を返した。


「今回の問題が解決次第戦利品を回収なさい」


 俺の言葉を聞いたステラ嬢は、やはりほんの僅かながら嬉しそうな笑顔を見せたのだった。

 はぁ、今がアーブラハム邸への侵攻中じゃ無ければな、一糸まとわぬ姿のサナリスを心行くまで堪能していたのに。

 非常に残念な気持ちを抑えながら、俺は二人に待機指示をしカボッチャムの外へ出た。

 カボッチャムの外に出て、カボッチャムを隠した場所から少し歩き、平原の整備された道路に出た所で俺はアイテムボックスから原付含め必要な道具を取り出し身に付ける。

 ライダースーツを身にまといし金髪碧眼の少女。

 ここまではカッコイイと思うのだが、原付のヘルメットに原付用のゴーグルか、少し微妙な感じがすると思ったが14歳の少女ならば思う程悪い格好ではなさそうだ。

 俺は原付を走らせアーブラハム邸の入り口に近付く。

 入り口は鉄格子に見える門に閉ざされ、二人の門番が侵入者を見張っている。

 強行突破、と言いたいが現在の装備では難しい。

 ひとまず門番と対話してみてから改めて考えよう。


「何者だ!」


 俺が門番に話掛けるよりも早く門番が声を上げる。

 俺は、原付を停車させ門番に返事をする。


「わたくし、ファルタジナ家令嬢、ルチーナファルタジナで御座います」

「なんだと!? その様な奇妙な馬に乗り、奇妙な服を纏う者がルチーナ様だと!? そんな事ある訳なかろう!」


 門番が言う事はごもっともだ。

 まず第一に、この世界にライダースーツなんて存在しない訳で、どう考えても異端なファッションにしか見えない。

 更に、彼等にとって原付なんて未知の物体で、異端なファッションをし、未知の物体に乗る人間なんてただの不審者以外何物でも無い。

 初手は完全に失敗か、ここからどうにか挽回しなければ強行突破せざるを得なくなるが。


「おい、待て異端なファッションに奇特な物を被っているがこの顔立ち、ルチーナ様に間違いない」


 と思っていたら、1人の門番は俺を知っている様だ。

 貴族令嬢は自分が思う以上に有名なんだな。


「本当か? お前、そう言ってこの女の子を宜しくしたいだけじゃないのか?」

「ばっ、そんな訳あるか! これを見ろ、俺は昔からルチーナ様のファンなんだよ!」


 そう言って門番は懐の中から丁度写真が入りそうな大きさのケースを取り出す。

 そのケースの中からは1枚の写真とはいかないが、恐らく鉛筆で書いたであろう精巧な少女の絵が描かれていた紙が入っていた。

 紙に描かれていた少女の絵は、彼の言う通り俺の姿と酷似している。

 恐らくどこかで誰かが俺の自画像を描いたのだろう。


「おまえ、それっ、以前高い買い物したって言っていた時に買ったものか?」

「ああそうさ、大金叩いて買ったんだ!」


 ブロマイドに近い物に対して大金と言われる事に少々違和感を覚えるが、この時代、手描きでなければその手のモノを生み出せないとなれば値が張るのは仕方がない事か。

 自分のブロマイドに対し高値がついているのは少しばかり嬉しく思えてくるのだけども。


「確かにお前の言う通りその絵と目の前の少女は同じだな」

「そうだろ? そうだろ? ささっ、ルチーナ様、出来れば一つだけ頼みがあるのですが」


 そう言われてロクな事は浮かばないが、最悪原付で逃げれる訳だから聞くだけ聞こう。


「どの様な事で御座いましょうか?」


 俺はステラ嬢ほどではないが柔らかめの笑顔を見せ返事をした。


「そ、その、この絵の裏側にルチーナ様のサインを書いて下さいっ!」


 門番が少々恥じらいながらも、ペンを取り出し俺に頼んだ。


「おほほ、お安い御用で御座いますわ」


 俺はペンを受け取ると、サラサラサラっとテキトーなサインを書き門番にペンを返した。


「うひょっ、あ、有難う御座いますっ! へへっ、みんなに自慢してやるぜ」


 俺のサインを受け取った門番はまるで少年の様にはしゃいでいる。

 もう一人の門番は、俺に興味関心が無いのか若干冷ややかな目をしながら愛想笑いをしている。

 多分20歳位の彼等から見て14歳の俺に興味を示すのはロリコンに片足を突っ込んでいる以上此方の反応の方が正しいとは思うが。


「お聞きしたい事が御座いますが宜しくて?」

「どうぞどうぞ、私の家族構成から趣味、恋人の話まで何なりとお聞きくださいませ!」


 得意気に言う門番だが、生憎アンタのプライベート情報など一切合切興味関心は無い。


「エリウッド様に関してお聞きしたい事が御座います」

「え、エリウッド様? まさか、ルチーナ様はエリウッド様と!?」


 門番は稲妻に撃たれたかの様に衝撃を受けている。

 確かにエリウッドからは惚れ薬の力とは言え俺を追い回しているが、どうしてそんな発想をするのかとツッコミを入れたくなるところだ。


「おい、全く。ルチーナ様がお前のプライベートに興味がある訳無いだろう。エリウッド様ならアーブラハム様の居る本邸に向かいました。私がご案内いたします」


 と言って門番は相方に視線で圧を掛けた。


「クッ、行って来いよ」


 相方は言い争いをしようと思ったが思い留まったかのように見える。

 こう見えても一応、職務中である自覚はある様だ。


「感謝いたしますわ」


 俺は、自分に興味を抱いていない方の門番に連れられアーブラハム本邸に案内された。

 その道中、彼からは原付について根掘り葉掘り聞かれた。

 どうやら彼は現代で言う機械オタクみたいな感じで不思議な物体そのものに対して非常に興味がある様だった。

 また、俺が身に着けているヘルメットにも興味を示しており、軽くて強度の高い素晴らしい防具と絶賛していた。

 確かにこの世界からしたら、たかが原付のヘルメットですら優秀な頭防具なのだろう。

 道中すれ違うアーブラハム邸に使用される人達も、俺自身や原付に興味を示すモノがおり、時折声を掛けられては称賛される事になったのだった。

 これはこれで、なんだか小さな組織とは言えスターになったみたいで悪い気はしないな。

 もしも前世の時に同じ経験をしていたらまた違った人生になったのかもしれない。


「ルチーナ様がエリウッド様をお探しの様だ」

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