表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/53

29話

 当のステラ嬢は首を傾げ、自分の考えと俺の言葉を脳内で吟味している様だった。


「もしも、一悪役令嬢に過ぎないキャラが王女様を誘拐し魔王に献上しようものなそれは立派な悪行で御座いますわ。しかしながら、悪役令嬢が一令嬢どころか王女様を誘拐など難易度SSSランクの偉業を成し遂げられるゲームをわたくしは知りません」

「つ、作れば良いと思います」


 サナリスが恐る恐る言う。


「いえ、ジャンルの問題です。悪役令嬢が主人公となるゲームにおいて考えられるジャンルは恋愛趣味レーションです。しかし、魔王が出現するゲームとなればRPGとなります。この時点で作る事は不可能に近いでしょう」

「ふぁ、ふぁい、そ、そうです、ひ、ひつれいひました」

「いえ、意見を仰る事は大切です、有難う。前置きはここまでです。皆様、これからわたくしが行う悪行について何か良い意見が御座いましたら述べて下さい」


 俺が皆に尋ねると、 真っ先にステラ嬢が挙手し、俺は彼女の名を呼び指名する。


「ルチーナ様。メインヒロインへの嫌がらせは如何でしょうか?」

「それはわたくしがステラ嬢の靴の中にナメクジを入れたり、寝ているステラ嬢の額に肉と書けばよろしくて?」


 いや、待てよ? この物語の主人公は俺であって今は、中身は兎も角外見は女の子だ。

 女性主人公にとってのヒロインとなると? いや、以前ヒロインという単語に付いて調べてみたら女主人公と言う解説があった、だから。

 俺は恐る恐るエリウッドへと視線を向ける。


「HAHAHA、ナメクジNE、Don’tこいNE!」


 エリウッドが言う、どんと、の発音に違和感を覚えたが、これじゃ良いのか悪いのか分からないが、エリウッドの性格を考慮すれば良いの方だろう。


「対象者が喜んでしまっては嫌がらせになりませんことよ」

「そうで御座います。もしもそれがルチーナ様による嫌がらせと想像致しましたらゾクゾクする気が致します。身体の奥底から悦びの感情が湧いてくるかもしれません」


 柔らかい笑顔を見せながら自分がM属性を持っていると暴露するステラ嬢。

 本人は悪気無く言っている様に聞こえる、まさかステラ嬢は天然なのだろうか?


「残念ながら、メインヒロインへの嫌がらせは却下ですわ。世間一般で考えたら嫌がらせとしても、わたくしが行う事で喜ばせてしまっては嫌がらせとして成立致しません」

「はいはいは~い」

「サナリス、何か良い案がおありで?」

「王都の破壊が良いと思いまーす。魔法攻撃だったら私にお任せください☆」


 先程とは違い、えっへん、と胸をそらしながら得意気になるサナリスだ。


「サナリスさん。ここは剣と魔法が存在しない世界でありますわ。また、私達は人間であり、同じ人間に対して攻撃行動をする訳ですわ。竜の冒険の様に魔族が人間を攻撃する訳ではありません」

「えっと、どういう事ですかぁ?」

「そうですわね。王都の破壊をやった日にはわたくしが衛兵に捕縛され牢獄へ送り込まれてしまいますわ。これは悪行の範疇を超え重犯罪になってしまいます。タイトルを悪行記から犯罪記に変えなければなりません」

「ふ、ふええ????」


 俺の言葉が理解出来ないのか、サナリスが目をぐるぐるさせている。

 言葉を長くし過ぎたか?


「サナリスさんの意見を実行すればわたくしが捕まってしまいますわ」

「ふぁ、ふぁい、それは大変と思います」


 分かり易く簡潔にまとめてみたがサナリスはいまいち理解していないようだった。

 ここで、エリウッドが手を上げ意見を述べる。


「HAHAHA、国民に重税を課すのSA」


 こちらもまた得意気に、いつものキラリ歯を見せながら言う。


「エリウッド様。わたくしにその様な権限は御座いません、仮に勝手にやろうモノなら父上からシバキあげられてしまう事でしょう」

「ノンノンノン、王子様のこの僕が言えば問題解決SA」


 チッチッチと人差し指を振りながら言うエリウッド。

 こういうときだけ真面目になられても正直困惑するが。

 しかし、領民に重税を課すのは悪行と言えば悪行だが、果たしてそれだけで何か面白い事が起こるかと言われれば疑問を抱くところだ。


「エリウッド様、素晴らしいですね。悪行の候補として採用させて頂きますわ」

「そ、それなら、法律に違反する事を上から順にやっていくのはどうですか?」


 サナリスの意見だ。

 この世界の法律はよく分からないが、日本に居た時の法律を参考に、なんなら上から順に実行してみるのも良いだろう。


「成る程、名案ですね。それではわたくしが知っている法律を元に悪行を働く事に致しましょう」


 これでは俺が勝手に決めてしまったように聞こえるが、今回の目的は皆の意見を聞きたい、だから大丈夫だろう。


「HAHAHA。私の意見は切り札として残しておくのが良いSA」


 いつものキメ顔で言うエリウッド。

 彼は大した事を考えていない様に見えるが、意外と空気とやらは読めるのだろうか。

 さて、方針は決まった。

 日本の刑法はファルタジナリングを使えば調べる事位出来るだろう。

 俺はファルタジナリングを使い、日本国の法律を調べる。

 さらさらっと調べた所、悪行として成立させるならば軽犯罪法が適切だろうそれ以外の法律では何も出来ないだの、犯罪者ルチーナコースになってしまうからだ。

 で、軽犯罪法に付いて調べた上で俺の悪行に向いていそうなものを紙に書き写したところ、


1.奴隷を買って解放。

2.王族が立ち入り禁止した場所に入る。

3.役人に嘘をばら撒く。

4.乞食をする。

5.覗きをする。

 

 うーん、残念ながらあまり良い案とは言えない、ある程度案の研磨をする必要を感じる。

 1番は奴隷をコキ使うだけで別に面白いとは思えない。

 2番は立ち入り禁止エリアに入るだけ、仮に俺が小学生くらいなら秘密基地の1つでも探しに行けばいいが、残念ながら周囲含め中学生相当の年齢でそれは悲しいモノがある。

 もしも今いる世界が魔物はびこる世界なら俺達がそのエリアに居る強力な魔物を討伐し英雄になる事も可能だが、残念ながらその可能性は無い。

 3番は役人に嘘をばら撒いて扇動ってところ? それで何するのさ。山奥でドラゴンがでましたーーーって? まず誰が信じる? 俺が白い目で見られて終わりだな。

 4番はタイトルを乞食令嬢ルチーナの野良生活記とでも変えれば良いのか? 一応インド辺りではプロ乞食あるらしいが、だからと言って乞食をやって面白そうかと言われたらそれは無い。

 5番は既にステラ嬢と一緒にお風呂に入っている訳で、そもそも女が女風呂覗いても何の問題もないというか。だったら男風呂覗けって事か? それはそれで何の問題も無いというか堂々と見せて来そうで捕まりそうもない。

 うーん、リストアップして改めて見てもイマイチか、だったら何も考えずに上から順に実行して行けば良いか。

 次、移動手段の確保か。

 この世界では馬や馬車の移動が主流だけど、出来るならばもう少し高性能なモノが欲しい所。


『それならー。田中さんの収納ボックスに、適当に入れておきましたよー。他の方々の乗り物も用意しておきましたからー』


 と、クリスティーネだ。何とも都合、もとい気の利く女神様だ。

 ここは素直に感謝するしかあるまい。


『押し入れの中から田中さん達の活躍を見させてもらいますねー』


 クリスティーネからはいつも潜伏させている悪意を感じられなかったが、先に言っていたゲームが魅力的なのだろうか?


「それでは皆様、早速明朝よりわたくしの悪行を実行致しましょう。移動手段につきましてはクリスティーネ様が用意して頂いたそうです。会議はこれにて終了です、皆さま有難う御座いました」


 俺は閉幕の言葉を述べると一度自室へ戻った。

 ステラ嬢とエリウッド王子も自宅へ戻り、サナリスは隣の部屋にある押し入れの下段に向かって言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ