28話
精々走って帰って来るだけで何故そこまで楽し気に出来るかと疑問に思うと、
どがーーーーーーん!!!!
再び部屋近くで轟音が聞えた。
隣の部屋からか!? まさか!?
と思えば、何かが転がる音が聞こえ今いる部屋の入り口の扉を突き破る音が聞こえたと思うと、コテッと音を立てエリウッドが俺達の目の前で突っ伏した。
「は?」
何が起きたのか理解に苦しむ俺はを丸くしながらエリウッドを眺める。
「あはははー。実はエリウッド君は世界を一周して来たんですよー☆ それでそれでー、田中さんってサナリスちゃんの事気にかけていましたよねー? モニター越しでしっかり見ていましたからー」
ウィンクを見せ、人差し指をチッチッチッと振るクリスティーネだ。
いや、今なんつった? サナリスって言葉が聞えたんだけど?
「サナリスさんがどうなるのですか?」
「うふふ、実はエリウッド君が飛翔している道中に、竜の冒険に繋がる空間を設置しておいたのよー。それでー、そこからエリウッド君がコンマ0数秒滞在してー、サナリスちゃんがエリウッド君の背中に乗る様にしたのよー」
なんだかとんでも理論を述べる女神だ。
しかし、神々ネットワークから入手出来るアイテムのチートさを知っている俺からすれば別に女神クリスティーネが何かしらのチート技を持っていても不思議じゃないというか持っていてもらわなければ、容姿の美しさとお胸の大きさ位しか自慢の無いただの性格が悪いS女になってしまう。
「うふふー。田中さーん、美しい容姿と巨乳だけでも男性陣の評価点は高いですからー。1億歩譲りましてー、例え私が性格の悪いSでも、ハイ・ウィザードのどーていさんの田中さんと比べたら月とミジンコ位、異性からの需要に差はありますよー」
俺に向け、にっこりと笑顔を見せるクリスティーネ。
勿論その笑顔は小悪魔染みて、だ。
「俺はすっぽん未満かよ!」
思わず、今の自分が悪役令嬢ルチーナである事を忘れ素のツッコミを入れてしまう。
「田中さんがどうしてもすっぽんになりたいのでしたらー、私は太陽で良いですよー? あ、違いましたかー? すっぽんぽんになりたかったのですかー? 丁度エリウッド君居ますから可愛いお胸さん見せ付けますかー?」
クリスティーネは豊満なお胸さんをたゆんたゆんと揺らして、俺に見せ付ける。
ふーん? 良いよ? 君が私の胸に対してマウントを取るというなら、遠慮なくそのお胸さんをもみもみしてやろうじゃないか!
俺がにやけながら、クリスティーネのお胸さんを両手でわしづかみにしてやろうとしたところで、
「あははー。田中さーん? この世界でも星の中心部に行きたいのですかー? 良いですよー? 田中さんは転生出来ますからー。でも、次の世界ではミジンコかすっぽんのどちらかに転生させちゃいますけどー」
小悪魔が10匹程踊って居そうな笑顔を見せるクリスティーネ。
チッ、ミジンコに転生なんてごめんだ、ここは素直にクリスティーネに従うしかない。
「失礼致しました、話を戻しましょう」
「分かれば良いですよー?」
クリスティーネは、地面で意識を失っているエリウッド王子と、サナリスに対し多分天界製の薬を飲ませた。
「はわっ!? こ、ここは何処ですか!? あれあれ? ルチーナ様? お角は取られたんですか?」
どうやら、意識を取り戻した事で別の場所に連れて来られたのかサナリスは周囲を見渡しながら目を丸くしている。
「ふふん。ここはですねー」
クリスティーネが、かくかくしかじかとサナリスに対し懇切丁寧に説明した。
そこには、俺に対する対応とは打って変わり純真で慈愛に満ちた女神と言う言葉が似合う美しく可憐で優しいクリスティーネの姿があった。
「ふえぇ!? 勇者エリウッドさんとステラ王女さんですか! はわわ、はわわわわ」
クリスティーネの説明が終わり、ステラ王女と目があったところでサナリスは、ばびゅーんと音を立て部屋の隅にしゃがみ込むと頭を抱えながらガタガタ震えていた。
「サナリス様。竜の冒険での非礼をお詫び致します。ですが、現在の私はあの時の様な力を持っておりません故ご安心ください」
とステラ嬢が言うのだが。
純真無垢な表情でサナリスに詫びているステラ嬢に対して、今さっきそのハリセンでフルスイングし、エリウッド王子を世界一周させて来た事はつっこんではいけない気がする。
「うふふー。感動の再会が出来て良かったですねー。さーさー、これからの方針を皆様でお話しましょうー」
ニコニコ笑顔のクリスティーネだ。
勿論俺に対しては小悪魔の気配を見せるのだが。
今回何を考えているかは分からないが、大方今さっきステラ嬢に対して思った事が関係するのだろう。
と思ったらクリスティーネから、小さく『そうですよ』と聞こえたこれも一種の嫌がらせと言う事にし俺は再び椅子に座った。
続いてステラ嬢、エリウッド王子はさっきと同じ場所に座り、サナリスはエリウッドの隣に座った。
クリスティーネはどうしたかというと、
「私、やりたいゲームがありますからー、続きのプレイをしてきますー」
と言って会議室を後にした。多分押し入れに向かったのだろう。
これからの方針か、確かに考えていなかったというか何と言うか割と重要な事に気が付いた様な?
「皆様、わたくしははある重要な事に気が付きましたわ」
「ふぇ? ルチーナ様?」
「このお話はわたくしルチーナ・ファルタジナが悪行をする話です。ここに来るまで大した悪行を致しておりません」
俺はキリッとした表情で俺は説明するが、エリウッド王子はまともに聞いている様には見えない。
「わたくしが行った悪行と言いましたら、正規ヒロインと王子様との婚約破棄、ゲーム内部での魔王を演じ、王女を拉致しただに過ぎません。このお話が一般的な令嬢物のお話でしたら婚約破棄は重大事件でありますが、このお話はコメディに該当しております。残念ながら悪行としてのパワーは足りておりません!」
その当事者を前に言っているが、惚れ薬のお陰かそれに対しステラ嬢からつっこまれる事は無かった。
「竜の冒険で魔王を演じましたが、残念ながらわたくしは折角魔王になったにもかかわらず村の破壊すら行っておりません」
「ルチーナ様、王女様の誘拐は悪行に該当すると存じ上げます」
と思ったら、ステラ嬢が手を挙げ意見を述べた。
「ステラ嬢。魔王が王女様を誘拐するというのはRPGゲームであるならば定石中の定石で御座います。そう、お腹がすいたらメロンパンを買って食べる程度の日常と変わらない誰が見ても当たり前中の当たり前の事でありまして、決してそれが悪行として認識される事はありません!」
「た、確かにそうです」
目から鱗を零しながら相槌を打ったのはサナリスだ。




