22話
どっちが卑怯やねん!
はぁ、別に俺は無駄な殺生したい訳じゃないから良いけどさぁ。
俺は、自分の命と生活の保障さえすればこの国のすべてを差し出すとほざいた国王の要求を受け入れ西の国の制圧を完了させた。
多分これでゲームがクリア出来ると思うが……。
『勇者エリウッドの故郷、西の国は魔族によって陥落してしまった! 故郷の陥落を許したエリウッドは他国の人間より勇者としての地位をはく奪されてしまう。勇者を失ったこの世界は魔王ルチーナの手により魔族が支配する世界となってしまった!』
と、テロップが現れて。
【GAME OVER】
→セーブした場所から始める。
あきらめる。
どうやら、俺が勇者を倒してしまっては駄目な様だ。
パッケージ見ても明らかに勇者が魔王を倒す絵だったし仕方ないのかもしれない。
しかし、エリウッドの奴最後にセーブしたの何処なんやろ? まぁ、大して時間経ってないしどこからでも良いんだけど。
【GAME OVER】
セーブした場所から始める。
→あきらめる
っておい! あきらめるんかいな! あんたの国家には最強の王女様がいるやんけ! 王女様取り戻せば全然勝機あるやろ!
俺が心の中でツッコミを入れると、カーソルは元に戻った。
よし、それでこそ……。
と思えばカーソルは再びあきらめるを差し……。
って! ルーレットすんな! ゲームオーバー画面で何遊んでんねん! さっさとセーブした場所から再開しぃや!
再開せんかったら俺が動かれへんやん!
凡そ3分後にルーレットは止まり、まるでカップラーメンにお湯を待っている間の暇つぶしと言わんばかりにセーブした場所から再開をしてくれたのであった。
「ルチーナ様ぁ? エリウッド様が、ルチーナ様がなんちゃらかんちゃらって言ってますよ?」
サリナスから聞いた記憶のある言葉が聞こえて来た。
無事セーブした場所から再開したみたいで、状況から予測する限りエリウッドは蘇生してすぐセーブした様だ。
エリウッドが街の外へ出るまでの間の数言は無難に先と同じ事を繰り返した。
さて、先程の展開ではゲームオーバーになってしまった以上恐らくこのゲームをクリアする為には多分俺が討伐されなければならない。
ステラ王女の魔法でも受ければ今すぐにでもゲームを終わらせられそうだが、それでは物足りない。
エリウッド君が魔城をどうやって突破するのか位見ておきたいところだ。
「よし、サリナス、魔城に罠を設置するぞ」
「ええ!? 卑怯じゃないですか?」
「あんなぁ、だから俺達は魔族だぞ? 卑怯は魔族の専売特許だ」
サナリスにとっては侵入者対策で罠を仕掛けても卑怯なのか。
否定は出来ないが、まさかサリナス? 純白無垢な何処かの誰かさんがこのゲームの中に間違って入ったとか?
って、んな訳ねーか。
「そうですけどぉ」
ほっぺたを膨らませむすーっとするサリナス。
(前略)可愛いッ。
ちょっとばかし拗ねるなんて可愛いサリナスを拝ませてもらった俺は二手に分かれ城内に様々な罠を仕掛けた。
それから数日後。
勇者エリウッドは苦難の果てに我が魔城の前に到達したのである。
さて、魔城の門を潜るエリウッドだ。
「ルチーナ様、ここに罠仕掛けたんですよ☆」
ぴょこぴょことはしゃぎながら嬉しそうに言うサナリス。
魔城の門にどんな罠を仕掛けたのか楽しみなところ。
さぁ、勇者エリウッドは魔城の門を潜る。
床から、カチッっと音が鳴り響く。
そして……。
ゴーーーーン!!!!
派手な音が鳴り響き、勇者エリウッドは頭を押さえる。
勇者エリウッドの頭を直撃した物体が地面に落下し再度鮮やかな金属音を周囲になりひびかせ。
「って、勇者に仕掛けた罠がなんで金タライなんだよ! 相手はナンボ死んでも復活する勇者やで! もっとド派手な罠を仕掛けてへんねん!」
「だ、だってぇ、可哀そうじゃないですかぁ?」
もじもじしながら言い訳をするサナリス。
くそっ、可愛いから許してやる。
「まぁええわ。他にも罠は仕掛けたんだろ?」
「はいっ!」
元気な返事をするサナリス。
これは期待……。
した瞬間、次の罠を踏んだエリウッドは、再度頭上からの攻撃を受ける。
ぽふっ、と音を立て白い粉が舞散り、髪の一部が真っ白になったエリウッドはコホコホと咳き込む。
「ちょーーーーーとまて!!!!! なんで魔城に入って5歩のエリアに仕掛けた罠が黒板消しなんだよ!!!! 殺傷能力どころかダメージ能力ゼロやんけ!!!!」
「でも、チョークの粉たっぷり付けておきましたから!」
腰に手を当て胸を逸らしながら自信満々に言うサナリス。
「そーゆう問題ちゃうねん!」
「ええー!? つ、次は大丈夫ですから?」
「なんで疑問形やねん!」
とツッコミを入れたところでエリウッドは次の罠を踏んだ。
カチッと音がし、エリウッドが3歩進むと突然床が抜けた。
「ほほう、落とし穴か。って事は落下した先に毒の塗った刃物でも仕込んだんやろ?」
「はい!」
なんだ、ちゃんとやれるじゃないか。
と思った瞬間、ぬちょっとなんだか奇妙な音が俺の耳に入った。
「ぬちょっ? なんか変な音がしたんだけど」
「はい! 落とし穴の先に豆腐を敷き詰めておきました☆」
「ほうほう、そらまたえらいモンを仕込みましたなぁ、これでエリウッドはんはねちょねちょのぐちょぐちょになって。……ってなんでやねん!!!! 殺傷能力どころか逆にクッションになって助けてんやん! 何の為に落とし穴掘ったんや! ちゅーか食べ物粗末にすんなや!」
「そこは大丈夫です! ちゃんと何日放置されたか分からない完全に腐った豆腐を使いましたから!」
再び腰に手をあてえっへんと胸を反らしながら自慢気に言うサナリスだ。
しかし、腐った豆腐に塗れたって、即死するより可哀そうな気がしなくもないが。
「そうか、確かに腐った食料は毒にならなくもならないな」
「えへへ。そうでしょそうでしょ」
もっと褒めてと言いたげなサナリスだ。
仕方がないので、可愛さに免じて頭をナデナデしてあげる事にした。
腐った豆腐塗れになったエリウッド。
彼は俺が罠を仕掛けたエリアに到達、ふはは、俺が罠とはどういうものかをサナリスに教えてやろうじゃないか!
さぁ見るがいいサナリス、俺が仕掛けた罠を!
っておい! お前腐った豆腐食ってんじゃねぇよ! しかも何旨そうなモン食った顔してやがんだ! 腹壊すぞ腹!
あ、お腹抑えながら青い顔し始めた。
ちょっと待て、お前後1歩前に進めば俺が仕掛けた罠があるっつーのに!
あと一歩、あと一歩前に進めば俺の罠に掛かってお前は教会送りになるんだぞ!
屈みこんで蹲って、寝っ転がってもがき出したぞ、おいまさかお前! ちょっと待て、お前の身体が棺桶になって、
『くさったとうふをたべおなかをこわしたゆうしゃえりうっどはしんでしまった!』
おい! 死ぬんかい! お前死ぬんかい! よりによって魔物の魔法でも攻撃でもなく腐った豆腐食って腹壊してッ!
俺が頭を抱えていると、
「へっへーん、ルチーナ様! 見ました? 私凄いでしょ☆」
瞳をキラキラと輝かせながらお褒めの言葉を欲するサナリスだ。
「お、おぅ、やるな、サナリス」
俺はサナリスの頭をナデナデし、褒めてあげた。
上々なご機嫌でニコニコ笑顔し、嬉しそうにするサナリスを見るのもこれはこれで悪くないのかもしれない。
腐った豆腐を食べお腹を壊して死んだ勇者エリウッドは謎の力により教会へ強制送還された。
一度魔城へやって来た勇者エリウッドは、転移アイテムの力を使い再び魔城にやって来た。
左手に腹痛を治す薬を持ち合わせて。
おいお前! あの腐った豆腐をまた食うつもりなのか!? あれ腐ってるんやで!? 薬使ってまで食べたい訳!? あんさん、ステラ王女のお金使って散々ウマいモン食べたよね!? それでもわざわざ腐った豆腐食べる訳ないよな!?!?!?
俺が勇者エリウッドに対して懸念を抱いていると、




