17話
さて、あれから3日たった訳だ。
俺はエリウッド王子とコンタクトを取るべくキルミール邸に侵入した訳だ。
何故侵入出来たかと言えば、そう、ファルタジナリングのお陰だ。
どうやら、キルミール邸に侵入した俺を不審者扱いされないようにしてくれと言う願いは叶えられたみたいだ。
何食わぬ顔でキルミール邸を散策した俺は、エリウッド王子と待ち合わせている中そわそわしているステラ嬢を発見した。
今の俺は不審者扱いされないからな、折角だからこのままステラ嬢に話掛けてみるとするか。
「おーほっほっほ、ご機嫌麗しゅうステラお嬢様」
まずは、ステラ嬢に対し悪役令嬢っぽい挨拶をする。
「あら? ルチーナ様、ご機嫌麗しゅう御座います」
ステラ嬢は表情を変えず、さも俺が居る事が当り前かの様な反応をした。
これがファルタジナリングの力か、と感心してしまう。
「今日はエリウッド王子とお遊びになられると聞きましてね、わたくしもエリウッド王子様を一目見に来ましてよ」
何か変な事を言っている気がするが、まぁ良いか。
「一目、ですか? ルチーナ様がご所望でしたら御一緒しても構いませんわ」
ステラ嬢が天使の笑みを見せ、近くにあった4人掛けのテーブルにある椅子に座る。
「そう。でしたらお言葉に甘えさせて頂きますわ」
続けて、ステラ嬢に手招きされた俺はステラ嬢の隣に座った。
テーブルの上にはティーポットと2人分のティーカップ、それにお茶うけとなる数種類の洋菓子が乗った皿が置かれている。
俺自身特別甘い物は好きでは無いが、悪役令嬢と言う立場上奪い取る必要があるのだろうか?
正直めんどくさいが……。
「あら? ルチーナ様のティーカップが御座いませんわ」
「良いわよ別に」
俺が声を出すよりも早く、ステラ嬢が気を遣ってくれてくれたのだが、気を遣わせるのも何だかんだ言ってめんどくさい。
「いえいえ、その様な事はあってはなりません。お母様に叱られてしまいます」
まぁ、そう言われればそうなるか。
貴族令嬢の母親からすれば、自分の娘が友人の分のティーカップを用意しないのは言語道断だろうし。
しかし、ステラ嬢が席を立った今、エリウッド王子がやって来ても正直気まずいだけなんだけど。
「HAHAHA。YOUは、ルチーナ嬢KAI?」
随分と気さくな挨拶だ。
声の主を見上げると、そこには金髪のイケメン。
現在の時刻は大体12時。
それを考えると、声の主はエリウッド王子だろう。
フラグ回収早いなと思いつつ、彼等がやってくる時間に合わせて俺もここに来た訳だからそれはそうだとも言える。
さて、ステラ嬢が来るまで大した時間はかからないか。
気まずいと思ったが、このタイミングでしか聞けない事もある。
「そうよ。貴方がエリウッド王子、基転生者で良かったかしら?」
ファルタジナリングにより産み出された設定、それを書き換えられる力があるとするならばそれ以外まず考えられない。
細かい演技を続けるのもめんどくさいと思った俺は、それについて1撃で決めに行く事にした。
当然、予想が居すぎる事を言われたエリウッド王子は言葉を詰まらせる。
「ステラ嬢に聞かれると面倒な事と思っただけよ。私の方で作られた設定を貴方は知っている。ならそれはこの世界の人間ではない。ただ、裏を取りたいだけかしら」
エリウッド王子が小さくため息を付き、私の対面の位置に腰を下ろす。
「ええ、そうよ。私も貴女と同じ転生者よ」
少し迷った上で、エリウッド王子が事実を認めた。
やっぱり思った通りか。
うん? 言葉遣いが女性のそれ? 転生者ならあり得るか?
「そう。言うまでも無いけれど私も転生者だわ」
エリウッド王子が転生者且大本は女性と言う事が分かった。
だが、こんにゃく破棄の件をどう切り出す?
何故、こんにゃくを破棄した際王家がその家を破壊しに行くと言う条件を付けたのか。
それが引っ掛かる。
「ステラちゃんが来たわよ」
「あ、ああ。分かった」
エリウッド王子の声掛けに対し俺は反射的に、素の自分で返事をしてしまう。
いや、相手も素性を明かした以上これで良いか。
当然、俺の返事に対し相手はおや? と首を小さく傾げた。
何かしらの違和感を抱いたのだろうが、ステラ嬢が戻って来た以上これ以上話を続ける訳にはいかない。
「ようこそいらっしゃいましたエリウッド様」
俺の分のティーカップをテーブルに置き、ステラ嬢がエリウッド王子に向け深々とお辞儀をする。
「HAHAHA、そんなにかしこまらなくても良いSA」
エリウッド王子がもっと気楽に行こうと言うも、ステラ嬢はにこやかな笑顔を浮かべるだけで、
「勿体無いお言葉で御座いますが、エリウッド様へ無礼を働いてしまいましてはお母様からお叱りを受けてしまいます」
かしこまった、貴族令嬢としてあるべき姿を崩すつもりは無い様だ。
続いてステラ嬢は元々座っていた席に腰を降ろし、ティーポットに入っているお茶を3人のティーカップへと注ぐ。
お茶を注がれたティーカップからはうっすらと湯気が立ち込めており、温かそうだ。
また、同時にバラの香りがうっすらと立ち込めた。
これは、ローズティーだろうか?
「Hm。お母様の言いつけなら仕方ないね」
エリウッドがクッキーを1枚食し、注がれたローズティーを少しばかり飲んだ。
続いて俺も、ローズティーを口に含む。
バラの香りが口の中に広がり、精神的な疲れが僅かながらだけれど癒される感じがする。
「素晴らしい味ですわね」
まぁ、中学生が作ったクッキーと考えれば十分だろう。
勿論日本のそれと比べたら使える材料の質や料理設備の性能に大きな差があるから女子中学生が作ったとしてももっと美味しいモノが出来ると思うが。
「いえいえ、大した事ありませんわ」
俺の賛美に対し、ステラ嬢は謙遜して見せる。
目元もにこやかになり、本心では嬉しそうに見える。
「HAHAHA、僕も素晴らしいと思うよ」
エリウッド王子がキラリと笑顔を見せる。
これがイケメンとやらか、その笑顔、実に映えている。
俺もこれ位のイケメンだったら爽やかハッピーな人生を送れたのかもしれないのに。
しかし、エリウッド王子の目が笑っていないのが少し気になる。
俺の懸念に気付いているのか視線をチラチラと此方に向けアイコンタクトを取る。
多分、あまり美味しくない料理を食べさせられるのがシンドイとでも言いたそうだ。
俺は、仕方ないと言いたげに少しばかり肩を落した。
「ステラ嬢みたいに素晴らしい令嬢と御婚約なされたエリウッド王子様を羨ましいく思いますわ」
本物の悪役令嬢なら、内心腸煮えたぐっているんだろうな。
私じゃ無くあんな芋令嬢なんか選びやがって許せない、これは裏で不正が行われたに違いないって。
って……。いってーーーー!!!!!
誰だ、俺の足を踏んづけた奴は!!!!
割ときつめに踏みやがったから結構痛い。
ステラ嬢がそんな事する訳無い。
とエリウッド王子を睨むと、エリウッド王子が俺にひきつった笑顔を見せる。




