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15話

 クリスティーネが、押し入れの下段にゲーム機を置き、スイッチを入れた。

 起動音が聞えたかと思うと、俺とステラ嬢とエリウッド王子の身体を白い光が包み込み、光と共にゲームソフトの中へ入って行った。


「ほほう。これがゲームの世界か」


 俺の意識が戻ると、視界には石造りの建物にある広い部屋が映った。

 俺は、どうやら椅子に座っている様で、その椅子はふんわりとした何とも素晴らしい感触が伝わる作りになっており、多分作りの良い椅子と予想出来る。

 今いる場所からは、この部屋を見下ろせ自分が高い場所に居る事も分かった。

 また、目の前には赤い絨毯が敷かれている、まるで王様と謁見をする間の様に思えて来る。

 おや? 部屋の入り口から誰かが来たぞ?

 人か? いや、あれは魔物に見えるぞ? 背中から翼を生やしているが二足歩行で装備品も中々良いものを身に付けている。 

 しかし、何で魔物が俺に近付いて来るんだ? パッケージから予想すれば、俺は魔王であるが、それはあくまで予想に過ぎず、実は俺は人間側の国王の可能性も有る。

 つまり、今俺に向かって来る魔物は、俺を討伐しに来た可能性がある。

 勿論、配下の魔物の可能性も大いにあるが、予想を外した場合被害を被るのは自分が人間側の国王だった場合だ、ならばこの状況での最適解は、

 俺は立ち上がり、自分に向かって来る魔物を迎撃すべく腰に携えているであろう剣を抜こうとする。

 だが、俺にその手応えは感じられなかった。

 武器を携帯していない、なら魔法はどうなんだ?

 俺は炎の魔法をイメージする。

 すると、俺の手の平から拳程の大きさを持つ炎の球が現れた。

 魔法は成功か? ならば、あの魔物が味方の可能性も考慮しわざと外そう。

 俺は迫りくる魔物の50センチ程横に着弾する様に、生み出した炎の球を放った。

 俺が放った炎の球は狙った場所に着弾し、


 ズゴ――――ン! 


 と派手な音を立て、地面に直径50センチ程のクレータを生み出した。

 自分の隣で、魔法によりクレーターを作られた魔物は血の気の引く表情を浮かべると、


「ま、ま、ま魔王様! も、も、も申し訳ございませんっっっ」


 物凄い勢いで土下座を始めた。

 頭の上下運動を1秒間に1往復する勢いの速度で。


「は? いまなんつった? 魔王??? 魔王って、俺が???」


 てー事はつまりなんだ? パッケージに書いてあった通り俺、ルチーナ・ファルタジナは魔王としてこのゲームに君臨した訳か?

 なるほどなるほど、そうかそうか、で、勇者はエリウッドと。

 はーっはっは! 中々面白い事になりそうじゃないか! 魔王ルチーナ様が変態紳士勇者エリウッドをけちょんけちょんにしてやんよ!


「左様に御座います、魔王様。この度の失態誠に申し訳御座いませぬ。魔王様の判断なさる通りわたくしは万死に値するに御座います。しかしながら、言い訳をお許し下さいませ」


 丁寧な報告と謝罪を行う魔族であるが、その間も物凄い勢いの速度を保ったまま土下座運動をしている辺り随分器用な魔族と感心してしまう。


「いやーはっはっは、悪い悪い。俺はそんなつもりじゃなかったんだ」

「申し訳御座いませんーーーーーッ」


 俺の言葉を聞いても魔族は土下座を止めない。

 あれか? 俺が止めなきゃダメな奴か?


「ま、まぁ、あれだ、そう、何があったか言ってくれ」


 俺が理由を促すと、ようやく魔族は土下座運動を止め、顔を上げる。


「ははーーーっ有難う御座いますッ。実は西にある人間の居城に勇者が現れましたッ我々はそれを阻止しようとしましたが、失敗しましたッ」


 だ、そうだ。これ失敗って言うのか?


「いや、勇者が出現した情報を持ち帰った事が手柄だ。勇者が強力であるならば相応の手を打とう」

「ててて、手柄なんて滅相も御座いません!!!」


 やけに謙遜する魔族だな、反逆するよりもマシだけど。


「そうか。ならば次の作戦を頑張るが良い」

「ははーーーっ! 西の国の王女、ステラを何としてでも捕まえ汚名を挽回致しますっっっ」


 つまり、また作戦を失敗するつもりか。

 と言うのは嘘だ、まぁ汚名返上と言いたかったのだろう、良くある話だ。


「分かった、ステラ王女の誘拐任務を頑張るが良い」


 俺の命令を受けた魔族は立ち上がると部屋を去った。

 それと同時に今度は別の魔族がやって来た。

 如何にも魔法を使えそうな雰囲気を出しているその魔族はウィザード型だろうか?。


「サナリスであります。魔王様、新しいマジックアイテムの開発に成功いたしました」


 サナリスは丁度手の平に乗る大きさの水晶玉を取り出し俺に差し出した。


「これは?」

「はい、これは西の国より誕生致しました勇者エリウッドを映し出す水晶玉であります」


 俺が勇者エリウッド発見の報告を受けたのはつい先程だが、開発部への報告はもっと早かったのだろう。恐らく短い時間の間でこのマジックアイテムを完成させたと考えると魔城に配備されている開発部門の魔族は非常に優秀なのだろう。


「おぉ、素晴らしい仕事だ。早速使ってみるわ」


 このゲームの現在の立ち位置が魔王である俺からすれば、勇者は敵対勢力である。

 ならば、その敵対勢力の情報を獲得出来るのは非常に有効な話だ。

 俺は、このマジックアイテムの効果を確かめるべく水晶玉に手を触れる。

 俺が水晶玉に手を触れると、水晶玉の中に勇者エリウッドの姿が映し出された。

 ほほーこれが勇者エリウッドか、キリっとした顔立ちでまさに圧倒的なイケメン勇者様だ、イケメン勇者様は果たしてどんな装備をしているのか、きっと美しくカッコイイ鎧を身に付けているのだろう。

 俺は勇者エリウッドの装備品が何か確かめるべく視線を彼の身体に向ける。

 まず、俺の視界に映ったのは裸の上半身で、続いて下半身に視線を移すと。


「何でふんどし姿なんや! しかも脱ごうとしているんかい!」


 どうやら勇者エリウッドは入浴前だったらしく、丁度脱衣している所であった。

 俺は、頭を抱え水晶玉から視線を外す。

 可愛い女の子の脱衣シーンなら兎も角、野郎の脱衣シーンなんかこれっぽっちも見たいと思わない、少なくとも俺は。


「ここここ、これが勇者のピーで御座いますかッ!!!!!」


 汚いモノを見せつけられ、頭を抱え落胆する俺とは裏腹に俺に水晶玉を渡したサナリスは目を見開き、キラキラと輝かせながら口を開け今にも涎を垂らしそうな表情を見せ、興奮している。

 別にサナリスの性別を気にしていなかったが、どうやら女性の様で人間で言う16位の少女位の中々に可愛い系統の容姿をしており、お胸さんも素敵な事になっている。

 幾らサナリスが魅力的と思え様が、勇者エリウッドのピーに対し釘付けとなっている様は少々引くものがあり俺がは少しばかりジト目でサナリスの行く末を見守っている。


「えへっ、えへっ、勇者サマこれからお風呂に入りますね。えへへへへ。魔王様ナイスタイミングですよ☆」


 どうも、彼女の脳内で何やら妄想でもしているのか、目をへの字にしながら物凄いニヘニヘ顔をしている。

 確かに勇者エリウッドはイケメンな訳で、そのイケメンのピーを拝めるならば彼女の様な反応になるのはいたしかたないのかもしれないが。


「ふん。魔王として当然の事だ。エリウッドの野郎を見終わったら先の魔族と共にステラ王女を拉致して来てくれ」


 俺は、彼女の士気を落さぬ様に言葉を選ぶ。

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