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悪役令嬢に転生したおっさんは悪役令嬢になりきれない  作者: うさぎ蕎麦
2章「おっさん、ルチーナ・ファルタジナに転生する」
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10話

「それは素晴らしいですわ。流石はクリスティーネ様で御座います」

「あははははー、だから、今回の事は天界の人には内緒にしてくださいねー?」

「承知いたしました」


 クリスティーネは、どこからともなくそれぞれ色の違う液体の入った小瓶を取り出し俺に渡した。

 それぞれの色は、茶色と白色と赤色だ。何故色が違うのか気になるが。


「田中さんー? この薬は、茶色、白色、赤色の順番で使ってくださいねー?」


 使う順番がある? 実験段階で効果が安定しない? でも、天界の道具だよなぁ? そうすると、少し惚れさせる、そこそこ惚れさせる、俺に貢ぐ勢いで惚れさせるのだろうか?まぁ良いや細かい事は気にしないでおこう。


「有難く頂戴致します」

「ファルタジナリングに収納すると便利ですよー」

 

 俺は、クリスティーネのアドバイス通りファルタジナリングの収納機能を使い貰った惚れ薬を収納した。

 詳しい効果は試しに使って見なければ分からなさそうだ。しかし王子様が俺にベタ惚れかぁ。俺は見た目こそ美しき令嬢だけど精神が男だからな。

 幾ら推定イケメンとはいえ男に擦り寄られる事は精神衛生上宜しくない。

 そうだ! 婚約を破棄させれば良いのだからステラ嬢に使っちまっても良いんじゃね?

 お嫁さんにしてやりたくなる位清楚で美しい上にスタイルも良好な令嬢様ならば俺が頂いちまって差支えなかろう。

 うむ、今の俺は悪役令嬢である故悪事をしっかりと働いたならば然るべき対価は手に入れるべきだろう。

 俺はステラ嬢様にベタ惚れされた様子を妄想し、にやにやし出した。


「クリス。わたくしはステラ嬢の元へ参りますわ」

「うふふふー。田中さーん? 頑張ってねー?」


 何となく、クリスティーナの声が上ずっていた様な気がするが、そんな事よりもステラ嬢を自分のモノに出来る事の妄想でいっぱいいっぱいな俺は、クリスティーナの見せる細かい違和感を完全に無視したのであった。


 ―キルミール邸―


 ステラ嬢に惚れ薬を飲ませ、俺をめろっめろにした後の妄想を続けはや3日。思わず涎を垂らしてしまう程の妄想にふけっていた俺であるが、ステラ嬢とのコンタクトを取る為の予定はしっかり立てており、今日が作戦の決行日である。

 それにしてもこの指輪、すげー便利だ。ステラ嬢とエリウッドが出会う日なんてどうやってわかるんだよ! と思ったらご親切に指輪の方から彼女等が出会う日を教えてくれた訳なのだ。むぅ、クリスティーネ殿は実に素晴らしいな。

 で、肝心の場所はと言うとステラ嬢のお宅で、ステラ嬢がお城まで遠征すると色々な人に見付かったりして面倒だからとの事。

 と、言う訳でステラ嬢にバレない様王子様との密会現場へ辿り着く。

 今俺が身を潜めるのは90センチ程の高さの園芸用樹木の中だ。

 多分紅茶とお菓子が乗せられた皿がおかれているテーブルにステラ嬢とエリウッド王子が向かい合う様に座っている。

 何処か恥じらっている感じの二人であるが、なんともまぁピュアな恋愛をしている様に見える。俺も高校生の時に女子中学生でも捕まえていればきっとあんな感じで甘い恋愛の1つも出来たんだろうなーとしみじみと感じさせられてしまう。

 と二人を陰ながらに観察していた所、エリウッド王子が席を外した。

 少しばかり恥じらいながらステラ嬢に耳打ちをしていた様子から、多分トイレに行くのだろう。

 よし、今がチャンスだ。俺は樹木の中からサッとステラの前に飛び出した。


「おーほっほっほ、ご機嫌麗しゅうステラお嬢様」


 突然の来訪者に対し、おどろくステラであるがその表情を笑顔に変化させるまでの時間は短い。

 どうしたらそんな天使の様な笑顔をすぐに浮かべられるのか、不思議で仕方ないのだがもしかしなくてもそれは天性の才能なのかもしれない。


「ルチーナ様。ご機嫌様で御座います。態々ご丁寧にご来訪頂きましたのはどの様なご用件からで御座いましょうか?」


 ステラ嬢の言葉が少しばかり固い気がする。これは、もしかしなくともエリウッド王子との時間を妨害したせいか?


「わたくし、ステラ嬢に良いものをプレゼントしたくて来ましてよ」


 俺はファルタジナリングの収納システムを利用し、惚れ薬の入った小瓶を取り出し、手にした。


「私にで御座いましょうか?」

「そうよ、わたくしが特別に調合したこの薬を貴女に差し上げますわ」


 俺はステラ嬢に茶色の液体が入った小瓶を手渡した。


「有難うございます。ルチーナ様が私の為に作って頂いた以上、早速頂きますが宜しかったでしょうか?」


 俺がうなずくと、ステラ嬢は疑う事無く俺が差し出した液体を口にする。

 思わず、こんな怪しい液体をよく飲む気になるな、と思ったが14歳の少女ならば執拗に疑う方が珍しいのだろう。

 さて、俺から受けとった惚れ薬を飲んだステラ嬢は俺に対してめろっめろになるハズだ。

 婚約者であるエリウッドを差し置いて、悪役令嬢ルチーナを好きで好きでたまらなくなるハズ。

 いやいやいや、3本セットの1本目だ。そんな高い効果が得られるなんて期待したら違った時のショックが大きくなる。ここは、俺と見つめ合えば頬を赤く染める位の期待度に留めておくべきだろう。


「当然、宜しくてよ」


 俺はニヤ付きそうになるのを必死に我慢し返事した。

 ステラ嬢は一礼すると、俺から受け取った惚れ薬を飲み干した。


「ルチーナ様、素晴らしきお味で御座いました。是非再度味わいたいと存じ上げます」


 ステラ嬢は改めて一礼をした。


「おーほっほっほ、当然の事ですわ」


 見るからにマズそうな色合いをしている液体だったけど、意外と味の方もしっかりしていたのか。流石は神界の道具と言った所か。 

 俺がこの惚れ薬に対する考察を抱いていると、急にステラ嬢が立ち上がり両手を握り締める。


「ルチーナ様! どうしてもやらなければならない事を思い出しましたわ、少々お時間を頂きます事をご了承下さいませ」


 どういう訳かステラ嬢は、ふんわりと柔らかな笑顔を見せ天使のオーラをまとうぐう聖令嬢から、キリっとした表情を見せ、頭にねじり鉢巻きが似合いそうな職人のオーラをまとい出し瞳をキラキラと輝かせながら席を立ち何処かへ向かった。

 うん? どう言う事だ? 惚れ薬を飲んだのだろう? それならば頬を赤らめ俺をマジマジとみつめて来そうなんだけど?

 おっと、エリウッド王子がトイレから戻って来たか。けどまぁ、ステラ嬢が単独になる事を待ったのはあくまで惚れ薬を渡したかったからで、エリウッド王子から出ていけと言われるまで自分から撤収する必要は無いだろう。残り2本ある惚れ薬の効果も知らなきゃ、だし。


「Oh? YOUはルチーナ嬢KA?」


 この場に戻って来たエリウッド王子が、驚いた表情を見せながら俺に尋ねる。

 そりゃそうだ、戻って来たらステラ嬢は居ないどころか別の人間がここに居るんだから。


「エリウッド様。お目に掛かれて光栄で御座います」


 俺はエリウッドに対し、ステラ嬢に負けずとも劣らない(と思い込んでいる)丁重な一礼を見せながら挨拶をする。


「HAHAHA。ルチーナ嬢、MEはステラ嬢と婚約中NE、YOUの期待には応えられないSA」


 一瞬、ナルシスト、自意識過剰と思ってしまったが。しかし、よくよく考えたら王子様を捕まえ高みを目指す貴族で溢れている以上、自分を狙う貴族令嬢は数多に居るのか。

 一般人から見れば高嶺の花である貴族令嬢が、それも何人も自分に対し結婚前提のアプローチを施す以上そうなるのが普通か。

 残念ながら俺は男に一切興味が無い以上エリウッド王子なんてどうでも良い訳であるのだが、エリウッドからすれば俺は美しき令嬢に見える以上今のが正しい返し方だろうな。


「存じております。わたくしルチーナ・ファルタジナよりも素晴らしき貴族令嬢、ステラ・キルミール嬢が貴殿の婚約者に選ばれる事は必然で御座います」

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