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009_ダンジョン

誤字脱字は誤字報告してくださると、助かります。


 


 ダンジョンは地上に入り口があるのだが、中は異空間に繋がっていると言われている。

 そのダンジョンの最奥には、金銀財宝やマジックアイテムがあるため、冒険者は一攫千金を夢見てダンジョンに入る。

 そんな冒険者の中にあって金銀財宝にはあまり興味のないラックが、ゴルドと共にダンジョンに入っていく。


 ダンジョンに入って洞窟のような通路を少し進むと、開けた場所に出る。

 しかも、その空間には青空が広がっていてまるで屋外のような解放感があった。


「これがダンジョンの中とは思えないね」

「ダンジョンは摩訶不思議な場所でございます。ですから、何があるか分かりませんので、気を緩めず進みましょう」

「そうだね」


 ゴルドの注意を素直に受け入れることができるのは、ラックの美徳の一つだろう。

 ダンジョンの一層ということもあり、周囲に冒険者の姿が多く見られる。


「見て分かるように、一層には冒険者が多くいますので、モンスターはあまりいません」

「冒険者でモンスターを取り合っているんだね」

「はい。ダンジョンのモンスターは地上のモンスターよりも強い傾向がありますので、その分実入りもいいのです」


 モンスターから得られる魔石や、その他の部位は冒険者ギルドが買い取りを行っている。

 同じモンスターでも地上に比べると強くなっているダンジョンのモンスターから採れる素材は、地上のモンスターよりも高値で買い取りが行われているのだ。


 草原を進むと黒いオオカミの群れに遭遇する。


「ダンジョンウルフです。ゴブリンと同じくらいの強さですが、ゴブリンよりも動きが早いので気をつけてください」


 体高一メートルくらいのダンジョンウルフは、六体の群れで行動している。

 ゴブリンも群れで行動することが多かったので、それほど怖いとは感じない。


「分かった」


 ゴルドが四体、ラックが二体受け持つことになった。

 ラックたちに向かって走り寄ってくるダンジョンウルフに、ゴルドが突っ込んでいき一体の前足を切り飛ばした。

 ゴルドの後方から姿を現したラックがジャンプしてダンジョンウルフの頭部に剣を叩きこむ。

 ゴルドがつけた切り口とラックのつけた切り口は、明らかに違っていてラックの腕がまだまだだというのを物語っている。


「はっ!」


 ラックは危なげなく二体のダンジョンウルフを倒した。

 その頃にはゴルドは四体を無力化し終えていて、力の差を感じるのだった。


「ガチャポイントはどうですか?」


 ラックが六体全てのとどめを刺してからゴルドが聞く。


「一体の経験値は七で、ガチャポイントは二だから地上のオークと同じかな」

「ダンジョンウルフの強さはゴブリンていどなので、地上のオークと同じガチャポイントがもらえるのであれば、ダンジョンに入った甲斐がありましたな」

「今回もレアの十一連ガチャを回したいから、五百ポイントを溜めるよ!」

「はい!」


 二人は遭遇したモンスターを倒しながら、一層を奥へと進んでいく。

 他の冒険者もいるため、一層ではあまり多くのモンスターと戦えなかったが、それでも二十体ほどモンスターを倒せた。


「あれが二層への階段?」


 大木の幹にぽっかりと開いた穴に冒険者たちが入っていく。


「二層になればモンスターも強くなりますが、冒険者と取り合いになることは減ります。いきましょう」


 ゴルドが先に大木の穴に入っていく。経験豊富なゴルドは躊躇しないが、ダンジョンに入るのが初めてのラックは少しビクビクしながら穴に入っていく。


 数段の階段を下りて一層の時と同じような岩肌がごつごつとした通路を進む。

 木の穴に入ったのに岩肌なのかとラックは不思議がる。


「二層も一層と同じようなフィールドですな」

「青空があって草原のフィールドなんだね」


 そんな二層に入って草原を進むと、すぐにモンスターが出てきた。

 涙型の水色の体は三十センチメートルほどだが、なんでも吸収してしまう厄介なスライムというモンスターだ。


「スライムは物理攻撃に耐性を持っています。しかし、動きが遅いので足を止めずに手数で倒してください」

「了解」


 スライムに切りつけると、薄皮一枚を切ったような感触でほとんど手ごたえがない。

 ラックはゴルドの指示を守って、足を止めず手数でスライムを倒すことに終始した。

 五度剣を叩きこむと、スライムは涙型を崩した。

 スライムを倒すと、このように体の形を保てないのだ。


「お見事。しかし、スライムは切るよりも突くほうが効果的です」

「なるほど、今度からはそうするよ」

「はい」


 普通、貴族の子弟は年長者の言葉といえど、家臣や目下の者の意見を聞くことはあまりない。

 ラックはゴルドの言葉を素直に聞き入れ、そういった増長が見られない。

 これは美徳でありラックの成長を助けるものだとゴルドは考えている。

 ただ、素直な性格はいいが、素直すぎて他人に騙されないか心配になる。


「スライムの経験値は六、そしてガチャポイントは二だったよ」

「スライムでもガチャポイントが二ももらえるのは、ありがたいですな。あそこの湖にはスライムが沢山いるはずなので、スライムを狩ってガチャポイントを稼がせてもらいましょう!」


 ゴルドの視線の先には湖があって、その岸辺にはスライムと思われる丸いものが沢山見えた。


「スライムの中には特別な個体がいます。そのスライムは逃げ足が速いのでなかなか倒せないのですが、倒すと経験値が沢山もらえるので、見かけたら積極的に狙っていきましょう」

「そんなスライムがいるの?」

「はい。見た目は普通のスライムよりやや色が濃いていどなので、見た目でわかりづらいですが、間違いなくいます」

「経験値を沢山もっているってことは、ガチャポイントも沢山もっているのかな?」

「倒してみれば分かることです」

「それもそうか」


 ラックとゴルドは湖の畔でスライム狩りを始めた。

 普通の冒険者は、ここにいるスライムは無視して他のモンスターを狩るか三層へいく。

 スライムは魔石しか落とさないため、あまりお金にならないからだ。

 経験値を沢山もっているスライムのことは冒険者ならほとんど知っているが、個体数が少なく、さらに逃げ足が速くて簡単に倒せないからだ。

 だが、ラックたちにとってスライムはゴブリンの倍のガチャポイントを稼がせてくれる。

 しかも、地上のゴブリンより簡単に倒せるのだから、狩らない理由はない。


「ご苦労さまです。そろそろ安全地帯へいって野営しましょう」

「僕はまだ戦えるよ」

「地上でもダンジョンでもそうですが、余力があるうちに休憩してください。常にぎりぎりでは、何か不測の事態があった時に、対応が遅れてしまい対処できなくなりますので」

「そういうものなんだね。分かったよ、安全地帯にいこう」


 ダンジョンにはモンスターが入ってこない安全地帯がある。

 一層や二層などの低層では安全地帯の数はそれなりあって、ダンジョンの中で数日過ごしてモンスターを狩る冒険者たちの拠点になっている。


 この二層の地図やモンスター情報は冒険者ギルドで買うことができたので、ラックとゴルドはその地図に描きこまれている湖から最も近い安全地帯へ向かった。

 その安全地帯には、他に二つの冒険者パーティーが野営の準備をしていた。

 そういった冒険者から少し距離をとってラックたちも野営の準備を始めた。

 冒険者が犇めきあっている場合は別だが、安全地帯では不要な諍いを避けるために冒険者同士が距離を取るのが慣例になっているのだ。


 ゴルドがカセットコンロを出して鍋に乾燥した肉や野菜を放り込んでいく。

 今回、ゴルドは食料はそれなりの量を持ってきたが、水はあまり持ってきていない。

 先ほどまでスライムを狩っていた湖の水が飲めることが分かっているからだ。

 冒険者は一日に二リットルの水と二キロの食料を消費すると言われているため、過ごす時間、いく場所によってしっかりと水と食料を準備しなければならない。

 食料はモンスターを狩ってその肉を食べることで持っていく食料の量を減らすことができるし、水も飲み水が汲める湖などがあれば持っていく量を減らすことができる。

 しかし、ダンジョンの奥深くに進めば進むほど、人間に対して厳しい環境になる。

 だから、水を出せるマジックアイテムや水を出せる魔法使いは必須になるし、モンスターの肉も食べることができないことを想定して準備しなければならない。

 二層では珍しいが、もっと深い層へいく冒険者パーティーには必ずポーターという荷物運び専用の人員がいる。

 ポーターは往路では水と食料を運び、復路ではモンスターの素材を運ぶのだ。


「ラック様、食事の支度が整いました」


 食事と言っても塩味のスープと保存食の硬いパン、そして干し肉だ。

 味気ないものだが、ラックは不満を口にすることはない。


「ガチャポイントはどれほど溜まりましたか?」

「今日はダンジョンウルフが二十体とスライムが百六十体なので、経験値が千百とガチャポイントが三百六十も稼げたよ」



【氏名】 ラック・ドライゼン 【種族】 人族 【性別】 男

【天職】 ガチャマン 【レベル】 8(144/800)

【HP】 30/30 【MP】 18/18

【腕力】 21+30 【体力】 31 【魔力】 10 【俊敏】 22 【器用】 20

【固有スキル】 ガチャ 【ガチャポイント】 374

【スキル】 物理攻撃耐性1(1/100)

 装備品:守りの革鎧 鉄の片手剣(予備に剣王の剣) 守りの盾 腕力の指輪


 

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