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044_魔王

 


 魔族の正体が堕聖霊だという驚愕の事実を知ったラックは、そのことを人々に語るか迷った。

 そこでまずはパーティー内で情報共有することにした。


「そ、そんな……」


 カトリナが驚愕のあまりに言葉を失う。


「恨みを持った人間が死んだ後の姿が魔族なら、魔族は決して滅ぶことはない」


 賢者だけあってローザは簡単にそのことに思い至った。

 世の中は理不尽なことが多く、恨みを持ったまま死に至ることはざらにある。つまり、魔族は人間がいる以上、決して絶滅しないということなのだ。


「でも、人間の業が回り回って返ってきていると思うと、戦意が落ちますね……」


 シャナクの言葉に全員が暗い顔をする。


「魔族と戦って死んでも、誰かを恨みつつ死んだら魔族になる。悪循環ですよね」


 ラックはため息混じりに語った。


「ラック様。我らはなんのために魔王と戦うのでしょうか?」

「僕にも分からない。だけど……魔族が人間の成れの果てでも、魔王軍が人間を襲うのを指を咥えて見ているなんて、僕にはできないよ。ゴルド」


 その言葉を聞き、ゴルドは大きく頷いた。


「そうですな。某はラック様の盾。ラック様がそう仰るのであれば、魔族から人間を守るために戦いましょう」

「不毛な戦いだとしても、私も師匠の剣として魔族と戦います」

「相手が人間でも魔族でも関係ない。攻めてくるなら戦うのみ」


 ゴルド、シャナク、ローザが決意表明する中、カトリナの表情は暗い。


「魔族が人間の成れの果てなど、とても信じることができません。それではサダラム教の教えと違います!」


 サダラム教の教えは、人間は死ぬと神の元で再び人間に生まれ変わるというもので、聖霊から精霊になったり、堕聖霊になるという教えは一切ない。


「それはつまり、ラック様を疑うということですぞ、カトリナ殿」

「そうです。師匠を信じない方を私は仲間だなんて思えません!」

「それは……」


 ゴルドとシャナクがカトリナを睨みつける。

 二人としてはサダラム教の教えとラックの言葉を天秤にかければ、当然のことながらラックの言葉が重い。信用度も天と地ほどの差があるのだ。


「二人とも止めるんだ」

「しかし、ラック様を侮辱するようなことは看過できません」

「そうです。師匠の力が必要だと言って近づいてきたのに、師匠を侮辱するなんて許せません!」

「私はラックさんを侮辱などしていません」


 二人とカトリナが険悪なムードになる。


「もういいんだ。二人が僕のために怒ってくれて嬉しいけど、カトリナさんにはカトリナさんの立場がある。それは真実とか真相とかとは違うレベルの話なんだと思う」


 サダラム教の教えの根幹を揺るがすことが明らかになったとしても、サダラム教の教皇の娘であるカトリナがそれを簡単に認められるものではない。

 元々、カトリナの後ろにいるサダラム教を信じていなかったラックは、カトリナのことも信じていないのだから、彼女に対する気持ちが悪くなることはないのだ。

 ただし、この日からゴルドとシャナクの目は、明らかにカトリナに厳しいものになった。そのため、シャナクはカトリナとの同部屋を拒否し、ラックたちと同じ部屋で寝ることになる。


 それから一カ月が経過した。バメルンド周辺に再び魔族が現れることはなかった。

 そして、魔族を引き取る日になったが、魔族は拷問の日々を耐え抜き、何も喋っていなかった。

 領主アソードと支部長ムールは、ここまで魔族が強情だと思ってもいなかったため、十日の延期を求めてきた。


「それでは話が違います。本日、魔族を引き渡していただきたい」


 カトリナはけんもほろろにアソードたちの提案を拒否した。


「聖女殿、そこをなんとか」


 ムールも延期の口添えをするが、カトリナが拒絶しようと口を開こうとする。そのカトリナをラックが止める。


「延期の件は承知しました。ただし、これからは僕に尋問させてもらえませんか?」

「ラックさん!」

「おお、ありがとう。ラック殿!」


 カトリナはヒステリックに叫び、アソードはありがたいとラックの手を取った。


 魔族の尋問をすることになったラックは、ローザを見た。

 この一カ月ラックはラックで色々な可能性を模索していた。その中で、ローザの持つ暗黒魔法についても振り返ることがあり、その効果について把握している。


「任せて」


 ローザが暗黒魔法を発動させ、魔族の精神を操る。


「質問に正直に答えなさい」

「……はい」


 虚ろな目をした魔族が、頷いた。

 その光景をアソードやムールが驚きの表情をして見ていた。


「名前は?」

「……ベルメルリド」


 ローザが質問すると、魔族は簡単に自分の名前を明かした。

 今までどんな拷問を受けても口を割らなかった魔族が、いとも簡単に口を割ったことに再び驚くアソードやムール。これも能力が高くなり、暗黒魔法のレベルが上がったためにできることだ。


「ベルメルリドは、なぜモンスターの大侵攻を起こしたの?」

「……人間を殺すため」

「なぜ人間を殺したいの?」

「……人間は殺す。理由はない」


 人間だった時に酷い恨みを持って死んで堕聖霊になり、そして受肉して魔族になった。

 精霊王エフェナイスが言うには、堕聖霊である魔族に人間だった時の記憶はない。ただ、人間に対する強い恨みだけがあるだけなのだ。悲しいことだと、ラックは心を痛めた。


「デモンズゲートはどこにあるの?」

「……ない。今は開いていない」

「ベルメルリドはどこからきたの?」

「……魔界」

「魔界はどんなところ?」

「……魔王が支配する場所」

「ベルメルリドは魔界からどうやって人間界にきたの?」

「……時空の精霊を使役する魔族に頼んだ」


 精霊王エフェナイスの言っていた通りの答えだった。


「魔界へ帰る時は、どうするの?」

「……帰らない。人間と戦い。勝って地上を支配するか、負けて死ぬだけ」


 ベルメルリドは片道切符でこの人間界へやってきた。そして、不毛な戦いを繰り広げ、死ぬまで戦い続けるつもりだった。それほどに人間を恨んでいるが、その理由は覚えていない。


「仲間はいるのか?」

「……いない」


 たった一人で全ての人間を相手にして戦う。孤独な戦いである。


「魔王が復活しているのか?」


 ローザが切り口を変えた。できるだけ魔界と魔王の情報を拾おうというものだろう。

 だが、その質問をした瞬間、ベルメルリドはガタガタと震えだし、その震えが次第に大きくなっていく。


「なんだ?」

「どうしたというのだ!?」


 後ろで尋問を見ていたアソードとムールが、異変に慌てた。

 ベルメルリドの全身から魔力が噴き出す。それはまるで魔力の奔流であり、荒々しく尋問室内を蹂躙していく。


「「ぐあっ!?」」


 このていどの魔力の奔流でラックたちは吹き飛ばないが、アソードとムールは吹き飛んで壁にぶち当たった。


「何が起きている?」


 ラックの質問に答えられる者はいない。だが、それは現れた。


「ほう、ベルメルリドを捕縛したか。人間ごとき矮小なる者がな」


 ベルメルリドの口を伝っているが、その声はまったく別人のものだった。声の質からすると少女のように思えた。

 しかも、その人物は封印の手枷があるにも関わらず、圧倒的な魔力を撒き散らしている。


「貴方はどなたですか?」


 ラックは冷静に誰何した。


「我が魔力を浴びても、平気だと? ふふふ。ベルメルリドを捕縛したことといい、どうやらお前たちが勇者と仲間のようだな」


 その存在はラックたちの素性を当てた。


「ならば、我も名乗ろうか」


 ご満悦の表情で、饒舌に自分のことを話し始める。


「えーっと、魔王さんですよね?」

「なっ!? なぜ分かった!?」


 封印の手枷をしているベルメルリドを通じ、これだけの魔力を放出できる存在が、ただの魔族なわかけがない。であるなら、簡単に答えにいきつく。


「初めまして、魔王さん。僕はラックと言います」

「お、おぅ……。初めまして。魔王のメリアーダだ」


 やっぱり魔王だった。しかも、名前も教えてくれた。


「って、ちがーーーうっ!」

「え? 魔王さんじゃないの?」

「いや、魔王だが、そうじゃないんだ!」

「えーっと、魔王さんは情緒不安定ですか?」

「誰が情緒不安定だ!? ぶち殺すぞ、われっ!」

「こわっ! 魔王さんって、怖いですね」

「いや、怖くないぞ。こんなにお茶目な可愛らしい魔王なんだから」


 これはなんの喜劇かと、皆が遠巻きに2人のやりとりを見守っていた。


 

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