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043_真実

 


<注意>

 拷問シーンがあります。

 読まれる方は、お気をつけください。




 魔族には、手枷をはめて行動を制限している。


「こんなもの!」


 この手枷は、一見すると普通の木製の手枷だが、魔族相手に普通の手枷で済むわけがない。

 魔族がどれだけ暴れようと、この封印の手枷は外れないし、壊れない。


「ど、どういうことだ!?」


 病的に白い肌を赤くしても、なぜか病人にしか見えない魔族は、かなり動揺しているように見える。

 それもこれも、封印の手枷をはめられると、全能力が三十以下に制限され、スキルも使えなくなるからだ。

 人間の一般人と大して変わらない能力になって、スキルまで使えなくなるので、魔族を拘束するにはもってこいのものだ。

 この封印の手枷は、ラックがスーパーレアガチャを回した時に出たアイテムなので、非常に高性能である。


 檻の中で右往左往する魔族を、アソードがにやにやしながら見つめる。


「聖女殿が用意した手枷だ。魔族であろうと破壊はできぬわ。はーははははは」

「ぐぬぬぬ。ふざけるな! これをすぐに外せ!」

「外せと言われて、外すバカがどこにいる。もっとも、質問に素直に答えたら、外してやってもいいぞ」

「誰が人間風情にっ!」

「がーっはははは。ならば、拷問して吐かせるまでよ」


 アソードが黒い笑みを浮かべる。これではどちらが悪役か分からない。


「おい、魔族を尋問室に連れていけ。念のため、鎖でしっかりと縛るのだ」

「はっ!」


 三人の兵士が檻の中に入っていき、牙をむき出して暴れる魔族を押さえつけて鎖で縛る。


「くそーーーっ。放せ! 人間風情が! 殺してやるーーーっ!」


 魔族は、あっけなく縛られ、尋問室へ引きずられていく。

 その一部始終を見守っていたのは、ローザである。

 ローザは立ち合いのためにいるので、口出ししない。しかし、連れていかれる魔族の悲哀を見ておかしくなって、ローザにしては珍しく笑みを浮かべるのだった。


 尋問室で椅子に縛られた魔族は、牙を剥いてアソードを威嚇する。


「くくく、いい姿だな。お前の名前は、なんだ?」

「………」

「バメルンドを滅ぼそうとしてくれたのだ、質問に答えぬというのであれば、拷問するぞ」

「ふんっ!」


 魔族は、アソードをまったく意に介していない様子だ。

 これに怒りを感じたアソードは、部下に魔族の指の爪をはがすように命じた。


「ギャーーーッ!」


 魔族の悲鳴が、尋問室にこだまする。

 爪を一枚、また一枚とはがされても、魔族は口を割ろうとしない。


「両手の爪がなくなったではないか。おい、回復してやれ」


 魔族に回復魔法を施すと、爪が元通りの状態になった。


「次は、指を切り落とせ」

「はっ!」


 魔族の親指が切られる。


「ギャーーーッ!」

「早く言えば、楽になるぞ」

「ぐぬぬぬっ」


 魔族は、近くにいた兵士に唾を吐きかける。


「強情な奴め! おい、焼きゴテだ」

「はっ!」


 指を切り落とした傷口に、焼きゴテを押しつける。


「ギャーーーッ!」


 肉が焼ける独特な臭いがするが、アソードは指を切り落としては焼きゴテを当てるを繰り返した。

 これは拷問の意味もあるが、失血によって魔族が死ぬのを防ぐためでもある。


 両手の十本の指を切り落とし、焼きゴテで焼かれても魔族は口を割らない。


「今日はここまでだ。檻に戻して、しっかりと見張っておくのだぞ」

「はっ!」


 尋問(拷問)は、始まったばかりである。

 一カ月の間に必ず魔族の口を割ってみせるぞと、アソードは気合を入れる。


 一方、間近で拷問を見ていたローザは、自分ならもっとスマートにやる(・・)のにと首を振る。

 なんと言っても、ローザには暗黒魔法がある。この暗黒魔法は、人の精神を操ることのできる魔法なのだ。

 今のローザは魔族よりも能力が高いので、暗黒魔法で精神を操って自白させるのは容易(たやす)いことだ。

 これまで精神を操るようなことをしてこなかったため、仲間であるカトリナやラックたちも気づいておらず、ローザも積極的に精神を操ろうとしないため、スルーされているスキルである。


 宿屋に帰ったローザは、カトリナたちと合流した。

 ローザは魔族の尋問に立ち会ったが、カトリナたちは魔族と出遭った場所の近くにデモンズゲートがないか探していた。


「残念ながら、デモンズゲートは見つからなかったわ。あの魔族は、どうやって人間の世界へやってきたのかしら?」


 魔界と人間界を繋ぐと言われるデモンズゲートのことは、詳しく分かっていない。

 人間たちは二つの世界を繋ぐものであり、一度発生したらしばらくはそこにあり続けるものだと思っている。

 だが、近くにはデモンズゲートはなかった。では、あの魔族はどこからやってきたのか?


「でも、デモンズゲートがないから、魔王軍が攻めてくることはなさそうだね」

「ラックさんの仰るように魔族軍の心配はなさそうですが、気になりますね」


 カトリナは、ため息混じりに頷いた。


「分からないものをいくら考えても、分からぬものだ。今日はしっかりと寝て、明日また考えてみるといいだろう」

「ゴルドの言う通りだよ。今日は休もう」


 ラックが締めくくって、お開きになる。

 女性陣が自分たちの部屋へ向かうと、ラックはゴルドに断って箱庭へ向かった。


「お、山が増えたね。それに世界樹もそこそこ大きくなってる」


 ラックの魔力を消費すれば、森でも山でも設置がきる。

 そして、世界樹は大木と呼ぶにふさわしい大きさになっていた。あくまでも、一般的な木の尺度なので、世界樹ならさらに大きくなるだろう。

 それにラッキーは、世界樹が育つまで百日ほどかかると言っていたので、まだまだ大きく育つはずだ。


「マスター。おかえり~」


 ラックが世界樹を見上げていると、ラッキーがやってきた。

 相変わらず、可愛らしいモフモフの尻尾のあるお尻をふりふりしている。


「ラッキー、ただいま。変わったことはなかった?」

「順調だよ。次は湖を設置しようか。その後は、動物を増やしてもいいよね~」

「え、動物も増やせるの?」

「もちろんだよ。でも、肉食の動物を増やすと、マスターを襲うこともあるからね」

「あ、うん。そうだね……。ねえ、外から動物を持ち込んだらどうなるの?」

「どうもしないよ。番なら自然に繁殖すると思うよ。それに数やいる場所は、全部僕が管理しているから大丈夫だよ」


 ラッキーは動物の繁殖状況も管理できる優れ者だった。


「それじゃあ、次は湖を設置しておいて」

「分かったよ。十日ほど待ってね」


 ラックは調合室に入って、薬草からポーションを作った。

 作ったポーションを真贋の目で見てみると、最高品質のポーションと出た。

 ラック自身の努力もあるが、技巧者がよい仕事をしてくれるようになったおかげだ。


「マスター。ポーションの在庫が沢山あるよ。使わないの?」

「使うことがないんだよね……」

「それなら、ポーションなどの薬品を保管する倉庫を、設置したらどうかな?」

「そうだね、その倉庫を設置しておいて」

「分かったよ~」


 MPが抜けていくが、大したものではない。

 この感覚が大きくなればなるほど、規模の大きなものを設置したことになる。

 だが、山や森を設置しても平気な顔をしているラックに、倉庫ていどのMP消費は誤差範囲なのだ。


「マスター。倉庫は明日には完成するからね~」

「うん、よろしく頼むよ」


 そこでラックは、精霊王エフェナイスを呼び出した。


「主様。久しぶりね」

「エフェナイスに聞きたいことがあるんだ」

「何かしら?」

「今日、魔族と会ったんだけど、その魔族がいた辺りでエフェナイスと同じような、魔力の残渣のようなものを感じたんだ。何か知らないかな?」

「あらやだ、主様は私の匂いを覚えているのね。うふふふ」


 エフェナイスが体をくねくねさせて、頬を赤くして身もだえる。とても嬉しそうだ。


「いや、匂いじゃなくて、魔力のようなものを感じたんだ」

「うふふふ、そんなに恥ずかしがらなくてもいいのよ、主様」

「いや、恥ずかしがってはいなくて……」


 エフェナイスが、ラックの口に指を当てる。

 向こう側が透けてみえるが、美しい容姿の少女のエフェナイスの顔が近く、ドキドキする。


「それはね、私と同じ精霊がそこにいたということよ、主様」

「やっぱり精霊がいたんだね」


 そうなると、魔族と精霊はどういう関係なのか、気になる。

 協力関係か? 敵対関係か? 不干渉の関係か?

 少なくとも、敵対関係ではないだろう。なぜなら、あの場には争った形跡はなかった。

 もちろん、精霊がいた場所に魔族が偶然現れた可能性もある。だが、魔族の魔力残渣と精霊の魔力残渣は同じ頃に、一緒にいたことを示していた。


 残った可能性はたまたま出会っただけで、不干渉だから何もなかったのか、それとも協力関係なのか?


「主様だから特別に教えるけど、人間が魔族と言っているのは堕聖霊なの」

堕聖霊(だせいれい)……」

「人間が死ぬと魂になるの。それで、その魂は消えてなくなるか、肉体を持たない聖霊になるの」


 エフェナイスはくるりとラックの周囲を飛んで、うふふふと笑う。

 その行動は、話をもったいぶっているようにも見える。


「それでね、生前、人間に対する恨みが強いと、聖霊が堕聖霊になっちゃうの」

「そ、それが魔族……」

「そうよ。堕聖霊は、元々は主様と同じ人間なのよ」


 驚愕の事実である。


「それでね、堕聖霊は肉体を得るために、人間やモンスターの肉体を取り込むの。受肉とか言うわね」

「………」

「最初はただの肉の塊のように見えるけど、そういった肉体を多く取り込めば取り込むほど堕聖霊は強さを増して、主様たちが魔族と呼んでいる姿になっていくのよ」


 人間だった魂が、恨みを残して最後には魔族になる。つまり言い換えれば、魔族は人間なのだ。


「堕聖霊は、人間に恨みがあるから、人間を襲うのね。でも、私たち精霊に、恨みはないから、襲ってこないの」

「それじゃあ、精霊と魔族が一緒にいたのは?」

「魔族だって元人間だから、主様のように精霊と契約していることもあるわ」


 だが、今回捕縛した魔族に、精霊と契約しているふしはなかった。


「魔族は一人じゃないんだから、他の魔族と契約した精霊にその魔族をここまで送らせたのかもしれないわね」

「すると、精霊は魔界と人間界を往来できるの?」

「時空属性の精霊なら簡単よ」


 ラックは、その場に座り込んだ。

 あまりにも重い事実を聞いて放心状態なのだ。


 

ガチャマンを読んでくださり、ありがとうございました。

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