040_モンスターの大侵攻と魔族
山頂を越えたことで、ホードリス共和国に入ったラックたち五人。
カトリナの接近戦も様になってきて高い能力を生かしてモンスターを圧倒できるようになってきたし、ローザも魔法をよく制御している。
そこでラックは二人にスーパーレアの景品として出る剛腕の種、持久の種、魔導の種、俊足の種、匠の種、生命の種、魔法の種を与えることにした。
「そんな種まであるのですか!?」
カトリナが目が落ちそうなほどに見開く。
「能力という概念……興味深い……」
ローザは各種を見つめながらぶつぶつ呟く。
「とりあえず一個づつあるから、全部食べて」
剛腕の種、持久の種、魔導の種、俊足の種、匠の種は対応した能力値をそれぞれ五百づつ上げる。
生命の種、魔法の種はHPとMPをそれぞれ千づつ上げる。
今まではラックのスキル真贋の目で二人の能力を見ることができたが、種を食べると自分自身のステータス表示で能力が確認できるようになる。
【氏名】 カトリナ・ジスカール 【種族】 人族 【性別】 女
【天職】 聖女 【レベル】 20(180000/200000)
【HP】 5000/5000 【MP】 5000/5000
【腕力】 1000 【体力】 1000 【魔力】 1500 【俊敏】 1000 【器用】 1000
【固有スキル】 博愛
【スキル】 神聖魔法6(3300/6000) 支援魔法6(1000/6000) 格闘3(1020/3000) 棍棒4(2030/4000) 見切り3(300/3000)
装備品:破魔のメイス 破魔のローブ 祈りのロザリオ
【氏名】 ローザ・マルケイ 【種族】 ハーフ(人族・魔人族) 【性別】 女
【天職】 賢者 【レベル】 20(180000/200000)
【HP】 3500/3500 【MP】 8000/8000
【腕力】 800 【体力】 800 【魔力】 2000 【俊敏】 800 【器用】 1100
【固有スキル】 魔導
【スキル】 暗黒魔法6(1100/6000) 爆破魔法6(1000/6000) 雷魔法6(100/6000) 弱体魔法6(3000/6000)
装備品:魔導士の杖 魔導士のローブ 魔導士の帽子
「本当に能力が見える……」
ローザがステータスの能力値を見ながら、何やらぶつぶつ呟いている。
彼女はしばしば自分の世界に浸ることがあり、その際にはぶつぶつ何かを呟く癖がある。この数日でラックたちはそのことを把握した。
「これが勇者パーティーを支援すると言われるガチャマンの能力……」
カトリナは何やらメモを取っている。
このことを帝国やサダラム教へ送るためなのは、ラックたちにも分かっていることだ。
だが、このていどはまだラックの力のほんの一部であり、知られたからと言って困ることはない。
こういった行動がラックの目にどう映るか、カトリナは理解しなければならないだろう。
険しい山越えも終盤に差しかかったところで、ラックは違和感を感じた。
立ち止まってきょろきょろと周囲を見渡すラックの行動に、ゴルドはどうしたのかと聞いた。
「なんて言ったらいいのか、分からないけど……空気が重いんだ」
「空気が重い……?」
ラックの言葉を聞き、ゴルドたちも周囲を窺う。
だが、ゴルドたちには何が違うのか分からなかった。
「僕もなんて言えばいいのか分からないから、気のせいかもしれない。進もうか」
「ラック様、警戒を密にして進みましょう」
ラックはゴルドに頷いて歩き出した。
だが、進めば進むほどラックが受ける違和感は大きくなっていき、やがてそれがなんなのか分かることになる。
「ラック様。モンスターの大侵攻です」
ゴルドの言葉はラックの心に突き刺さった。
ラックのドライゼン男爵領は元勇者のベルナルドによってモンスターの大侵攻を故意に起こされ、その際に家族を暗殺されてしまったのだ。
そのことを思い出すと、今も胸が痛む。
「この先にあるのは、バメルンドという町だったはずです」
眼下の森から多くのモンスターがバメルンドを目指して進んでいる。
「あのモンスターの大侵攻は、ドライゼン男爵領で起こったモンスターの大侵攻の数倍はあるでしょう。今すぐ助けに向かいましょう」
あれほどの大量のモンスターがバメルンドに殺到すれば、バメルンドはただでは済まないだろう。
ラックはカトリナの言う通りだと考えて、すぐにでも救援に駆けつけようと思った。
だが、ラックはその場を動かず、ある一点を見つめている。
「ほう、このようなところに人間がいたか」
ラックの視線の先に、異形の人間が現れる。
濃い紫色の髪の間から二本の巻き角が生えていて、背中には蝙蝠の羽、顔は人族のそれに似ているが、肌は病的に白く、口から二本の牙が見えている。
「ま、魔族!?」
ラックが訝しがっていると、カトリナが悲鳴のような声をあげた。
「あれが魔族……」
シャナクが初めて見る魔族に好奇な視線を向ける。
「魔族がこのようなところで何をしているのですか!?」
カトリナには珍しく、強い口調である。
「ふふふ、人間に答える義理はない」
魔族は口角を上げてカトリナの質問を受け流す。
「言うつもりはないようですね。では、貴方を倒して無理やりにでも聞きます!」
「ほう、人間ごときが言うではないか」
カトリナが魔族と戦うためにボドル王国で購入したモーニングスターを構える。
ラックは魔族とカトリナのやり取りを聞きながら、ここに魔族がいることについて考えていた。
魔族は魔王の配下であり、ラックたちとは住む人間界とは違う魔界に住んでいる。
そのため、デモンズゲートを発生させて、魔界と人間界を繋げなければ往来はできない。これが人間界の常識なのだ。
そうなると、目の前にいる魔族はデモンズゲートを通って人間界にやってきたことになる。つまり、デモンズゲートはすでに発生していて、魔王はいつでも人間界に魔王軍を派兵できるということになる。
ラックは目の前にいる魔族にデモンズゲートのことを聞かないといけないと思った。
「ゴルド、シャナク、カトリナさん、ローザさん。あの魔族を捕縛します。殺さないでください」
ラックのその言葉を聞き、魔族は不快感を隠そうともせずにラックに殺気を飛ばしてくる。
「この私を捕縛する? 人間ごときが言うではないか」
指先の長い爪で自分の顎を撫でると、魔族はビシッとラックを指さした。
「お前は私のペットにしてやろう。くくく、人間ごときが私を侮辱したことを長い年月をかけて後悔するといい。はーっははははははは」
魔族は高らかに笑い声をあげて、ラックをペットにすると宣言した。
そのことに怒りを覚えたのは、ゴルドとシャナクである。
自分たちが敬愛するラックをペットにすると言った、魔族を死なないていどにボコボコにすると心の中の自分に誓うのであった。
「あの魔族も問題だけど、モンスターの大侵攻も問題だ。魔族のことを早く片づけて、モンスターの大侵攻に対応しよう!」
「「「「はい!」」」」
「言うではないか! ここまで私を侮辱してただで済むと思うなよ!」
魔族がラックたちに手の平を向けると、その手の平から真っ黒な炎が噴き出してラックたちに襲いかかる。
その炎は死炎と言われる、魔族特有のスキルで、死炎に焼かれると体を焼くのではなく魂を焼かれ一般人なら即死するというものである。
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