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028_天職

 


 今のラックは支援の熱耐性によって、灼熱のダンジョン内でも快適に過ごせる。

 氷魔法で熱を遮断する方法もあったが、MPの消費が支援のほうが少なく効果もよいため支援を使って熱耐性を自分に付与している。


 支援は非常に優秀なスキルで、耐性だけではなく腕力強化、体力強化、魔力強化、俊敏強化、器用強化などの各種能力の強化もできる。

 さらには、剣や防具にも多くの効果を付与できるため、ラックたちの能力はステータスで見る値よりもはるかに高いものになっている。

 しかも、ラックには超越強化や神速といったスキルもあるため、ラックはファイアドラゴンくらいなら一瞬で屠れるだけの力があるのだ。


「凍りつけ!」


 氷魔法で周囲のモンスターを一気に凍らせる。

 本来、火や炎系のモンスターは氷系の攻撃に強いが、ラックの氷魔法はそんな属性の有利不利など関係なくモンスターを凍らせていく。圧倒的な魔力値があればこそできる力技である。


 ラックが氷魔法でモンスターを氷漬けにしている頃、ゴルドとシャナクは競うようにモンスターを切っていく。

 二人は止まることなくモンスターを切り捨て、モンスターの攻撃を受けるのではなく躱してカウンターで剣で切る。

 ラックが支援で各能力値を上昇させていることもあるが、二人は圧倒的な力でモンスターを屠っていく。


「シャナク。速度が落ちているぞ、疲れたか!?」

「疲れていません! ゴルドさんに合わせているだけです!」

「ははは! それだけの減らず口を叩けるのであれば、まだ大丈夫だな!」

「当然です!」


 シャナクが疲れてきたタイミングを見計らってゴルドが声をかける。

 よい兄弟子であり、年長者の気遣いができるゴルドである。


 三人が七割ていどのモンスターを倒したあたりで、ファイアドラゴンが出てきた。


「シャナク、いくぞ!」

「はい!」


 ゴルドがファイアドラゴンの右前足を切り落とすと、シャナクも左前足を切り落とす。いや、シャナクの剣はわずかに左前足を切り落とすまでいかなかった。

 だが、ファイアドラゴンが痛みで悲鳴を上げて体をよじった瞬間、左前足の残っていた皮と肉がブチッと音を立てて千切れた。


「シャナク、首を狙え!」

「はい! はぁぁぁぁぁっ!」


 シャナクが飛び上がってファイアドラゴンの首を切りつけた。

 ファイアドラゴンの太い首が半分ほど切れて、切り口から火の粉をまき散らす。


「とどめだ!」


 ゴルドが残った部分を切り、ファイアドラゴンの首が地面に落ちる。


「ゴルドさん、やりました!」

「まだだ! まだ、モンスターは腐るほどいるから気を抜くな!」

「はい!」


 二人は連携しながら大物のモンスターを狩っていく。

 その光景を見ながらラックも聖剣ソラスティーバを振る。

 さすがにファイアドラゴンを完全に凍らせることはできないが、氷魔法で動きを一時的に止めることができるのでファイアドラゴンはラックにとって経験値とガチャポイントでしかない。


 ファイアドラゴンが狩りつくされると、その向こうには不思議な気配を放つ石碑のようなものがあった。

 サラウンディングマップにあった初めて見るマーカーのようだが、この石碑がどういったものなか分からない。


 石碑はまるで数百年そこにあったかのように、まったく違和感がない。だが……。


「師匠。ダンジョンの中のこんなところに石碑があるなんて変ですね」


 シャナクの言う通り、ここはダンジョンの中だ。

 ダンジョンの中にこのような石碑があるとはゴルドでさえ聞いたことがない。


「嫌な感じはしませんが、なんでしょうか?」


 ゴルドの言う通り、ラックも嫌な感じはしない。

 石碑に近づいてみても特に何も起きない。ただのオブジェクトなのかと三人は思った。


「師匠。こちら側に何か書いてあります」


 ラックの反対側へ回ったシャナクが文字を見つけたようだ。

 ラックは貴族の出身なので文字の読み書きは習っているが、石碑に刻まれたその文字はまったく読めないラックの知らない文字だった。


「何が書いてあるか、さっぱり分からないね」

「左様ですな」

「私は文字はあまり読めないので、どちらにしろ分かりません」


 平民の識字率は高くない。

 平民出身のシャナクも文字の読み書きができないようだ。

 時間があったらシャナクに文字を教えてあげようと、ラックは考えた。


「罠ではなさそうですが……?」


 シャナクは石碑をペタペタと触ると、ゴルドも押したり引いたりしてみたが、何も起こらない。


「とりあえず、この石碑は放置だね」


 ラックがそう結論づけて、三人はその場を立ち去った。

 ラックたちの姿が見えなくなると、石碑が淡い光を放ってその場から消滅してしまった。

 ラックたちが石碑が消えたことに気づくのは、数分後にサラウンディングマップを開いた時だったが、わざわざ立ち戻って確認もしなかった。


 さらに奥に進むと、今度はファイアドラゴンの上位種であるフレアドラゴンが出てくる。

 フレアドラゴンはファイアドラゴンよりも一回り大きく、さらに強いモンスターだ。

 その口から吐き出される炎のブレスはダンジョンの床を溶かしマグマ状にするほどの高熱を持っている。


「そんなもの!」


 ラックが聖剣技光の裁きシャイニングジャッジメントを発動し、フレアドラゴンのフレアブレスを押し返す。

 押し返すだけではなく、光の裁きシャイニングジャッジメントはフレアドラゴンを飲み込んでその命を絶つ。


「さすがはラック様だ! シャナク、我らもラック様に続け!」

「はい!」


 ゴルドがフレアドラゴンに突っ込むと、フレアブレスが吐かれた。ゴルドはそのフレアブレスを堅牢なる盾で受け止める。

 堅牢なる盾は誰かを守りたいと思う意思が強ければ強いほど強固な盾になる。

 ゴルドには命にかけて守りたいと思う人物がいることから、堅牢なる盾はフレアブレスを受け止めて耐えきることができた。

 だが、堅牢なる盾が堅牢でも、フレアドラゴンが吐き出したフレアブレスの熱はゴルドを容赦なく焼く。

 いくら熱耐性があっても、スキルレベルが低い状態ではフレアブレスを無効化できないのは当然だ。


「ぐ、うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 ゴルドは体中をフレアブレスに焼かれ、熱耐性スキルの経験値がものすごい速さで溜まっていく。


「がーっはははは! 某には貴様のブレスなど効かぬわっ!」


 やせ我慢もここまでくると、天晴と言わざるを得ない。

 ゴルドはそのまま突っ込んで堅牢なる盾でフレアドラゴンの顎を殴りつけると、フレアドラゴンの首が後方に大きく反り上がり、ブレスは上へと吐き出される。


「シャナク、今だ!」

「任せてください! 私だってゴルドさんに負けません! 絶対に退かない勇気を、見せてあげます!」


 シャナクが大きくジャンプして、勇気の剣を振り切った。

 ズサーンッ。フレアドラゴンの首が断ち切られ、頭が地面に落ち首からは炎が噴き出している。


「やるようになったではないか、シャナク!」

「いつまでも足手まといじゃないんですよ、ゴルドさん! って、ゴルドさん、大丈夫ですか!?」


 鎧に守られていない部分が焼けただれているゴルドの姿は、かなり酷い状態だ。

 シャナクはハイポーションをアイテムボックスから取り出してゴルドに渡す。


「このくらい大したことではないぞ! はーっはははは!」


 ゴルドはシャナクから受け取ったハイポーションを笑いながら呷った。


 ラックは二人を頼もしく思い、いいコンビだとほほ笑む。

 その後もラックたちはフレアドラゴンを数十体倒して、モンスターの集団を完全に殲滅した。


「ふー、終わったね」

「ラック様、お怪我はございませんか?」

「うん、大丈夫だよ、ゴルド」

「シャナクはどうだ?」

「あ、あの……」

「どこか怪我をしたのか?」

「そうじゃないんです。ス、ステータスが……」


 どうしたのかと思ってラックは真贋の目でシャナクのステータスを確認する。


「は?」

「ラック様、シャナクはどうしたのですか?」

「て、天職が変わっている……」

「天職が!?」


 シャナクの天職は村人だった。


「天職が、勇敢なる勇者になっているんだ」

「はへ?」


 あまりのことにゴルドが変な声をあげてしまう。


「それだけではなく、固有スキルに不退転というスキルもあるし、他にも多くのスキルがあるんだよ」

「それはまた……珍しいことが起きましたな……」


 ラックとゴルドは天職が別の何かになるということを聞いたことがない。

 それは、天職が変わってしまったシャナクも同じである。


「し、しかし、勇者は当代に一人ではないのですか?」

「僕もそう聞いていたけど……」


 ラックとゴルドがシャナクを見つめる。

 目の前に村人から勇敢なる勇者になった人物がいるのだ。

 過去にどんなことを聞いたとしても、これが現実である。


 ラックはもしかしたらと自分のステータスを見た。


「あ、そうだよね……」


 期待はしていなかったが、天職はガチャマンのままだった。


「あっ!?」


 ラックが大声をあげるので、ゴルドとシャナクはラックの顔を見る。


「ラック様?」

「師匠?」


 ラックはごくりと唾を飲みこむ。


「ゴルドも天職が変わっているよ」

「ほへ?」


 またもや変な声が出てしまうゴルドである。


「……僕の天職は変わってないけど、二人は天職が変わった……転職したんだ」

「某の天職が……」


 ゴルドも自分でステータスを確認するが、目が点になってしまう。


「まさか……これが某の天職……」

「うん、それがゴルドの天職だよ」

「……守護の聖騎士」


 シャナクが勇者、ゴルドが聖騎士に転職した。

 聖騎士というのは、帝都でラックを従僕にしていたアナスターシャ・モーリスの天職であった。

 それが今、ゴルドの天職になっている。

 これが何を物語っているのか、三人の理解するものではなかったが……。



【氏名】 ラック・ドライゼン 【種族】 人族 【性別】 男

【天職】 ガチャマン 【レベル】 24(149475/240000)

【HP】 15544/14044+500+1000 【MP】 15544/14044+500+1000

【腕力】 7021+300 【体力】 7031+300+500 【魔力】 7010+300+500 【俊敏】 7022+300 【器用】 7020+300

【称号】 モンスターデスメイト

【固有スキル】 ガチャ ガチャ変換 剣聖5(3000/5000) 支援3(100/300)【ガチャポイント】 321200

【スキル】 物理攻撃耐性1(1/100) 真贋の目5(555/5000) 異空間庫 結界魔法5(200/5000) 超越強化5(300/5000) 氷魔法5(100/5000) 状態異常無効 パーフェクトフェイク 神速5(3000/5000) パーティー共有 神聖魔法5 鍛冶5 

 装備品: 聖鎧ヴァルギニア 聖剣ソラスティーバ 勇者の指輪 聖騎士の指輪 賢者の指輪 聖者の指輪 名工の指輪 生命の指輪 サラウンディングマップ



【氏名】 ゴルド・シバーズ 【種族】 イヌ獣人 【性別】 男

【天職】 守護の聖騎士 【レベル】 35(226788/350000)

【HP】 7000/7000 【MP】 5000/5000

【腕力】 4000 【体力】 4500+100 【魔力】 4500 【俊敏】 4000 【器用】 3900

【称号】 ラックの騎士 ドラゴンスレイヤー 守護の聖騎士

【固有スキル】 守護者 聖剣盾1(0/100) 聖剣盾技1(0/100)

【スキル】 気配感知5(MAX) 直感5(MAX) HP回復増5(MAX) 熱耐性5(400/5000)

 装備品:守護者の鎧 守護者の盾 聖剣アスカロン 持久の腕輪



【氏名】 シャナク・ルタシッダー 【種族】 ハーフ(エルフ族・人族) 【性別】 女

【天職】 勇敢なる勇者 【レベル】 21(89788/210000)

【HP】 6110/6110 【MP】 6110/6110

【腕力】 4047+30 【体力】 3547 【魔力】 3547 【俊敏】 3547 【器用】 3547

【称号】 ラックの弟子 ドラゴンスレイヤー 勇敢なる勇者

【固有スキル】 不退転

【スキル】 片手剣5(400/5000) 片手剣技5(800/5000) 気配感知3(200/300) 身体強化3(100/300) 光魔法1 (0/100) 気合1(0/100)

 装備品:不退転の剣 耐熱の鎧 耐熱の盾 腕力の指輪 アイテムボックス



 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 シャナク「ゴルドさん」

 ゴルド「なんだ?」

 シャナク「勇者って何をすればいいのでしょうか?」

 ゴルド「魔王を倒せばいいはずだ」

 シャナク「勇者ってたったそれだけのことのためにいるのですか?」

 ゴルド「たったそれだけと言うが、魔王討伐は大変な偉業だぞ」

 シャナク「私にしてみれば、師匠の家族を殺したベルナルドっていう人のほうが魔王よりも倒すべき悪だと思うのです」

 ゴルド「その意気やよし! 某と共にラック様の敵を討ち滅ぼすのだ!」


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 

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