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018_真相に近づくが……



 


 冒険者ギルドベルゴイーユ支部は闇ギルドの拠点を襲撃し、闇ギルド員の多くを捕縛もしくは殺害した。

 これは、ジョイゴ、ボリス、ゴライア、ドゴスの四兄弟から得た供述によって、闇ギルドの拠点が明らかになったからできたことである。

 闇ギルドは冒険者とも繋がりがあって、冒険者からも二十人ほどが捕縛対象になった。

 これだけ大規模な闇ギルドの摘発は滅多になく、冒険者ギルドはベルゴイーユがあるセビナイス王国の本部からも応援を得て、事後処理が行われている。

 闇ギルドとドライゼン男爵暗殺に関係性はないが、四兄弟の余罪を確認したところ闇ギルドとの繋がりが分かったのだ。


 支部長の部屋では、今回の闇ギルド摘発の発端になったラックとゴルドがソファーに座って、支部長から説明を受けている。


「四兄弟は、バーンガイル帝国のファイナス侯爵家の使用人からドライゼン男爵領で大侵攻をわざと発生させるように、さらに領主一族を殺す依頼を受けました」


 その報告はラックにとって非常にショッキングなものであった。

 ファイナス侯爵家はバーンガイル帝国の名門の家で、勇者ベルナルド・ファイナスを輩出したことでかなりの権勢を誇っている家だ。

 そんなファイナス侯爵家がなぜ片田舎のドライゼン男爵領を滅ぼしたのか……?


「ファイナス侯爵家が関係しているのは間違いないのですか?」

「四兄弟は今回の依頼の重大性を理解しています。依頼を受けた際に依頼者の素性を探っていましたので、間違いないです」


 ラックは不思議と怒りは感じなかった。ただ、釈然としないだけである。

 弱小ドライゼン男爵家が大貴族であるファイナス侯爵家に喧嘩を売れるわけもなく、繋がりがあるとも聞いたことがない。

 繋がりがあるのは、ラックと勇者ベルナルド・ファイナスなのだが……。


「まさか……」


 勇者が自分ではなく、家族を殺す意味は……。

 そこまで勇者と自分に繋がりはないとラックは思っているし、実際のところ繋がりは聖騎士アナスターシャを通してのものしかない。

 考えても分からない。


「四兄弟とファイナス侯爵家はどうなりますか?」

「四兄弟は罪状が多すぎて最低でも終身奴隷です。本部の判断次第では死刑もあるかと」


 支部長はお茶をズズと啜って、カップからゴルドそしてラックに視線を移す。


「ファイナス侯爵家に関しては、冒険者ギルドに権限はございません。ですから、バーンガイル帝国の判断によります」

「そう……ですか」


 下級貧乏貴族のドライゼン男爵家と、名門大貴族のファイナス侯爵家を天秤にかければ、どう考えてもファイナス侯爵家だろう。

 ファイナス侯爵家に何かしらのペナルティがあったとしても、それは大したものではないはずだ。


「帝国には報告があるのですね?」

「もちろんです。冒険者ギルド帝国総本部を通じて帝国へ報告します」

「分かりました。僕はそれで構いません」

「ラック様、よろしいのですか?」

「僕はすでに帝国を捨てた身。もうあの国にかかわるつもりはないよ。それに僕が何か言ってもファイナス侯爵家は揺るがないはずだから」


 ファイナス侯爵家は大貴族なのだから下級貴族のことなど揉み消すだけの力を持っている。

 しかも当代の勇者を出していることから、その権勢は陰りが見えない。

 冒険者ギルドから国に報告がいくことで、もしかしたら多少はダメージがあるかもしれないが、それは軽微なことだろう。

 そんな諦めにも似た感情がラックの心の中に渦巻く。


「ゴルド。僕たちは旅の途中だったろ。父を直接殺した四兄弟は罪を償うことになったんだ、旅を再開しよう」

「……承知しました」

「支部長様、四兄弟のことは、確実にお願いします」

「もちろんでございます」


 ラックとゴルドは冒険者ギルドを後にして、翌日からの旅のための買い物をすることにした。


「おっちゃん、花はいらんかい?」

「え、おっちゃん……」


 花売りの子供におっちゃんと呼ばれて、ラックはショックを受けた。

 まだ十五歳のラックがおっちゃんと言われる年齢に見えたのかと、その言葉は心にぐさりと突き刺さった。


「ぼ、僕はおっちゃんじゃなくて、お兄ちゃんだよ」


 全身薄汚れていて特に顔の汚れが酷い十歳くらいの男の子に、頬を引き攣らせながら訂正する。


「そんなのどうでもいいよ。花を買ってくれるのか、くれないのか、はっきりしてくれよ」


 帝都でもこういった子供が花を売っていた。

 こういった子供は親のない孤児がほとんどで、皆逞しく生きている。

 だから自分も逞しく生きようと思えるし、こういった子供に比べれば自分にはゴルドがいるだけ恵まれていると思える。


「お兄ちゃんって言ったら一本買うよ」

「えー、一本? けち臭いこといわずに十本くらい買ってよ」

「分かった。それじゃ、十本買うから、お兄ちゃんね」

「うん、ありがとう。お兄ちゃん」


 男の子から十本の花を受け取ってお金を渡す。


「ありがとう、おっちゃん」

「ちょ、お兄ちゃんだって!」


 男の子は手を振って人込みに紛れていった。


「ははは。圧倒的な強さでドラゴンを蹂躙するラック様も、子供相手では形無しですな」

「ゴルド……僕、オジサンに見えるのかな?」

「はて、某にはまだ子供に見えますが?」

「うっ……。それはそれで、何か嫌だ」

「ははは。申しわけございません」


 買い物は進んで、露店で売っているトウモロコシ粉のを薄く焼いたものを皮にして肉と野菜が包まれたトルティーヤという料理を買って食べた。


「そう言えば、ガチャポイントはどれだけ溜まっていますか?」


 食事を終えて再び買い物をしていたら、ゴルドがガチャポイントのことを聞いてきた。


「あ、そう言えば全然ステータスを見ていなかったよ」


 最近はステータスを気にする必要もないくらいの能力になってしまったためか、しばらくステータスを見ていない。

 もっとも、ステータスを見る暇もないくらいに忙しかったというのもあるが。


 そんな自分を振り返って見ると、『誰かに引け目を感じて生きていきたくない』と思っていた頃が嘘のような変貌ぶりだと気がつく。

 家族の死はショックだったが、後ろばかり向いていては死んだ家族も気が気ではないだろう。

 それにゴルドという家族ができた。自分は天涯孤独ではないのだと思えるのだ。


「ドラゴンをたくさん狩りましたから、きっと多くのガチャポイントが溜まっていますよ」

「あ、そうだ。ドラゴンが異空間庫に大量に入っているけど、どうしようか?」

「おっと、そうでしたな。ボノジョリドにはそれなりに世話になりましたから、一体くらい売ってやりますか」

「お世話になったんだから贈呈するんじゃないの?」

「甘やかしてはいけませんぞ。今は支部長という立場もあって猫を被っていますが、あいつはすぐにつけ上がりますから」

「あははは。そうなんだ。じゃあ、格安で売ってあげようか」


 ラックとゴルドは再び冒険者ギルドに戻って、支部長を呼び出した。

 そして、属性竜ドラゴン、ファイアドラゴンの死体を激安で提示したら、卒倒しかけた。


「ま、まさかファイアドラゴンの素材を扱えるとは思ってませんでした。なんと感謝したらいいのか」

「別に感謝はいりません。これはお礼ですから」

「分かりました。ラック様からのお礼、しかと受け取りました。しかし、見事に首だけを切り落としてますね。それ以外には傷がありません。とてもいい状態です」


 これだけの品質のファイアドラゴンはまず出回らないため、査定額の半値でもその売却額は非常に高額になった。

 ラックたちは一気に金持ちになったのだ。



【氏名】 ラック・ドライゼン 【種族】 人族 【性別】 男

【天職】 ガチャマン 【レベル】 22(139444/200000)

【HP】 11542/10042+500+1000 【MP】 11542/10042+500+1000

【腕力】 5021+300 【体力】 5031+300+500 【魔力】 5010+300+500 【俊敏】 5022+300 【器用】 5020+300

【称号】 スライムデスメイト

【固有スキル】 ガチャ ガチャ変換 剣聖3(1200/3000) 【ガチャポイント】 67184

【スキル】 物理攻撃耐性1(1/100) 真贋の目2(100/2000) 異空間庫 結界魔法1(0/100) 超越強化1(0/100) 氷魔法1(0/100) 状態異常無効 パーフェクトフェイク 神速1(0/100) 神聖魔法5 鍛冶5 

 装備品: 聖鎧ヴァルギニア 聖剣ソラスティーバ 勇者の指輪 聖騎士の指輪 賢者の指輪 聖者の指輪 名工の指輪 生命の指輪



 宿に帰ってステータスを確認すると、なんとウルトラレアの十一連ガチャが回せるだけのガチャポイントが溜まっていた。


「ウルトラレアの十一連ガチャを回しますか?」


 ゴルドの問いにラックは考えた。

 今のところ何かに困っているわけではない。

 このままガチャポイントを溜めてレジェンドレアの十一連ガチャにチャレンジしてもいい。

 そうだ、そうしようとラックはガチャポイントを溜めることにした。


 

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