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 そして冬が来た。


 気温が下がるとほとんどの動物たちは活動が少なくなり外に出なくなる。そのため肉食の動物たちは狩りを行えなくなり、温かくなるまで巣で眠りにつく種族が多い。本来であれば、ディーノスであるリーベルハイルも冬眠するはずだが、彼にはその必要がない。


 彼は今その巨体に似合わない、繊細で小さな作業を行っている。罠を使って狩りを行っていたリーベルハイルは、食べる分以上の食糧をとってしまうことが多々あった。


 昔は家族に渡しに行っていたのだが、最近では集落へ近づくだけで血の気の多い若者に攻撃されるのでそれも行えない。頭がよく優しい彼は、罠の数を減らしたのだがそれでも見慣れない罠にかかりすぎる獲物をどうしようかと悩んでいた。


 食べる為に命を奪うことは仕方がない、しかしこれ以上罠を減らせば飢えてしまうのでそれも出来なかった。雪の中に入れておくと保存は出来るのだが、硬くて食べてもおいしく無くなってしまう。

困り果てていた時に、以前来た人族たちが置いて行った本を目にした。


 それはどうやらリベルターと呼ばれる狩りをする人族の、それも駆け出し者のためのバイブルらしく、狩りの仕方や肉の処理方法、保存食の作り方などが載っている物だった。


 以前受けた魔法の効果は既に切れているにも関わらず、人間の文字が読めるようになっていたリーベルハイルはその本の内容を元に保存食作りに勤しむ。血を抜いてから皮を綺麗に剥ぎ、肉を薄く切ってから日陰に干す事で保存がきく上に味に深みが増して美味しくなることを知った。


 また、保存食作りの合間に本を読み進めていたリーベルハイルは、自分でも気が付かないうちに旅と言う物に心を惹かれていた。


 以前来た彼らがリベルターと名乗っていた事を思い出す。リベルターとは本の通りであれば、狩りをしたり困っている人を助けたりしながら街を転々とする者たちの事を指すらしい。話を聞きたい、叶うことならば自分も冒険に出たい。そんな気持ちが日々膨らんでいくのを彼は感じていた。


 しかし冬はまだ長く続く。寒さを凌ぐ為、そして次に彼らが来た時に寛ぐ事が出来るようにと考えた彼は、洞窟の入り口に扉をつけ、寝床をふかふかにし、壁に装飾をつけて家のようにしていた。


 雪が解け始め、空気が温かくなり始めた頃、リーベルハイルは頻繁に住処の洞窟を飛び出して周辺を冒険していた。冒険とといっても、本に書かれていた事を見よう見まねで真似しているだけである。


 しかしここはディーノス平原と呼ばれる、人族にとっては未開の地。リーベルハイルがもらった初歩の本では載っていなかったのだが、そこらにある素材は全て一級品であり、人族にとっては価値の高いものであった。


 そんな事はつゆ知らず、見よう見まねで綺麗な石や草、モンスターの骨や皮などを丁寧に処理して洞窟に貯蓄するという行為を繰り返す。気づけば彼の住んでいた巣穴は、人にとっての宝の山になっていた。

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