リーベルハイル
異端者…所謂チート持ちのような存在ですがこの世界ではそのせいで不気味がられてしまい、基本的には迫害の対象となっています。
異端者。それは通常とは違う、思考・行動をする者の事。彼、または彼女らは異端者と呼ばれ、日常の集団生活において、その突飛した言動から周りの者に白い目で見られている。
しかし歴史的観点においてとても重要な存在であり、それこそ名を残したものや歴史自体を動かした者も多い。
異端者という呼び名ではあるが、これは全ての生き物に現れる可能性がある。そして誰にも気が付かれずに消えていく。たとえ誰かに気が付かれたとしても、それが好意になる事は少なく理解者も現れない。孤独に愛された者。
それが異端者であった。
ディーノス平原という場所がある。そこは人族が最も繁栄した中央大陸にありながら、未だ人の手が入らず多くの自然を残している平原だ。人の手が入らないのには理由があった。
それは平原の名前にもなっているディーノスという生き物の存在だ。
ディーノスは二足歩行の蜥蜴のような見た目の生き物で非常に獰猛な性格であり、素早く丈夫な肉体と鋭い牙と爪を持つ肉食生物である。
皮膚はとても固く丈夫であり、剣を通さず、それでいて細かく分割されていて動きを阻害しない。爪と牙はやすやすと鉄の鎧を貫き引き裂く。個体によっては山のように大きな体を持っている者がいるとかいないとか。
歴戦の強者すら裸足で逃げ出すほどの強い生物、それがディーノスだ。そんな彼らの住処がこの平原にあるため、人族は繁栄して街を作った今でもディーノス平原を避けて移動する事を強いられている。
そんな獰猛で強いモンスターであるディーノス。今回現れた異端者は、そのモンスターの中にいた。
彼らは狩りに道具は使わない。強靭な肉体と鋭い武器である爪と牙があるので必要が無いからだ。しかし、その一匹……リーベルハイルと名付けられた個体だけは違う手段で狩りを行っていた。
他の者より手先が器用だった彼は、そこらの物を投擲してみたり、草や木の皮で罠を作って仕掛けたりと明らかに普通ではなかった。
当然自身の肉体で狩りをするのが当たり前であり、本能である他のディーノスからすれば爪や牙を使って狩りをしない彼は臆病者や弱者として扱われる。
成体になった頃にはすっかり爪弾きにされてしまい、親兄弟からも一族の恥だと言われて群れを追い出されてしまった。それでも彼が一人で食うに困らないほど、いやそれ以上に狩りが出来ていたのはその高い知能と、とても器用な手先があってこそだろう。
獲物が少ない冬の期間も、リーベルハイルだけは飢える事も無く静かにひっそりと離れた住処で獲物を狩っていた。