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ひとりぼっちの百物語  作者: 夏野篠虫
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神社を走ったせいで

 今でも同窓会なんかで地元の友達と集まると話題に上がる思い出話がある。



 俺が通っていた小学校は近隣の地区と合併した影響で全校児童数が1000人を軽く超えるマンモス校だった。


 で、この学校で名物・恒例行事になっていたのがマラソン大会だった。高学年だけの行事で毎年2月頭に開催されていた。学校の敷地の周囲を回るルートで、距離は4、5、6年生と上がる事に1.5、2.3、3kmと比例していた。

 今となれば小学生に対してマラソンって、と思うが当時は仕方なくやっていた。とにかく男女関係なく、みんなゼーゼー息を荒らげて完走していた。



 事件が起きたのは俺が6年の時だった。

 例年、4年生から走り始め、最後に6年生が走る。そして校門からスタートして学外の道路を駆け、すぐ横の神社の前を通るのだ。


 今年は道路工事が被ってしまい、学内と近隣で協議した結果、その神社の境内を横断して裏手から道路まで抜けるという迂回ルートを走ることになった。今では考えられないが、当時はうちの学校は近所への力が強かったように思う。それはことある事に学校のイベントを開催する際に賄賂を渡していたから、と噂されている。



 そんな訳で俺らは神社の参道から境内に入り、本殿を避けて裏手に回り込み、林を抜けて本来の道に繋がる別の道路を走った。


 割と足の早かった俺は学年で一桁台の好タイムで神社を通り抜けた。

 後ろにはまだ180人くらいがいた。



 神社を抜けてすぐに、俺の前方から目を開けられないくらい長く強烈な風が吹いた。空気がまるで水流の様に連続した塊みたいで、神社の方まで流れていった。


 俺は大して走ってもいないのにぶわっと全身から汗が止まらなかった。



 でも止まっていたらどんどん抜かされるから気にせず走ろうとすると、今度は後方からギャーギャー騒ぎ声が湧き上がった。


 何か大変なことが起きたんだろうと、周りのヤツらと一緒に怖くなったが、10秒くらいで止んだので聞かなかったことにして走り出した。




――マラソンは8位で終わった。

 運動部に入っていない割には頑張ったと思う。

 けど、学校に戻った時、先生達は大慌ての様子であちこちに駆け回っては電話をしたり話し合ったり、中にはぐったりした児童を抱えて保健室まで走る先生もいた。

 しばらくすると救急車にパトカー、警察もやってきて、俺ら一部の生徒は早めに帰宅させられた。


 言いようのない不安が胸に拡がったのを覚えている。




 週明けに学校に行ったら、教室はがらんとしていた。みんな来るのが遅いだけだと思った。


でもチャイムが鳴って先生が来ても、40ある席は半分しか埋まっていなかった。




「皆、先生の話をよく聞いて欲しい。今ここにいない子達は行方不明になった」


 淡々と話す先生の言葉を理解出来るクラスメイトはいなかった。


 同じ頃、隣のクラスからは泣き声や怒りの声が聞こえてきて、階全体がパニック状態になった。



 とにかく、この学校の6年生の児童194人のうち96人が金曜日のマラソン大会中に忽然と姿を消した、という事実だけがまだ子供の俺らに突きつけられた。



 ギリギリ神社の前後にいて消えなかった子供達は、「神社に入っていったら、一瞬で透明になったみたいに、みんな消えちゃった」と何度も何度も話していた。




 6年間一緒だったのに半数になった同級生達との卒業式は、たぶん人生で1番泣けた。




 今も見つかっていない親友たちやクラスメイト達は、どこに行ったんだろう。




 俺は境内を走ったばっかりに、あの時感じた風の様な何かに食べられてしまったんだと思っている。



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