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ひとりぼっちの百物語  作者: 夏野篠虫
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田舎で惑う

 私がまだ中学生の頃の体験談。


 夏休みに両親と母方の実家に帰った。当時住んでいた場所からそこまでは高速を使っても3時間はかかる道のりで、中学生といえど子供の私にとっては辛いつまらない時間だった。

 出発が夕方6時頃だったので、実家まで残り1時間になると外は真っ暗になっていた。田舎だから余計に明かりが少なくて、後部座席で窓を開ければぬるい夜風と星が街中よりも少しだけ綺麗に見えたのを覚えている。


 その直後、運転する父親が急ブレーキを踏んだ。

 私は危うく首を窓に挟みそうになった。

 文句を言おうと前を向くと、ヘッドライトに照らされた道路をのっそり渡る老爺と幼子がいた。


 両親も私も、日没してから田んぼと畑の道を歩く人なんて、と思ったが轢くわけにはいかないので渡り切るのを待つしか無かった。

 わずか15m程の道幅を数十秒かけて渡った2人はこちらに礼のひとつもせずに道もない暗闇に消えていった。

 変な感じもしたし不満もあったが、事故にならずに済んだので私たちは先を急ぐことにした。



――数分後、また父親が急ブレーキを踏んだ。

 今度は私も上手く衝撃に耐えられた。正面にはさっきと同じ老爺と幼子が仲良さげに手を繋いで藪から飛び出して横切ってきた。


 待つには長いこの時間。

 ハンドルを指でタンタン叩く父とバックミラー越しに目があってすぐに逸らした。


 2人はさっきよりも時間をかけて横断した。そして肩より高い草むらの中へ消えていった。



 緊張感の消えた車内であの老人と幼子の違和感について私は切り出した。


「もう真っ暗なのに2人でどこに行くんだろうね?」

「地元の人なんじゃないか? 仕方ないのはわかるけどせめてこっちに一礼くらいはしてほしいよ」

「まあまあ。でも確かに不思議よねぇ、御年寄にしても背が小さかったし、服も不揃いだったし……」


 母は私と同様に奇妙さに気づいていたみたいだ。後ろの私からはよく見えなかった姿を母はよく観察していた。




 その後もナビに従って走行してたのに同じ道を何度も通るように案内されたりした挙句、道に迷って到着したのは午後10時を大きく過ぎていた。



 久しぶりに会ったおじいちゃんとおばあちゃんに、来る時にあった話を一通りした。


 するとおじいちゃんは目を丸くして、にこやかにこう言った。


「ほぉ〜そいつは狸だ、狸。親子の狸に化かされたんだろ。最近じゃめっきり見なくなったが……わしらがちっさい頃はよぉけ出たもんよ」

 隣でおばあちゃんもうんうんと頷いていた。


 あの老人と幼子は狸が変化したものだったのか?



 じゃあナビがおかしくなったのは?とおじいちゃんに聞いたら、


「――そりゃぁ狸も時代に合わせて進化するんだろ? アッハッハッハ」


 おじいちゃんはたぶん思いつきで喋っているんだと思う。



 けど、あながち嘘でも無いんじゃないかとも思った。



 同時に人を化かす狸が今もひっそり生きているんだとしたら、何だか嬉しく感じる。




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