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ひとりぼっちの百物語  作者: 夏野篠虫
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我が家ルール

 2月3日節分の日。

 我が家には独自のルールと作法がある。


 普通は鬼、つまり魔を祓うために豆を撒き代わりに福を呼び込む。そしてその年の方角を向きながら無言で恵方巻きを食べ、歳の数だけ豆を食べる。

 これが一般的な過ごし方だ。



 我が家では豆を使わない。恵方巻きも食べない。父親が鬼の役をやって子供が追い払うことも無い。

手順はこうだ。


 用意するのは柊の枝葉、清酒、蛇の抜け殻、ふぐの卵巣。

 まず神棚に11日間飾った柊の枝から葉っぱをちぎる。そして蛇の抜け殻と一緒に焚火で燃やす。燃やしたあとの灰をかき集めて、清酒に混ぜる。それを盃に注いで神棚の下に正座して家族で回し飲む。ちなみに子供は口をつけるだけ。この時必ず喋ってはいけない。


 次にふぐの卵巣は皿に、清酒は小さな盃に入れて神棚の前に供える。父が「ムシャグジ様、ムシャグジ様、本年も我が○○家に安寧と繁栄を……」と言うと神棚の扉がひとりでに開き、中から三角の大きな頭に白く細長い紐のような胴体の不格好な蛇が出てくる。それはふぐの卵巣を丸呑みすると流し込むように清酒を飲み干し、再び神棚の中に帰っていく。扉が閉まれば終了だ。


 この日は最初の酒以外の何も朝から食べてはいけなくて、幼い頃の私や弟はぐずったものだ。




 大きくなるまで、正確には高校に入るまでこれらの行事がどこの家でも当たり前にやっていることだとばかり思っていた。節分の日はこういう日なんだ、と。


 我が家だけ違うと知った時、かなり驚いたが知るのが大きくなってからでよかったとも思う。小さい頃だったら反発していただろう。




 節分が違うと知ってから気づいたこともある。



 我が家が世間と違う点は他にもあるのだ。




 たとえば、両親が共にずっと家にいて仕事をしていないのに、一度も金銭的不自由に陥っていないこと。



 たとえば、毎週第1月曜日は何をするにも必ず左手しか使ってはいけないこと。



 たとえば、"工藤"、"佐々木"、"村本"という名字の人とは会話をしてはいけないこと。





 全ての我が家ルールには『ムシャグジ様』が関係しているんだと私は察しているが、両親は何も言わない。




 私も、怖くて今更聞けない。






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