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ひとりぼっちの百物語  作者: 夏野篠虫
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山を下りる光

 今は寝たきりの祖父から聞いた話。



 それは祖父がまだ幼く、戦後すぐで生活も苦しかった頃だという。


 当時住んでいたのは大きな村、しかし電気も一部の家にしか通っておらず、夜になれば月と数多の星が綺麗に見えるくらい真っ暗だった。

 建ち並ぶ家はどれも昔ながらの農家で、塀も柵もないほどだった。

 ある夏の晩、祖父は自宅の縁側でくつろぎながら遠くの山を眺めていた。その向こう側で爛々と電気が光る都会への憧れを抱きながら。

 祖父の好きな風景だったが、見えるのはいつも黒い山肌ばかり。


 だけどその日は違った。


 山の中腹辺りに、ぽっと丸い明かりが灯った。月より儚く、星よりも暖かい光だった。

 それはじっとその場にあったが、やがて山を下りだした。しかも一つだけと思った光の球は2つ、3つ、4つと分裂するように現れて後に続いた。


 祖父は幻想的な風景に夢中になった。


 気付けば球の数は30を越えた。

  

 球の行列は山を下りると次第に祖父の家へ続く一本道を進んでいった。


 近づいてくるにつれ、闇に包まれていた輪郭がはっきりしてきた。

 今まで見えていたのは数珠のように連なる光の列だけだったが、誰かがその球を持っているのがわかった。


 今日はお祭りでもあったっけ?と祖父は思ったらしい。村の人が提灯行列でもつくっているのかと。


 しかしそんな話があれば我が家でも話題になるはずだ。


 じゃあ、一体誰が灯りを?


 とても不思議に思った。



 どんどん、どんどん、近づいてくる。



 光は提灯ではなく、揺らめき煌めく炎の球だった。

 

 そして一緒にやってくる何者達の行列は、普通の人より背が低いと気付いた。

  

 

 行列は田んぼを横切り、畑を抜けて我が家の前の道を通り過ぎていく。



 幼い祖父が目にしたのは等間隔で炎を手にぶら下げた、狐の行列だった。



 30匹ほどのその列は、息を飲んで見守る祖父の家の前を悠然と通って、裏山の方へ去って行ったという。






 祖父によれば、最初光が現れた山には稲荷神社が建っていて、行列の正体はそこからやって来た狐神だったと。





 なんで狐神達は行列をつくっていたのと聞いたことがある。




 祖父は「それはわからん。ただ、今はもうその稲荷もなくなってしもうた。わしはそれだけが残念じゃよ」としきりに言っていた。




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