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ひとりぼっちの百物語  作者: 夏野篠虫
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一人娘

「ん……ぅん……?」


 私の意識が浮上してきて目が覚めてきた。


 まどろみの中からだんだんと鮮明に現実を認識できるようになってくると、夢じゃないことがわかる。


 瞼を開けるまでもなく、まだ窓の外に光がないのが感じられる。


 足元が寒い。

 起きた原因はこれか、手探りで布団を引っ張り、露わになった素肌を覆う。


 隣からはすやすや眠っているであろう夫の寝息が聞こえてくる。



 じんわり温かみが戻ってくる最中に、仰向けの顔の上に何かあるような気がした。


 ベッドの上には何も物は置いてないはずだし、天井から落ちてくるような物もないけど……。



 再び意識が沈む前に、鬱陶しい気配の正体を確かめよう。



 暗さに慣れていない目を開き、やや時間をかけて定まらない焦点を合わせると――



 12歳になる一人娘が枕元に立って、鼻先2cm近さで私の寝顔を覗き込んでいた。



「ひゃっ!? ちょ、ど、どうしたの? こんな時間に、具合でも悪いの……?」


 まさか本当に誰かがそこにいると思っていなくて、年甲斐もなく高い声を出してしまった。咄嗟に布団を口元まで被って、娘へここに立っている理由を尋ねた。


「………」


 何も言わない。それどころか眉ひとつ動かさずにじっと私の表情を伺っている。


 その姿はどう見ても愛しの娘に違いないが、そうと信じられない程不気味極まりなかった。



 徐々に暗さに目が慣れてきて、もう少しはっきり娘の顔がわかった。



 ぐるんっと黒目が上瞼に入り込み、完全に白目をむいていた。



 私は思わず目を閉じてしまった。


「なな、何ともないなら、はやく寝なさい!」


 そう、娘に言い放ってしまった。




 相変わらず返事はない。



 恐る恐る目を開くと、白目の娘はニッコリ口角を上げて、物言わぬまま自分の部屋へと帰っていった。




 私はその夜はもう眠れなかった。




 翌朝、私が寝不足気味で朝食の準備をしていると


「おはよ〜……」


同じく眠たげな娘がやってきた。


 ドキリ、心臓の脈が不規則になる私。



「おはよう――昨日……よく眠れた?」

「んー……そのはずなんだけど、なんか眠くて眠くて……ふぁあ〜」

 大きく欠伸をする様子を見て、少し安心した。



 本当は

"昨日の夜中、なんでお母さんの顔見てたの?"

と聞くつもりだったが、悩んだ結果聞けなかった。



 何故だか聞いてしまったら、もう今までの様に暮らせないんじゃないかと不安に思ったからだ。






 5年経ち、娘も高校生になったが、今も年に1回は必ず夜中に私の顔を覗きに来る。




 その理由はわからない。






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