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ひとりぼっちの百物語  作者: 夏野篠虫
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ゴミ屋敷

 その日の仕事は先週の打ち合わせの段階で、億劫な案件でした。

 うちの会社は解体業者で、主に民家の解体を行ってるんです。


 それで解体しなきゃいけない家っていうのが色々あるんですけど、その時はいわゆる一軒家のゴミ屋敷で……。

 しかも家主がいなくなって親類もいなくて誰も撤去せずに解体とゴミ処理もセットでやらなきゃいけなかったんです。


 うちは中小だから人手不足で、自分も部下も朝からもう大変で大変で。


 まずは庭に溢れ出したゴミを回収しました。ええ、そりゃすごい量ですよ、庭だけで2トントラック4台分でした。


 1日目はそれで終わりました。




 それで、全部終わりだったら良かったんですけどね……。



 次の日は早朝から家屋内のゴミ処理でした。

 ところが、その中身が、ちょっと……。



 あの、玄関から順に袋とダンボール箱に入ったものをそのままトラックに運び出して、特に中身とかは確認しないんです。とにかく量が量なので、少しでも早く作業を終わらせて、建物を解体したかったんです。



 30分くらい働いた頃だったと思います。

 1人が声を張り上げて皆を呼びました。


 そいつは不透明な袋を1つ開けて騒いでいたんです。



 私達も袋の中を覗き込みました。




……中身は位牌と卒塔婆と骨壷だったんです。


 よくよく確認すると、家の中の上から下まで玄関から寝室まで、ぎっしり詰まったゴミ袋の中もダンボー ルの中もその辺に転がってるのも、ぜんぶ、位牌と卒塔婆と骨壷っていう、狂った一軒家だったんです。



 それに気づいて、みんな大の大人なのにギャーギャー騒ぎました。


 作業どころじゃなくなって、さすがに警察を呼ぼうかと思ったんです。



 でも、私は気づきました。



 どの位牌にも卒塔婆にも、自分は初めて見ましたが骨壷にも故人の名前が書かれていたんですが、その名前が、全部同じだったんです。


 普通、その3つは1人に1つ、それか仏壇や墓に対して1つずつじゃないですか!


 でも家中にある何千を超える数のそれらにぜんぶ同じ人の名前が彫られているんですよ!?




……これは、手に負えないって思いました。



 私もプロなので本当はこんなことしてはいけないんですが、請け負った仕事を急遽キャンセルさせてもらいました。


 相手方は役所だったんですけど、そんなの関係なくて、担当者にはかなり怒られましたが正直に理由を説明して現場も見てもらったら、青白い顔で小さく頷いてくれました。






――ああその家、ですか?



 今はもう無いですよ。



 あの後、別の業者が相当な高額料金で引き受けて建物ごと潰して処分したと業者仲間から聞きました。

 よくやりますよね。私だったら何億積まれてもやりたくないですよ。





――え?



 だって、その処分を引き受けた業者は社長が自殺して、すぐに経営が成り立たず倒産しましたから。





 あるんですよ、この業界には。関わっちゃいけない家っていうのがね。






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