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ひとりぼっちの百物語  作者: 夏野篠虫
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俺らが埋めた物

「ひっさしぶりだな田中!」

「お前、木島か? 全然変わってねえなっ」


 旧友との20年ぶりの再会が懐かしいノリを思い起こさせる。


 6年2組で同窓会をするのは初めてだ。みんなもう大人になってほとんどは地元を離れて仕事をしている。


 当時、学級委員だった佐藤が中心になって半年前から計画していたおかげで半分の20人は集まれた。顔ぶれをみると時が経っても人間の性格や顔つきは変化しないんだと実感する。


 こうして今日、また会えたことに感謝しよう。

 昼食はあの頃には全く縁のなかったフレンチのコース料理なんか食べながら、担任の山下先生のことや辛かったマラソン大会の記憶、教壇前で告白して思いっきりフラれた木島の話で爆笑した。


 店にいたのは2時間程度だったが、20年の時を埋めるには全然足りない。それに今日のメインイベントはこの後だ。


 駅から電車に乗って1時間。バスに乗り換えて20分。最寄りのバス停を降りたら、目の前にはあの頃と何も変わらないように建っている我らの学び舎がある。


 「ここに来るのも、卒業以来だな~」誰かがそう言った。思い出の中には小学校の空気が閉じ込められているのに、本物を見たらそれは現実と違った。しばし全員その場で固まってしまった。


 俺らは改めて時の長さを感じた。



 いつまでも大人数で立ち止まっていては迷惑だと佐藤が言った。わかってるよと、目的地に向かった。


 とは言っても目的は小学校の中にある。ひとまず校舎内に入り、受付で来校証をもらう。休日出勤の先生方と挨拶をして中を歩くことに。


 ちょっとホコリっぽい廊下の匂い、真冬でもお湯の出ない手洗い場、さすがに天井の電灯はLEDに取り替えられていた。教室を四角いドア窓から覗くとエアコンも付いていた。


 児童がいない校舎は日中でも漂う寂しさが多い。20人の足音と雑談が静寂を蹴散らしていく。



 一周したところでふたたび外に出た。



 本題はここからだ、運動場の現場に向かうチームとシャベルを借りてくるチームに分かれた。



「ここら辺だっけ?」

「あっちの楠の木の下じゃないか?」

「いやもっと小さい木だっただろう。」

「ばか、20年も経ってんだぞ、木もでかくなるだろ」



 薄れた記憶を頼りにその場所を探す。シャベルチームも戻ってきて、全員がここだと思う木の根元に集まった。


 力のある男子たちが乾いてがっちり固まった地面にシャベルの切っ先を当てる。何度も全体重を足からシャベルにかけて少しずつ土を掘り出す。雑草に小石も多く、慣れない作業に手間取った。交代、交代で女子も力いっぱい頑張った。




――掘り始めて、1時間が経とうとしていた頃。全員が「場所を間違えたんじゃ?」と不安を募らせていた時、ようやくカチンと金属にぶつかる音がした。



「あったぞ!」

「おっ! やっとか!」

「あ~アタシ疲れた……」



 一同から長いため息が漏れた。


 手で慎重に土をどかした。掠れていて読みにくいが『6-2 思い出カプセル』と辛うじて読めた。間違いない、俺たちが20年前に埋めたタイムカプセルである。


 卒業式の日、クラス全員と担任が思い思いの品を持ち寄って、タイムカプセル専用の一斗缶形の丈夫な容器に手紙やら玩具やらを詰め込んだ。けれど各々が何を入れたのかは忘れてしまった。だからこそ余計に中身が気になる。



 待望の発見により、一斉に歓声が上がる。夕日を浴びた泥まみれの大人達の影が一瞬、はしゃぐ小学生に見えた。



「「「せーっの!」」」



 重たいカプセルを3人がかりで持ち上げる。昔の記憶と今の筋力を比較してもここまで重かっただろうか? それにカプセルそのもののサイズも、比率が小学生と現在で変わってないような……?


 俺以外のやつらはとくに違和感を感じていないようだった。まあ、自身が入れた中身すら詳しく覚えていないのだ、カプセルの見た目なんか忘却してて当然である。

 

 地面に置くとその全貌がわかる。縦長の直方体、総白銀の外観は既視感がある。蓋に書かれたこの文字も当時のままだし、感じた違和感は俺の早とちりなんだろう。



「おい、早く開けようぜ!」



 開封を急かされた。確かに時間も遅くなってきた。そろそろ開けて思い出に浸りたくもある。


「よし、じゃあ開けるぞ-」



 3、2、1、のかけ声で堅く閉まった蓋を回す。プシューッと空気が入り込む音がした。中は真空状態になっていたようだ。この場が高揚しているのがわかる。


 

 中はどうなっているだろう。全員の視線が一カ所に集まる。




 蓋がぜんぶ外れて20年ぶりの光が内部に当たる。


 



 前のめりにのぞき込んだ中には、未来の自分に宛てた手紙や100点のテストにキーホルダー。





「ああ?」





――なんかではなく、濃い赤ワイン色の干からびた赤子のミイラが押し込まれていた。


 腹部からはへその緒が細く伸びていた。





 

 同窓会は2度と開かれなかった。



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