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ひとりぼっちの百物語  作者: 夏野篠虫
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暑さは人を、

 うちには雪女がいる。


 それは去年の夏からだ。


 茹だるような暑さが屋内にも広がって、エアコンを一日中付けていないと蒸し上がってしまうくらいの気温だった。


 しかし、その代償として電気代がかさんでしまう。


 


 そんな折、何故だかある日急に我が家にやってきたのが彼女。


 以来、暑い日には持ち前の冷気でひんやり快適。


冬場は出番が無いが、今年の夏は去年よりも暑いため連日出ずっぱり。


さらに主食は水と氷なので、低コストで済むのが1番の利点。


「いやー、7月は電気代が安く抑えられて助かった。これも雪女が来てくれたお陰だな」


 男は声をかける。


「ほんとそうよ。浮いたお金は何に使おうかしら」


「たまには2人で旅行にでも行くか」


「いいわね、行きましょう。あ、でも近頃、身体から冷気があまり出なくなって困ってるのよ」


「なに?どうりで少し部屋の空気がぬるい訳だ。……ほら、氷をあげよう」


 男が手を伸ばして口元に氷を持っていくと、彼女はガリガリ噛み砕いた。


しばらくして全身から発する冷気の量が増す。


「よし、これで大丈夫だろう」


「ええ、ありがとうあなた。私は怖くて近づけないから、助かるわ」


「大丈夫だよ。最初こそ暴れたが今ではこんなに大人しいんだから」


「ふふ、それもそうね。」


 笑い合う夫婦。


 外の熱気と無縁の室内の涼しさは、冷気が上から下に落ちて空気を循環させるから。


 全ては天井に磔に監禁された雪女のおかげなのだ。

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