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第七話・再会

 私が大学生になる頃、弟のダイが遠くの高校に通うことになりました。寮や一人暮らしではなく誰かの家のお世話になるそうです。

 なぜそんな所に行く気になったのか聞いてもダイは答えてくれませんでした。

 後々のこともあり先に断っておきますが、私は特にブラコンというわけではありません。ですが、ダイのことはいつも気にかけていました。


 それから数年間、私もまた家を離れ、ごく普通の生活を送りました。

 しかし、その普通の生活の中ある日突然、私はトラウマを甦らせることになります。


 友人とハイキングに行ったときのことです。

 日帰りのつもりだったのですが道を間違えてしまい野宿することになってしまいました。

 幸いなことにある程度の装備はあったこと、食料も少々はあったこと、気候もよく危険な動物の()()()山であったことなど、精神的な部分を除いて比較的問題はありませんでした。道順自体も把握はできたいたので、不安だったね、災難だったね、ですむことでした。

 そのはずでした。

 ですが、問題が起こったのです。

 もう予想できるかと思います。

 その山は危険な動物は少ないはずでした。ですが、危険な住人はいたのです。それも、とびっきり危険な。


 水が必要でした。

 長く歩いたこともあり手持ちの水が空だったのです。

 ですが幸いにも小さな川があり、水も綺麗でした。念のため煮沸すれば十分です。

 夕暮れ時、私も含めて三人で水を汲んでいました。流量の関係から二ヶ所に別れています。

 日が傾きはじめており、もうすぐ赤い空になる頃です。間もなく木々の影が山を黒く染め始めるでしょう。

「ねー、なんかすごいよ!」

 川の流れのより奥にいた一人が興奮気味に叫びました。

「なにー?」

 まだ水が十分でないことと、なにがどうすごいのかわからないのとで、適当に返事をしました。

「なんかねー、なんか、いる!」

 魚か、カエルか、せいぜいトカゲか。そんなとこだろうと思ったのですが、いっしょにいた友人が気になったらしくそちらへ向かいました。

 私はそちらに目をやりながらも水を汲み続けました。

 彼女たちの視線はやや上にあります。

 川は斜面から流れて来ており、さらにその先には治山された部分が見えています。その近くにどうやら水溜まりがあるようです。

 彼女らは、どうやらその部分を必死に覗こうとしているのです。

「……いる……動く……」

「ぷるぷる……」

 声が漏れ聞こえます。

 そして、私の目が動きをとらえました。

 水溜まりのあたりにかすかな動き。

 私がそれを逃すはずはありません。

 あの動きです。

 周囲を警戒するような、ミミズのような触手のようなその動きが、あの日の思い出を瞬時に駆けさせました。

 忘れることなど本当はできていなかったのです。


「ダメー!!」


 私が叫ぶと同時に、『水』が()()()のような粘ついた塊となって飛び出し、瞬時に色がつきました。かつて見たのと同じ鮮やかでおぞましいピンク色です。

 そして、もう一つ、斜面から影が飛び出しました。

 私、友人、『水』、影、一瞬でいくつもの存在が交錯したのです。

 そして、それは、食うものと食われるもの、それを狩るものの生涯続く関係の幕開けでした。

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