第六話・予感
「え? え? 体の中の水が水間になったらどうなるの?」
「もちろん最終的には死ぬ。人間としては」
「人間としては? ゾンビみたいな動く死体になるの?」
ゾッとしました。
体の中の水、血液だけではないあらゆる体液、体の中のすべてと言ってもいいそれらが水間になる。
体すべてに潜り込む寄生虫を連想して、私は今日見た『アレ』に対してとてつもない嫌悪を感じました。
「そう、そうだ。だが厳密には死体じゃない。体組織は死なないんだ、水間が維持するからな。だが、それらがヒトとして機能しなくなる。ただ人間の形に維持された細胞塊になる」
「……それで、どうなるの?」
「どうもしない。そのままだ」
「なにそれ」
「まぁ、いつかもう少し話してやる。おまえだけじゃない、ダイにもな」
「ダイ君にも?」
「ああ。それとな、あの監視員の人親戚だからな、覚えときなさい」
ダイは私の弟です。
なんとなくですが、私はこの時に水間と私達の関係について一定の覚悟を持ったのかもしれません。
いつか、なにか、ある。
それは、決して逃れられないなにか。
・ ・ ・
それから私は必死に水間のことを忘れようと努力しました。水そのものにトラウマを持ってしまった私は、水を飲むことも躊躇するようになってしまったからです。
恐怖からではなく不安が根づいたトラウマは厄介なものです。
ですが、家族の協力もあって、長い時間がかかりましたが私はトラウマを払拭しました。
いや、正確には、時間とともに水間のことを忘れていったのです。
家族は水間のことを話さない、あの場所に行くこともない、ダイもまったく知らない素振りでした。
水間の話を出しても父は「そんなこともあったな」「そんな話だったかな?」といった反応です。それどころかいつの間にか「親戚の人に叱られたのは本当」と、私が叱られたのを気にして記憶違いを起こしている、と言わんばかりの態度でした。
あんなことはなかったのかもしれない。
きっと私がなにか勘違いをしていたのだ。
映画や漫画、妄想が混ざったのかもしれない。
そもそも普通に考えてあり得ない。
そう納得して忘れていったのです。少なくとも外見上は。
私だけではない、家族みんなが……




