第五話・問答
「水が、受精する……って? どういう意味?」
私は聞こえた言葉の意味がわからなくて、そっくりそのまま質問を返しました。
「そのままの意味だ」
父が少しだけ説明に困って、口を開くまでに時間を要しました。
「つまりな、雲の中に稀にオスの水とメスの水ができるんだ。さらに稀に雨になって降り注ぐ、そのさらに稀にオスの水とメスの水が合わさり受精する。そして―――」
父の説明でようやくわかりました。
「アレがうまれる?」
父は、『すいかん』は水と水が交わってできると言っていたのです。生物のように。
「そう、水間になる。だが、だいたいはそれも長生きしない。水は水だからな。蒸発したり流れてバラバラになったり染み込んだり、とにかく成長するに至らない」
問答のような私達の会話が始まりました。
「水間って生き物なの?」
「わからん、水間はああいうモノだ。人からうまれる。動物からうまれてもおかしくはないが、今まで動物の水間がいたという話は聞いたことがない」
「昔からいるの?」
「かなり昔からな。古くは下手をすると平安時代あたりまで記録を遡れるらしい。が、そこまでいくとその記録が本当に水間のことを指してるのかまでは証明できん」
「全国にいるの?」
「いるはずだ。それどころか確実に世界中にいる。だが、ここいら以上の記録は見たことがない」
「このあたりで有名な妖怪なの?」
「妖怪かは知らんが、そこの西光寺に伝承がある」
「危険なんでしょ? 退治できないの?」
「できる。ヤツらのいる水場を干上がらせたり地面を焼いたりしてな。それどころか、なんらかの方法で直接倒せもするらしい」
「どうやって?」
「詳しくはわからん。だが、さっき言った西光寺の伝承だ。その伝承というのは、市見某の水間退治の話なんだ」
「市見なにがし?」
「市見家という武芸の家系の誰かが水間退治をしたらしい」
「ふうん……でもさ、なんで水間って人を襲うの? 食べるの?」
「食べない。おまえ、人間がほとんど水でできてるって知ってるか?」
「知ってる。どれぐらいかは忘れたけど」
「6割以上だ。子供だと7割」
「それで?」
「……水間はな、その人間を構成する水をすべて自分と置き換えるんだ」
「お、置き換える?」
「つまり、水間に襲われた者は体液を全て水間にされてしまう」




