第四話・おとしご
すいかん、父は『水』をそう呼びました。
「水人間のことをそう呼ぶ。水の間で水間だ。ダビジョで発生する」
ピンク色の『水』が私を見つめています。どこか物欲しそうに。
「こいつは、人間でいうとだいたい中学生ぐらいだ」
今にもこちらにやって来そうな水間との間に入りながら父の説明が続きます。
「力も小柄な中学生程度、だから大人は大丈夫だ。だが、子供は簡単に水の中に引きずり込まれるだろう。だからあの人が監視しているんだ」
あの人とは父と言い合っていた初老の男性のことです。彼は警備員でも管理人でもなく、水間の監視員だったのです。
「ほら、あっち行け!」
監視員が水間に手を振りながら強い言葉を浴びせます。
水間は私の方を意識しながらも、監視員に威嚇されると、ゆっくりとですが水の中に溶けていきました。
「昔よりここの水が減ってきている。川とか下水の発達で流入量が減ってるからだな。だから遠くないうちにここは干上がって水間も消えるだろう」
監視員の人がそう言います。
「いいか? 可愛そうだなんて思わんことだぞ。アレは有害で危険だからな」
まるで自分に言い聞かせるように告げます。
「もちろんのこと、もう近寄っちゃダメだ」
言うまでもなく、二度とそのような真似はしないでしょう。
少しして父が帰るというので、私はなにか後ろ髪ひかれるような、早くこの場所を離れたいような複雑な感情を持ちました。
そして、迎えに来てくれた会社の人に家まで送ってもらうと、家で父に思い付く限りの質問をしました。
そして、とんでもない話を耳にすることになりました。
「水はごく稀にだが妊娠する。いや、受精の方が正しいか」




