第二十七話・いつか
誰もいなくなりました。あの怪物たちすら過去に去って、私の世界にはいつしかダイしかいなくなっていました。でも、私はそれで満足でした。
ダイのその息を、髪を、腕を、胸を、背を、腹を、足を、そして視線を感じるたびに、私は充たされていきました。
ですが、その裏には恐怖がありました。そうした幻想がいつかひび割れ、欠けてしまい、私たちの宿命が私たちを見つけたとき、きっと鏡美が現れます。そのとき、おそらく鏡美は私たちの敵になっているに違いありません。
逃げるように、隠れるように過ごしていた日々も、きっと鏡美にしてみれば狩りのための準備ようなもので、はじめから全部筒抜けだったでしょう。でも、私は私とダイだけの時間を貪るように生きることを選び、ダイもそれに応えてくれました。
私は幸せでした。
そして、しばらくして、その幸せ、ダイとだけの世界が終わりました。
私の前に『下賎なる者』が再び現れ、私に終幕を告げたのです。
私はダイを探しました。毎日、毎日、あてもなく、いくつもの街を隅々まで。
でも、ダイはどこにもいませんでした。
私の姿と声を持つ『下賎なる者』がすべてを話しました。
ダイは私が知るずっと前、小さな頃から『下賎なる者』を知っていたのです。そして、その意思を受けて生きてきたのです。
そして、ダイは、『下賎なる者』の命令により、鏡美のもとへ向かい命を落とした、と。
「やつは我々に弓をひいた。そればかりか、えなもどきを作り、その力を我が物にしようとしておる。生かしておくわけにはいかぬ」
「璃右大ですら敵わぬとなれば仕方なし、他の水間憑きに狩らせるまで」
「やつは行程を整え、えなもどきを大量にうみだしこの世にばら蒔かんとしておる。人が人のまま使えるようにしたえなの力、それは本来選ばれた者のみに許された力の欠片だ。断じて許すわけにはいかぬ」
「おぬしにある場所を教える。そこでおぬしは時が来るのを待て。そして、時が満ちたとき、星を産むがよい。そうしたならば、人々は我々と同じ気をとりもどし、臣となる」
そのすべての言葉を聞き流して、私は一つの結末のために動くことを決意していました。




