表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/30

第二十話・修羅の根

 画面に集中するうち、輪油だったものの挙動が変化したことに気づきました。

 なにか壁越し、いえ、建物のあらゆる面を超越する感覚で、ダイの存在に気づいたのだと思いました。

 それを証明するかのように、ダイも少しずつ置換体に近づいています。

 ダイに連絡をとる手段がない。その事実からもわかる通り確実にこれは実験なのです。

 私やダイ、置換体はきっと、彼らの予想通りの感覚を発揮して、それに基づいた行動をとり、闘うでしょう。

 この時点で明らかになりました。私たち『水間憑き』は必ずしも狩る側ではないのです。私たちは狩られる側になることもある。いえ、もしかしたらまったく違う関係なのかもしれません。


 ダイが置換体のいるフロア、かなり近くのバックヤードにいます。

 そこまでくると、もうお互いに見えているかのように視線が壁越しに交差しています。

 ダイはそのまま出ていけば人に見られ、場合によっては巻き込むことになるのをわかっていました。いえ、この場にいる全員がそれを知っていました。

 置換体が人のいる場所にいることも、人払いを済ませた場所をつくったのも、私を確保してダイを向かわせたのも、全て想定内だったのです。

 ダイが少し足をひき、ふとした瞬間に踵を返して猛然と駆け出しました。それにつられて置換体が動きを見せました。

 あくまで穏やかそうに、自然に、置換体はダイのいるバックヤードへと向かっていきます。

「絶対に見失わないで余さずモニターして!」

 鏡美が叫びます。

「なにもかも残らず記録しておいてよ……『支配体』対『置換体』、ここで逃したら次は100年後かもしれないんだから」

 支配体、それが水間憑きの正式な呼び方。

 ダイのいる裏手へ回り扉をしめた水間は、辺りを伺うため少しの間棒立ちとなり、誰もいないであろうことを確認するとその本性を現しました。

 表情がまったくなくなったかと思うとだらりと猫背になり、首を軋ませているのがわかりました。骨格や負荷など置換体には関係ありません、ただ動くための挙動をとるのみです。

 その不気味な体勢から繰り出された速度は驚異的でした。

 室内で短距離選手を上回る速度で発射されるように駆け出したのです。

 ダイは待ち構えます。相手の気配により正確に反応しているのはダイの方です。

「『置換体』の身体能力は人間のそれの比じゃない。筋肉は千切れても動かせるし、骨が折れたって構いやしない。肉体なんて水間にとってただの袋だもの。まして変異まで起こしてる輪油の体、ただの水間憑きのダイくんに勝てるかしら?」

 モニターの中でダイの戦いが白熱しています。

 カウンター気味に迎え撃ったダイは先手をうち、狭い通路であることを利用した巧みな動きを見せます。

 壁を背にすることですばやい相手の行動をむしろ制限し、壁の反動を利用して逆に相手を壁に挟み込む。

 すばやく、強く、シャープ。ダイの真価です。

「さっき人の中での置換体の行動の観察、あなたにとっては不本意のように言ったけど違う。あなたにとってもこれは()()。私が一瞬で置換体を見分けるのを観察していた。あなた達にしてみれば、私達は理性ある水間でしかない」

「……そうだと肯定したら?」

「正解だって言ってあげる。だからこそ、ダイは負けない」

「理性があるということは、技が、術が、使えるから?」

「ああ、知っていたの」

「ええ。かつて真奉(しんぶ)仙道から派生した市見の術、それは水間の使役法から退治法に繋がった。でも、その本質は退魔術じゃない。その本質は『武』。市見が水間退治のノウハウに肉弾戦を選んだ理由」

「現代にまで伝わる市見術の骨子、その正式名称を市見柔術」

「市味柔術、たしか、またの名を……」

「……身命(しんみよう)活殺(かつさつ)(りゆう)市見(いちみ)小具足(こぐそく)(じゆつ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ