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第十九話・変わる者

 置換体。水間の完成形。

 不完全に侵食を受けた友人が変異した姿。

 この施設のどこかに隠れ潜む。

 ですが……

「見て、ダイくんよ」

 私は動くことを止められていました。そして、鏡美達の用意したワゴンの中でこの施設内をモニターしています。

 画面の中にダイがいます。どことはわからない場所を歩いていて、時折カメラを気にしています。

 ダイのそのこわばった、焦ったような表情は、ここに置換体がいるからではありません。

「銃はダメなの?」

「数があればあるいは」

「どうして使わないの?」

「ここ、あるホテルなの。客の活動範囲ではない部分を今だけ無理矢理立ち入り禁止にしてあるだけ」

「サプレッサーとかいうの使えば?」

「音の問題じゃなくて、薄い壁を貫通した弾で万が一のことがあるって言ってるの」

「客も退避させればよかったのに」

「急なことだったの。だからあんまり時間はないわ」

「へえ……」

「なに疑ってるのか知らないけど、さっき言った、ヤツが脱出時に殺した人間二人、ライフル持たせてあったわ」

 私は鏡美の言うことを半分ほどだけ聞いて、モニターの中のダイを見つめていました。

 ですが、ふと視界の片隅に写った姿に私の意識は強く惹き付けられました。

 ダイの写っているモニターとは別の、どうやら客のいるエリアのカメラ。

 そこに映った一人の男。

 朗らかそうな、気さくそうな、そんな印象が画面から伝わってきます。

 怪しいどころか、どこかよい雰囲気の青年です。

「……」

「どうしたの?」

「これ……この人……」

「この男が?」

「……そういうこと!?」

 私は思わず隣にいた鏡美につかみかかりました。

「んぐうっ!」

 手加減を間違えたのか鏡美の腕に手がくいこみました。

 外にいた警備らしきCIROの人間がドアを開け銃口を向けようとします。

 それを鏡美が止める合図を出し、なんとか私の手を外しました。

「な、なにが?」

「この男が輪油なんでしょ!」

「な……!」

「輪油は水間にだけじゃなく、もっと別のものに変化したのね!」

「待って。なぜ? なぜわかったの?」

「わからない……でもそう、これは輪油。人間の中で置換体がどう振る舞うか見たかったのね。それでわざと変異した輪油をここに潜ませた!」

「……」

「今度はなに?この状況下で私達がどう闘うか見たいってこと? こんな危険な真似までするなんて」

「そう、リスクのあること。だから、こんなことはやく終わらせなくちゃダメ」

「開き直らないで!」

「左々、たしかに今回の任務は人間の群れの中でのヤツらの動きを調査することだった」

「だったら!」

「いいえ、だからよ。私達はそれを強制的に切り上げたいの。危険だから。そしてそのためにあなた達を呼んだ。あなた達に退治されたなら文句を言う人間も黙るわ」

「ならどうして二人でヤラせないの? 今からでも」

「水間憑きは絶対にその運命から逃れられない。あなた達は常に囮でもあるのよ」

「そう? それが?」

「あの変異置換体がオス化した理由は単純に身体能力でしょう。監禁から逃れるため、身を守るために必要だった」

「なにが言いたいの?」

「水間にはオスメスがある。でも実は()()にはベースとなる元の人間の性別は問わない。時間さえあれば性別すら変化させられるぐらいだから。だけどそのせいで交配もなかなかうまくいかないの。でもあなたたちは違う。ヒトのまま水間を宿したあなたたちはね。水間からしてみれば、ちゃんと性別を持つあなた達と交わった方が成功率が高いように見えるの。つまり魅力的な個体だということ。積極的に狙われるわ」

「そうか、今の輪油は男だから」

「そう、狙われるとしたらあなた。万が一に備えてあなたは私達といてもらう。今回の狩人はダイくんが適任よ」

「もともとダイの方が水間狩りの才能もあるからっていうのも理由でしょ。悪いけど、状況によっては私も行くから」

「あなたが本気になったら、きっと私達は止められないわね」

「そうよ、邪魔なんかさせない。誰にも、何者にも」

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