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第十八話・ともだち

 私は今いる場所がどこか知りませんでした。

 先生を通じてCIROのある人物が私に会うことを求めてきていました。

 それに応じ、例の青い車に乗り込んだのです。

 ダイは自分も着いて行くといって聞きませんでしたが、条件は私一人であることです。

 迎えに来たのは小野道さんでした。

 まさかと思いましたが目的地まで目隠しされることになりました。

 それよりも驚いたのは、どうやら一応の責任者だと思っていた小野道さんよりも、呼び出した人間の方が立場が上のようだったことです。

 再三のことですが、そんなことを隠す意味がありません。謀らねばならないようなことではないのです。

 なぜなら、小野道さんですら偽名ですし、水間のことなど誰も信じないし、知られたところでなにがどうなるわけでもないからです。

 つまり、これは、私達からさらに外に情報が漏れることを恐れてのことではありません。

 当主さんや先生で情報が止められていたことからも明らかです。

 すなわち、私たちに知られたくないことがあるということ。


 場所は、おそらくはビルの内部。綺麗ですが古い場所です。

 コンクリートの壁、圧迫感。暗く、配管がむき出しの、地下とは断定できませんが、似た雰囲気の息苦しい空間です。


「隠れても無駄だよ」


 私は曲がり角に声をかけました。

 あの当主さんの屋敷と同じです。

 息と気配をこれでもかと殺していますが、わかるのです。

 なぜなら、その人物は、知り合いだから。


「まどろっこしいし、出てきなよ、鏡美(きようみ)

 

 鏡美。

 あの山で水間に襲われなかった方の友人。


「久しぶり」

 相変わらずの妖艶な眼だと思いました。


「もとから?」

「ええ」

「なぜ」

「あなた達に使命があるように、私にもあった。それだけ」

「CIROじゃないのね」

「所属はしてるわよ」

「お眼鏡には叶った?」

「最終テストはこれから」

「目的は?」

「……」

「いまさら何を隠すの?」

「ねえ」

「なに?」

「弟くん、璃右大(りうだい)くんだっけ」

「ダイがどうしたの?」

「かわいいね」

「なに?」

「あなたを連れていく映像を見せたらいてもたってもいられなかったみたいよ。完全に誘拐の様相だったものね」

「……なにをした」

「簡単に言いなりになったわ。すごい表情してたけど」

「ダイに何をしたぁっ!!」

「そうね、ちょうどそんな顔」

 鏡美が私に向けた銃口の不気味さは気になりませんでした。


『ただのニンゲンのクセに……』


 ただ、ここで鏡美を()()とダイのことがわからなくなる。

 鏡美に襲いかからない理由はそれだけでした。


「落ち着いて。ただここに来てもらっただけよ」

「……どうしてそんな手間を? ダイなら黙ってても着いてきたのに」

「それはね、あなたたちそれぞれをそれぞれに対する人質にしたかったからよ。頼みたい事があるの」

「だから、普通に依頼してくればよかったんじゃないのって言ってるの」

「それじゃダメ。もっと本気に、真剣になってもらわないといけない」

「なにがあるっていうの?」

「ここに、あるモノが潜伏しているの」

「ヤツら?」

「そうよ。でもただの水間じゃない」

「ただの水間なんてほとんど見たことないけど」

「『置換体(ちかんたい)』よ」

「チカン……それって!」

「置き換えが完了した水間よ」

「ついに、現れたのね」

「防ぎようがなかったわ。なにせ変異によるものですもの」

「変異?」

「ある人間が水間に襲われた。置き換えには至らなかったけど、かなりの侵食を受けていた。()()は昏睡状態に陥った」

「……」

「人知れず、彼女の体は少しずつ変化していた。誰も気付かなかった。彼女の体内で、長い時間をかけてそれが再生し増殖していたことを」

「そんな……」

「そして、置き換えが完了した彼女は、隔離施設から逃げ出した。その際、二人ミンチされたわ」

輪油(わゆ)なの……?」

「そうよ。あの夜、あの山で水間に襲われた私たちの友達。かわいそうな輪油」

「輪油……」

「しっかりして。これから、あなた達にその輪油を――」

「殺させようってんでしょ? いいよ、やってあげる」

 鏡美は驚いた顔をしましたが、この程度のこと、私はとっくに覚悟できていました。

 とっくに私はケダモノなのですから。

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