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第十五話・それから

「市見の直接の血族である我々は、なんとか今でも人間のままの水間憑きをうみだすことができる。しかしやはり限界がある。もう親戚内で我が家だけしか水間への抵抗力がないように、うちの家系すら数世代もすればこの方法は使えなくなるだろう」

「……」

「水間憑き同士の子は『置き換わった』者とは違う。完全な水間の天敵となるだろう」

「そんなことできるわけない」

「ダイは、いいそうだ」

「わからない。返事できない」

「わかった。私もメチャクチャなことを言っている自覚はある。どれだけ大切なことだとしても、やはり私には強要することはできない。いい。これについては……任せる」




 それから、私は苦しい日々を送りました。

 おそらくですが、ダイは小さい頃からこうなることを教えられていたのではないでしょうか。それで苦しんで、だからあんな目をする子に育って……




 私は『兄弟の水間』を受け入れる覚悟をしました。

 それは、色々なことを忘れようとして、逃避しようとしてのことだったように思います。

 詳しい方法はここには記しません。この方法は、悪用すれば水間を意図的に生み出すことができるものだからです。


 ただ、小さい頃、父に連れられて行ったあの水溜まり、そこで会ったあの水間、あれこそが()()()()()()()()()()()()だったのです。

 私の兄弟、いえ、確信を持って言えます。彼女は、私の姉だったモノです。


 父と、弟と、そしてあの監視のおじいさんの前で、私は姉と一つになりました。


 まどろみの中から見たダイの視線、そのとき、私はその視線以外の一切を忘れてしまえと願いました。

 変わって、完全に水間に置き換わってしまって、なにもかも忘れて、私と違う私が、世界で唯一の『同類』であるダイとだけ生きていけばいいと、そう思ったのです。




 ・ ・ ・ 




「先生、ここですか?」

「ここだな。門が閉まってるじゃないか」

「生活用水の云々、ですか」

「イタズラするようなのがいたかな。構わん、乗り越えるぞ」

「犠牲者出なかったのは幸運でしたね」

 ダイが門の上まで跳び、先生を引き上げます。

 私も跳ぼうと力をこめます。門は私の背より高いので、通常の筋肉ではなく水間の方の力で飛びます。

 水間と一つになった私が以前とどう違うか具体的に伝えることができません。なぜなら、以前の感覚をもう覚えていないからです。

 でも、違うということだけは言えます。

 以前よりも、もっと強く、速く、鋭く……

「戦うときは下がっていてほしいのですが」

「監督をしとかんと」 

 私はいつの頃からか先生と呼ぶようになった監視のおじいさんとダイの会話を、どこか上の空で聞いていました。

「これがある」

「ドローンですか」

「マルチコプターというんだよ」

「目立つしうるさいですよ」

「大丈夫、こいつは静音仕様だ。目立つのは仕方ない。それに、どうせこいつで指示を出すんだ、音なんか耳障りにならなければそれでよしだろう?」

 監視のおじいさんが先生なのは、戦う方法を知っていたからです。

「そんなのまで使えるなんて、器用というか、ハイカラですね」

「ははっ、よくそんな言葉知ってるな」

 私は自分のレインコートがブカブカなのが気になっていました。

 デザインもなにもありません、紺色で、頑丈で防水機能は良好ですが重たい、私達の戦闘服です。

 晴れでも雨でも雪でも、私とダイはこれを着ます。

 この色気のない格好の私はダイからどう見えているのか、それだけが気になっていました。

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