第十三話・答え
「ホムンクルスというものをご存知ですか?」
「たしか、小人だとか人造人間のことでしたか?」
「はい。パラケルススが製法を書き残しています。もっとも、その製法はパラケルススが女性を忌避していたことから発想されたものとされていますが……」
「……同じことを?」
「似たことを」
「水間は、昔から世界中で知られていた……?」
もしかしたら、水間とは、私が思うよりはるかに人間と密接で、身近な存在だったのかもしれません。
「それで、話はこれからです。そして、今からとても残酷な話をします」
「はい」
「お二人にはご兄弟がいました。何人も」
「兄弟?」
「言葉そのままの兄弟です。あなた方の上に」
「何人も?」
「はい」
「そんなはずは……」
「聞いたことはないでしょうし、それらしい気配もないでしょう。当然です、うまれていませんので」
「……水、子……」
ほんの少しダイ気配が強まりました。
「ヒルコ」
ダイの呟き。
「そんな」
「そのご兄弟と、市見から我々に伝わっていた術法を用いて――」
「そんな、なぜ、そんな……!」
「二人の水間がうまれました」
「……」
「そして、その水間は大切に育てられました」
両親の顔が浮かびます。ですが、その顔を、今はどんな感情でも見ることはできません。
私の思いは隣にいるダイへと向かいます。
「血縁の水間を宿すと、水間に触れることができるようになるんですね……? 肉体的に戦うことができるようになるんですね……?」
私は涙をこらえながらようやく聞くことができました。
「はい」
「ダイは、もう……」
「すでに」
「水間が二体用意されたということは、もう一体は……」
「……あなた用です」
「友人は水間に襲われました。助け出せたはずですが、意識がありませんでした。なのに、私が大丈夫な理由はなんですか? それも市見と?」
「先ほど話しました市見左津名と市見右炉がうまれるまでに、市見には水間憑きが何人もうまれています。ときには事故で、ときには意図的に。そして、『置き換え』が不完全でなりきるまでに猶予のある人物もなかにはいました。それらに子ができることもままあった」
「つまり、市見は、私たちは」
「はじめから水間の血をひいています」
「それは、わざと、そうなるように?」
「十中八九。市見がかつて水間を超越者と見ていた歴史の結果でしょう」
「あの人達は来てるんですか?」
ダイが静かに質問しました。
「あの人達とは?」
「CIROです」
「うーん、それがなんなのかわかりませんが、来てませんよ」
「車がありましたが? 姉さんが襲われた晩に見たのと同じ車が」
「ある日の車って、緑色じゃ……ここにあるのって青かったよ?」
「オレンジ色の街灯の下だと青い車は緑になるんだ」
「……今後、助けてもらう必要が」
「もともとがそこからの依頼なのでは?」
「いや、それは」
「あらゆるところで水間が増えてきた。それに国が気づいた。対応が迫られた。過去に何度も駆除が行われていたことがわかった。今もその方法がとれるか調べた。見通しが立った。実行をはじめた。それだけのことでしょう」
「……」
「来ているんですね?」
「性質上、この仕事は各地方自治体、行政が行うことになるのです。有害鳥獣駆除と同じですね」
「しかし、表には出ない」
「はい。地方自治体は書類上の処理を行うのみ。実質的にあなた方だけでやっていただくことになります。もちろん、必要とあれば例えば私を通してでも言っていただければ土地の封鎖などは行ってくれます」
「直接的には」
「会えはしますし協力することもあるでしょう。ですが、ダイくんたちの方から接触することはおそらくできないはず……どうなんでしょうか?」
当主の声に反応するように、2つ隣の部屋で気配が蠢きました。




