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第十一話・いにしえの

 山での事件から二日後、私とダイはある場所に向かっていました。

「もう着くぞ」

 久しぶりに会った親との会話もそこそこに、私はこれから起こることに思いをはせていました。

 場所は四国です。目指す場所は、ダイのお世話になっている家。


 たどり着いた家はいかにも旧家といった佇まいで、庭も広く、奥には隠すように青い車が止まっています。ただ、なんとなく、その車はこの家のものには思えませんでした。

 両親とは別の部屋へ私とダイは通されました。ここで待っていろとのことです。

 待っている間、ダイとした話は、普通の、ここでの生活や様子についてです。

 どうせもうすぐわかります。

 なにもかも。

 そんな予感がしていました。

「よくいらっしゃいました、左々(ささ)さん」

 ふすまを開け挨拶をした男性は当主だと名乗りました。

 当主、という言葉からイメージされる年齢からはまだだいぶ若い印象です。

「弟がお世話になっております」 

「これから話すことの多くは璃右大くんにはもう話していることですが、璃右大くんもいっしょに聞いてください」

自己紹介もそこそこに、彼は話をはじめました。


「……水間の最終的な目的をご存知ですか?」

 当然のように水間の話題が出てきました。それはもはや不自然なことでもなんでもないのです。

 なぜならここは、私たちの地元にあった西光寺の記録の、その出所なのですから。

「人になりかわること、と聞いています」

「はい。ですが、その『置き換え』の先があるのです」

「先?」

「水間の語源は?」

「わかりません、でも調べたことがあります。水官という、道教の神様のようなものがいると……それだと勝手に思ってましたが」

「あっています。表向きもそうなっています。ですが、人間です。人間が水間の語源です。水間は、怪物でも妖怪でもありません。人間のもう一つの形です」

「父からだったと思いますが、ダビジョからうまれるとも聞いた記憶があります。それと関係が……?」

「はい。荼毘所、つまり火葬場ですね。水間となる種は、高温で火葬され、煙となったヒトの体や体液といった水分がもととなります」

「ヒトの、死体……!」

「よって、水間が本能的に求めているのは『生』なのです」

「では、その、()()()()は」

「水間にしてみれば蘇りの手段です、しかし本質的に『死』である水間にはその先をひどく求める性質がある」

「なんですか、その先って」

「子孫を残そうとすること、すなわち繁殖。置き換えに成功した水間は同じく置き換えに成功した者を探し始めるのです」

 私はなにかそら恐ろしくなりました。

「なにが……」

 言葉につまります。

「うまれるのか?」

 当主の方が答えます。

「……実はわかっていません。なにもうまれないのかもしれない。ですが、それは絶対に防がなければいけないことなのです――」


「――私たちの手で」


 当主の人の言葉が確信をつきました。

 私は、私とダイは、なにも答えませんでした。

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