第一話・思い出
みなさん水間ってご存知ですか? 地名や人物名ではありません、そういう……『何か』です。
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私が幼い頃、ある日、父の仕事場についていくことになりました。
と言っても、その日の父の仕事は雑用のようなもので、職場に大きな車が入るので会社の車を移動させておくというものでした。感覚としてはドライブです。
職場につき、作業用の駐車所に行くと車に乗り込みます。車は何台かあるのですが、まとめて置いておける場所がないので、何人かの社員が一人一台バラバラに他所に置きにいくとのことです。
会社から出ると郊外に向かいました。会社自体もそれなりに郊外にあるのですが、そのさらに郊外です。
見知らぬ場所です。自宅からものすごく遠いわけでもないのですが、その辺りには一度も来たことはありません。
「ここってもう山?」
「いいや、近いは近いけど」
大きな道から逸れて木々が増えてきていたのですが、そこはまだ山ではないそうです。その割には妙に斜面になっていたり道が曲がっていたりと入り組んでいます。
そんな道からさらに脇道に入りました。もう道は舗装すらされておらず、なかなかにきつい斜面になっています。
目的の場所はすぐでした。ゲートのようなものと管理か警備らしき人がいるのが遠目に見えます。
「隠れて」
父が言いました。
私は後部座席に座らせれていました。ドアの裏の死角にしゃがめと言われたのです。
イタズラのつもりか、仕事に子供を連れてきてはいけないからなのかは不明でしたが、父は特に真剣でもなさそうでしたので軽い気持ちで隠れました。
父と管理か警備かの初老ぐらいの男性が適当に挨拶し、奥へと向かいました。
その奥の開けた場所には大きな水溜まりがありました。




