春宵一刻
今回からバトルスタートです!
戦闘描写が少し雑になってしまっているかもしれません、ご了承くださいm(__)m
「ねー飛鳥さん〜もう一回しましょうよ〜」
「もうやだよ。流石に飽きてきたから。」
「そんなぁ〜あと一回!あと一回だけで良いですから‼︎」
「仕方ないな、あと一回だけだぞ。僕だって宿題とかあって大変なんだからなー。」
「わーい!ありがとうございます‼︎飛鳥さん大好きです!」
僕は今トランプでババ抜きをしている。1対1で。
まさか1対1でババ抜きをする日が来るとは夢にも思わなかった。だってババ抜きって基本3人以上じゃない?しかも、これで15戦目。
まだ薄桜は僕の家に約4時間ほどしかいないのに実家のようにくつろいでいる。まあ、僕の名前の一部を持っているから実家と言っても間違いないのかもしれないけど…
「それで他の和色撫子はいつ僕達をおそってくるの?」
僕はトランプをシャッフルしながら薄桜に尋ねた。
「それは分かんないですね〜、他の娘たちもまず初めにパートナーを探していると思いますから。まあ、私の場合はこっちの世界に来て1日目で飛鳥さんに出会えましたから。あと一カ月くらいは私とイチャイチャしてても大丈夫ですよ!飛鳥さんのお願いなら出来る範囲ならなんでもしますから!」
「だったら、やっぱりもうトランプやめない?」
「それは残念ながら出来ないお願いですね〜、だって飛鳥さんさっき『あと一回だけだぞ』って言っちゃいましたから!」
「はぁ…分かったよ。まったく…」
僕がトランプをシャッフルしていると薄桜は突然真剣な表情に変わった。
「どうした?なんかあったの?」
「飛鳥さん、緊急事態です。近くに〝本紫〟の気配を感じます。戦いに行きましょう。」
「え?いきなり?構わないけど時間はまだ一カ月くらいあったんじゃないの?」
「はい、そのはずでした。ですが、彼女もパートナーを発見し、契約したようですね。宣戦布告だけなら良いのですが…」
「よし、とりあえず行ってみよう。実際に和色撫子同士の戦いを見てみたいしね。」
そして、僕は薄桜を自転車の後ろに乗せて薄桜の指示通りに進んだ。
「そこを、右に曲がってください。そこからは真っ直ぐです。」
「分かった。それにしても、薄桜軽いね。普段の時とあまり変わらない気がするよ。」
「本当ですか⁉︎おだてたって桜の花びらしか出ませんよ!」
「別におだててる訳じゃないよ。重かったら重いって言うからね。」
「もー!飛鳥さん大好きです‼︎こうなったら何でも言うこと聞いちゃいますよ!」
「はいはい。」
こんな雑談を交えながらペダルを漕いでいると、到着したのは僕が薄桜と初めて出会った公園だった。
しかし、そこには僕達とは異なる二つの影があった。
「こんばんは、本紫。あなたも既に契約を完了していたのですね。」
薄桜は自転車を降りて本紫という娘に声をかけた。そこにいる少女は紫色の和服を着たおとなしそうな小柄な少女だった。薄桜に比べて少しだけ幼い印象だった。背が薄桜より低いからってだけかもしれないけど。
「あなたの方こそ、早いのね、薄桜…」
「あれ?もしかして、そこにいるのは飛鳥?良くないな〜お前には萌黄がいるというのにそんな可愛い娘連れ回しちゃって。浮気はダメだぞ。」
この呑気な口調は他でもない僕の親友、村木だった。
「浮気じゃないって、って言うか、まず僕は麗と付き合ってない。それより、お前も契約してたのか?」
「え、ああ。本紫?家帰ったら変な書類が届いてて、名前書いたらいつの間にか契約してた。もしかして今朝お前が悩んでた内容ってこれのこと?」
「当たり!よくわかったじゃん。」
僕達が会話している間も薄桜と本紫はお互い目を離していなかった。
「早速だけど、始めましょう…長話は好きじゃないの…」
そう言うと、本紫は瞬時に僕達の方向へ飛び込み、殴りかかってきた。どうやら戦いが始まったらしい。
あまりに突然だったので薄桜は対応に遅れた。そして、本紫の拳を受け止めながら僕に言った。
「飛鳥さん!少し離れていてください!」
僕は急いで桜の木の影に隠れた。そこには既に身を潜めている村木の姿があった。
「飛鳥!ついに始まったな!俺一回でいいからこんな体験してみたかったんだ〜!1秒たりとも目を離さないぜ!」
「そうだな!」
僕も再び2人の戦いに目を移した。依然として優勢なのは本紫で、薄桜は本紫の猛攻に耐えるが精一杯だった。
しかし、薄桜がついに能力を使った。口から大量の桜の花びらを出した。それにより本紫の視界が瞬間的に暗くなったため、本紫の猛攻は止まった。その隙に薄桜は体制を立て直すため距離を取った。
「それがあなたの能力…面白いのね…それなら私も使わせてもらうわ…」
本紫は右手を前にかざした。すると、彼女の右手から紫色の霧が出てきた。それは瞬く間に公園内を覆い視界が遮られた。
「どう?これで、あなたも身動きが取りにくいはず…」
「でも、これなら本紫!あなただって周りが見えないはずですよ‼︎」
「自分の能力で自分が不利になる訳ないじゃないの…私と主人には霧なんて存在しないように見えるわ…それにこの霧はただの霧じゃないのよ…」
主人というのは村木のことらしい。あの2人には上下関係があるのか。もっと普通にすればいいのに…
そう思っている矢先だった。
僕は極度の疲労感に襲われた。それに、頭痛と吐き気もする、ついでに言うと全身の筋肉が痙攣している感じもした。まさに、具合悪いのオンパレードだった。こんな下らないことを考えていられるのもあと少しかもしれない。既に立っているのもやっとの状態だった。
これは恐らく本紫の霧に毒が含まれていたのだろう、もちろん本紫と村木には効果のないやつね。
このままだと、薄桜が危ない!
「うす……ざ……く……」
駄目だ。声を出す気力すら既に奪われてしまったようだ。遠くから薄桜が殴られる音が聞こえてくる、くそっ!パートナーなのに何も出来ないのかよ!
ついに僕は地面に倒れてしまった。だんだんと意識が遠のいていく。
あぁ、あっという間だったな、僕の不思議な体験ライフ。これで薄桜退場で僕はまた一般人か…もう…少し…だけ…一緒にいた…かったな…
僕が人生で初めて気絶する瞬間だった。
「本紫!霧を消せ!」
僕の隣でさっきまで嬉しそうに戦いを見ていた村木が叫んだ。
「どうしてそんなこと言うの?主人…もう少しで勝てそうなのよ…?」
「勝敗の前に飛鳥の体調を気にしろよ!このまま放っておくと死んじまうぞ!」
「でも…」
「いいから消せ!速く!」
本紫は渋々霧を消した。その途端身体が急激に楽になっていった。視界も晴れていき、公園の遊具も見えてきた。しかし、そこにはボロボロになって倒れている薄桜の姿もあった。僕は慌てて駆け寄り、薄桜の上体を起こしてあげた。
「えへへ…ごめんなさい…負けちゃいました…」
「そんなことより治療が先決だろ!速く病院に…」
「そうはさせないわ…あなたは私との勝負に負けたの…さあ私に『参った』と言いなさい…」
本紫が僕達の前へ歩み寄ってきた。
「やめろ、本紫。その薄桜ちゃんの主人は俺の親友だ。親友の泣き顔よりも見てて辛いもんはない、だから『参った』なんて言わせるな。」
「……分かりました、主人。」
「と、言うわけだ!飛鳥、俺達と同盟を組まないか?やっぱ2人だけだと心細いし、何よりお前なら裏切るなんてこともしないだろうし、どう?」
「唐突すぎないか?いや、僕は構わないけど、薄桜は?」
「はい!ぜひ同盟を組みたいです!」
「これで交渉成功だな!よろしく、飛鳥!薄桜!」
「よろしく…」
「よろしくな!村木と本紫!」
「よろしくお願いします!」
かくして、僕達は仲間になった。
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