2-溢れた思い
2人と別れた帰り道、私は…泣いていた。最低だ最低だ、と呟きながら。
…私は祐介の事が好きだ。友人としてではなく、1人の男の子として好きだ。
でもそれ以上に3人でいる事が好きだ。
私が自分勝手に告白なんかしてこの関係が壊れるのが怖い。
今日、井上 透の話に自分を重ねた。井上の言葉に図星を突かれた様な気がして、自分の中のモヤモヤをぶつけた。八つ当たりだ。
祐介には気がつかれたくなくて嘘をついた。
美穂は本気で私の事を心配してくれていた。
それなのに私は祐介に心配されている事、手を取られた事が嬉しくて。美穂の心配に感謝する事がなかった。
最低だ。結局自分の事しか考えていない。
ドンっ。俯いて歩いていたから前に気がつかなかった。人にぶつかった。
「ごめんなさい!」
顔を上げて謝った。顔は酷いと思う。
「…井上…」
井上だった。
井上は黙ってその場を立ち去ろうとした。
「待って!」
私はまた井上の腕を掴んだ。
「なんだよまだ文句がある訳?」
井上が睨んできた。当たり前だ。
「違う!私、あなたに謝りたくて。」
井上は黙って私を見る。
「えっと…あの」
言葉に詰まる。いきなり何を言えばいいかわからない。
「腕…大丈夫か?わりぃ強く掴みすぎた。」
「え?」
「悪かった。急に意味わかんなかったよな。」
予想外の井上の言葉に私はまた困惑している。
「小田の奴に聞いたんだろ?俺の事。さっきあいつに謝られた。」
「うん。」
「ちょっと嫌な思い出がお前達と被った。八つ当たりだ。わりぃ」
「私こそごめん、私たちの関係を勝手にあなたに被せた。八つ当たりだよ。ごめんね」
井上はキョトンとした顔をした後に笑った。
私もつられて笑った。
「そっか。つか腕本当に大丈夫か?今泣いてたろ?痛むか?」
あぁなんだこいついい奴じゃん。それを変えちゃったのも恋か…
「腕は大丈夫だよ。泣いてたのはちょっと自己嫌悪」
「そっか、それならいいんだ。気をつけて帰れよ」
「うん。井上は家この辺なの?」
「ん?あぁそうだ今コンビニに行こうと思ってさ。」
「ならさ、少し話さない?」
私は井上に聞きたい事があった。井上は少し困惑してたけど。ならお詫びにコンビニでなんか奢らせてくれと言って来た。コンビニは少し離れた所にある。歩きながら話すことにした。
「なぁ話ってなに話すんだ?」
「…ちょっと質問があって、嫌だったら答えなくてもいいよ」
「あぁ、なに?」
小さめの深呼吸をして切り出す。
「…友達だと思っててずっと友達でいたいと思ってた人に告白されてどう思った?」
井上は少し俯いて考えてから答えてくれた。
「…素直に嬉しかったよ。」
「えっ?」
「なんだよ?そりゃあ困惑はしたけどよ。そこまで俺の事思ってくれてたんだって思ったら嬉しかったよ。」
私が思っていたのと違う答えだった。
「でも…俺にとってあいつは友達なんだよ。付き合ってとか言われても、実感もわかなかったし。今の関係のままがいいって俺は思ったんだ。」
「うん」
「俺は少しくらい気まずくなってもしばらくしたらまた元に戻れると思ってた。…ダメだった。そりゃあそうだよなぁ自分を振った男の子とずっと仲良くなんて出来ないよな。」
これだ…私が怖いのはこれだ。
「…今度は俺が聞いていいか?」
「え?…あぁうん」
「お前、佐島の事が好きなのか?」
「わからない。多分好きだと思う。」
「ん?なんだそれ?」
井上は困惑していた。
「最初は好きだったと思う。恋だったと思う。けどね最近はよくわからないんだ。」
そうわからない。祐介の事は好きだそれは間違いない。けどそれが恋心なのか友情なのか最近ではわからなくなって来ている。
2人で居るとドキドキするし、手を引かれた時も本当に嬉しかった。けど…
「私は3人で居るのが好き。あの2人は私の最高の友達、だから私のわがままでこの関係を壊したくないの。」
「ふーん色々考えてんだな。けどさそれ辛くないか?自分の気持ちにずっと蓋をして隠してさ。俺がお前達に、イライラしてたのは俺が出来なかった関係をお前達が作ってたからだ。俺は男女にも友情はあるしそれは続くものだと思ってる。人ごとだから言えるのかも知れないけど。思いを伝えるって事はやっぱり大切だと思うぜ。このまま黙っててお前の気持ちがフラフラしてる方が関係を壊す事になるかもしれねぇよ?」
…井上の言う通りだ。私の気持ちが定まらないまま過ごしても、自分の気持ちを隠し続けてたらいつか…
「私はどうしたらいい?」
「んなもん知るかよ。お前の事はお前が決めろ。それにまだ振られるって決まったわけでもないだろ。」
………
「そうかもね…」
「着いたな。まぁあれだなんか甘いものでも食って元気出せよ。好きなもの選べ?な?」
「いやいいよ自分で買う。」
「いやこれは俺の謝罪の形だからさ受け取ってくれ」
「ありがとう…じゃあ」
「それじゃあまた明日。今日は悪かったな。
」
「こっちこそごめん。あとありがとう。」
井上は私を家まで送ってくれた。
ご飯を食べて、お風呂に入って、歯を磨いて、部屋に戻った。井上に買ってもらったエクレアを食べようとした時、スマホが震えた。
「げっ通知が…」
ずっと見てなかったからスマホの通知が大変なことになっていた。ほとんどが美穂だ。
私は笑顔になりながら。
グループ通話のボタンを押した。
2人ともすぐに出てくれた。