第七話 中央政府
首都バジリスク とある貴族の豪邸。
「おいメルフィン、聞いたか?バジリスク公爵の事を。」
そう話すのは、フェンスという名の商人貴族。メルフィンの家での集会に呼ばれた内の一人だ。
「聞いたさ。神聖ルートヒ帝国との和平。それにフレン王国との防衛同盟の調印。まさかあのバジリスク公がな。」
メルフィンは、動揺を隠せなかった。無能、傀儡公爵と思っていたバジリスク公爵が戦争の終結、大国との同盟を成し遂げたのだ。
「クソ、計画が。」
「だが終わりじゃないはず。やれるよ!」
明るく話している人物はメステル・キリス。キリス家の令嬢である。訳あってこの集会にあつまっている。
「我々の革命が。」
このバジリスク公国には、現在三つの派閥がある。バジリスク公爵率いる貴族派。メルフィン・バルザール率いる王国派。そしてレバールベルト率いる共和国派である。
この三代派閥がバジリスク公国に存在する主要な政治組織だ。王国派は、貴族が支配する国に不満であった。
バジリスク公国は、元はリトライト王国という名の国が存在していた地域であった。神聖ルートヒ帝国に支配されてからは、リトライト王国の王族は、身分を偽り貴族として生きていた。
そしてそのリトライト王国の権威を取り戻そうとしているのが王国派だ。
共和国派は、王族や貴族といったものを追放、撤廃し、平等で市民による安定した政治を行う事を目的とした派閥だ。
現在の派閥人数は、貴族派325名、王国派69名、共和国派17名である。
一見貴族派が有利に見えるが、貴族派の殆どは古典派の人間で構成されており市民に人気がなく、バジリスク公爵おかげで存続していた。
王国派はバジリスク公国に存在する旧リトライト人による支持を得ており勢力を急激に伸ばした。
共和国派は新しい派閥という事もあり人数がすくないが、対神聖ルートヒ帝国戦での活躍によりレバールベルトが英雄になり市民の人気も凄まじい事になっている。
メルフィンらが集会していると、ノックする音が響いた。
「メルフィン様、バジリスク公爵様からお手紙です。」
メルフィンはメイドから手紙を受け取り読んだ。
「.......」
メルフィンは目を丸くした。
そこに居合わせた者は、メルフィンの姿に驚いた。
「何が書かれていたんだ?」
メルフィンは少し間を置き答えた。
「バジリスク中央議会への参加要請。」
皆が息を飲んだ。
無理もないバジリスク中央議会とは、政治の全てを取り仕切るバジリスク公国の最大政治機関だ。
本来そこに行けるのは、バジリスク公爵率いる貴族派のみ。
何故我々が呼ばれのか分からない。
「我々だけではないぞ、共和国派も呼ばれているらしい....あいつの真意が分からない。」
あいつとは、バジリスク公爵の事であろう。無能と思っていた公爵が国を救った英雄の一人になったんだ。
メルフィンは、バジリスク公爵の力量を見誤っていたか?
メルフィンはバジリスク公爵への認識を変えることにした。
「そしてメルフィン、中央議会の開催は何日なんだ?」
「明後日だ。」
どこかの世界では、国家元首が建物らしい。