第一話 2つの顔
バジリスク公!バジリスク公!はいるか!
バジリスク城、エモットのいる寝室まで響く声にエモットは、何事かと思い扉に目を向けた。
大きな音と共に扉は開けられる。
扉の警備をしていた近衛兵2名を押し退けエモットの前までやって来た。
「バジリスク公!」
声の正体は、国立緊急徴収兵指揮官のローム男爵であった。
「なんだ?」
うるさいやつだな。本当に男爵か?男爵の皮を被った何か?
エモットがつまらない事を考えていた時、ロームの表情は怒りに満ちており、エモットに話しかけた。
「バジリスク公!神聖ルートヒ帝国軍約2万が攻めて来た!この状況分かっているのか?バジリスク公!」
ロームの怒りの原因は敵軍が攻めて来たにも関わらず国のトップであるバジリスク公は何もしていないという事に怒りをあらわにしていた。
「ローム男爵。貴方は首都の治安維持部隊隊長。この首都を外敵とならず者から守るだけで良い。」
落ち着いた口調で、ロームに話した。
「バジリスク公!」
「国は動いている!」
エモットの一言にロームは固まった。
バジリスク公は、なにを考えているのだ!神聖ルートヒ帝国軍2万に対して我々の軍が2000近く!そのうち5000が治安維持だぞ!
バジリスク公の言葉の真意がわからない。国は動いている?ルートヒ帝国軍に対処する為の何かをしたという事か?
「何かしらの対処はした?という事ですか?」
ロームの言葉にエモットは沈黙だった。
だがその目は、冷たくロームを見下した者だった。
「.....。」
「分かりました。私は持ち場に戻ります。」
そう言ってエモットの寝室を後にした。
くそ!治安維持部隊をルートヒ帝国軍の対処に充てれば良いものを!
バジリスク公は本当に動かれたのか?
くそ!くそ!
一人残されたエモットは、寝室でお茶の続きをした。
「はぁ〜。美味い。」
一腹すると顔に笑みを浮かべた。
「独立したてのろくに訓練もされていない軍隊が正規軍にかてるものか。ロームの奴焦りすぎた。どうせ治安維持部隊も前世に出せと思ってるんだろうな。まぁこの戦い負けようが勝とうが独立は、維持される。」
これがエモットだ。冷静であり何処か謎めいているが国の事を第一に考えている聡明な統治者だ。
見張りをしていた女性の近衛兵が隣の近衛兵に話した。
扉から声が漏れ近衛兵にも聴こえていた。
エモットは窓から見える城下町を見て少し笑った。
あんな事を話したがエモットは、内心ビビっていた。
ロームの奴怖いよ!
なにあの顔!
あんなの男爵じゃないよ!ゴロツキだよ!
はぁ〜
疲れるよ。
エモットは、確かに何もやっていない。
だがそれは無意味と分かっているからだ。
下手に動くと独立したての国だ。治安も民兵も使い者にならなくなる。
難しい命令を出すより、完結な命令の方が動きやすいと思っての行動だった。
はぁ〜。やる事が本当にないんだよ。ローム男爵。
私はこの戦争の準備を2年前からして来たからね。
後は前線の防衛軍に任せよう。
上手く要塞を使ってくれよ〜。