第十話 地盤
中央議会には現在貴族派以外に王国派、共和国派が席を並べていた。
そして中央では、議会の中心役であるバジリスク公爵が座っていた。
皆が貴族派以外をこの場に呼んだ事に対して疑問に思っていた。バジリスク公爵の真意を見定めようとしていた。
そして議会開始の鐘が13時になる。
身を引き締める、貴族派、王国派、共和国派、今日の議会は一味違うと実感した。
そしてバジリスク公爵が立ち、各派閥に対して礼と感謝の言葉を述べた。
「今日の中央議会開催に伴い、他の派閥から来てていただき感謝する。これからは、この三つの派閥の方々と一緒にこの議会を進行していく。」
バジリスク公爵が再び礼をし椅子に座る。
おのおのバジリスク公爵の真意を探ってはいたがわからなかった。
三つの派閥で進行していく意味。敵とも呼べる人間を呼び議会に呼ぶ意味。
バジリスク公爵は何をしたいんだ?
この場で己の力を見せつける為?その為に三つの派閥を集結させたのか?
.....そうだったらバジリスク公爵の目的は派閥の統一化か?派閥を力で抑えこみ自らのやりやすい組織を作る事が目的?
だとしたら.......
貴族派、王国派、共和国派の上層部の人間がその様な考えをしていた。
「なぁバルカル」
そう答えたのは【ソルマン伯爵】貴族派の重要人物のうちの一人だ。
「バジリスク公爵は確かに有能だが.....我々貴族派の繁栄の妨げになる可能性がある....」
ソルマンの表情は、険しくこの現場を良いとは思ってはいなかった。
「あぁだが今は傍観していろ」
バルカルの言葉にソルマンは不安を感じた。
「大丈夫なのか?今動いた方が.....」
バルカルはソルマンの目を見た。
バルカルのその瞳は怒りともとれる感情をやどしていた。
「すまない。」
ソルマンは謝罪し、今はバジリスク公爵を見守ることにした。
バジリスク公爵は、今回の議題である内容を話し始めた。
「それでは皆様今回の議題、バジリスク公国の国力強化の為の話し合いを始めましょう。」
バジリスク公爵の瞳や姿勢からこの議題がどれだけ重要かが受け止められた。
「我々は現在、フレン王国と同盟をし、外交的には有利な状況にある。だが問題は内政である。我々の経済力は他国と比べ貧弱である。故に先ずは経済の基盤を整える。」
バジリスク公爵の言葉に意を唱える人物がいた。
「バジリスク公爵、経済の基盤を整えると言ったが具体的にはどの様な事をするんだ?」
「具体手には、貴族や商人を使いそこで得た資金を街の活性化を行う。」
バジリスク公爵の発言に貴族派の人間が驚きを隠せなかった。
「ふざけるな!我々の金を使うだと!我々の金は我々のものだ!」
ある貴族の発言に皆が同調し議会は荒れました。
だが....
「君達から資金を調達しようとは考えていないさ。」
バジリスク公爵の一言で議会に沈黙がおとづれた。
「何を考えているバジリスク公爵...」
静寂が訪れている中、バジリスク公爵は不気味に笑う。
瞳は一段と輝いている。
「では、挙手してくれないかな、資金を出してくれる人物は」
バジリスクの奴め何を考えているんだ!そんな奴貴族派にはいない!
沈黙が続く議会の中、挙手をする人物が5人いた。
「なっ...バカな..」
挙手をした人物は、【レイスト男爵】【ケリー公爵令嬢】【テスター伯爵】そして若き死神と呼ばれている【ヘンデル侯爵】貴族の中では有力な一人だ。
そして最後に挙手をした人物は、【メイラ騎士】女性騎士として有名な人物だ。
「ありがとうございます。それでは次の議題、国内の魔獣、魔物の討伐についてですが」
貴族派の上層部の人間は、貴族派の中でバジリスク公爵に同調する人物はいないと考えていたが、この現場に驚きを隠せなかった。
「現在我々の領内に存在する魔獣は2体【デベリ】【ハス】と言った魔獣です。これらの討伐が必要であり我々国家主導の討伐隊が存在している、この場の中で討伐隊に支援出来るものはいるか?人、物でも構わない。」
貴族派、王国派、共和国派から挙手がされた。
各派閥の上層部はこの現場を見過ごせなかったが、組織の統制が取れていない現場があらわになってしまった。
くそ....何もできないか!
上層部は、バジリスク公爵は各派閥にとって害をなす存在だと確認した。
そして本来なら長くなるはずの中央議会は早く終わった。
「あ..皆に聞いておくが確認したい事はあるか?」
帰り仕度をしていた各派閥の人間は沈黙した。
「ないか」
バジリスク公爵のこの発言で議会は完全に終了した。
くそ!
各派閥はこの議会の本質を理解した。バジリスク公爵の意思、彼がしようとしている事。
帰り側、バルカルのつぶやきにその場にいた者が身震いした。
「バジリスク公爵の独裁政治か。」