学校へ逝こう!?歓迎会会場は○○○○!?
えと、四季咲さんから感想評価いただきました。
更新再開して初です。
ほかにも、更新停滞中に、SINさんとふじこさんから感想評価いただきました。
ありがとうございます♪
第21話 『学校へ逝こう!?歓迎会会場は○○○○!?』
どれくらい車に乗せられていただろう。
周囲の光景が慌しく変わる中、車内の光景だけはほとんど変化を見せていなかった。
目の前に夏海、その両隣に咲と蓮が座り、昼の出来事を夏海が尾ひれをつけ話している。
そして俺の横には玲が、目を閉じながら座っていた。
その玲の手はさりげなく俺の左手に添えられている。
正直、1人だけ孤立しているような状況である。
この玲の手の暖かさが今の隆にとって救いのように思えた。
「でね、騎士様って名前がつけられたってわけ。」
「へ〜、だからナイトなんだー。」
「・・・どおりで騒がれるわけ。」
そうして一通りの話を終えたのか、一仕事終えたような表情で夏海がこちらを見る。
どうも彼女は噂話が好きなようだ、顔が活き活きとしている。
「やっと終わりましたか・・・。
そこまで大したことでは無いんですから、もっと簡単な説明でいいじゃないですか・・・。」
ついつい隆はそう、口にする。
やはり精神的に結構参っていたようだ、恨めしそうに夏海へと非難のまなざしを向ける。
そんな中、未だ車は速度を落とすことをせず、ほとんど揺れも無い車内では考えられない速度で国道を走り続けていた。
「そんなことないです!」
突然叫ぶように隆の言葉を否定する声が響く。
驚くことにその発信源は夏海ではなく、夏海のすぐ右隣に座る咲からだった。
その声の大きさに驚いたのか、玲も目を開け咲のほうへ視線を向ける。
猫をかぶる玲にしては珍しく、驚きの表情を見せていた。
「・・・咲、声大きい。」
蓮の無感情の一言。
「ぅ・・・、ごめん。」
ようやく、自分が叫ぶに近い声を出したことに気づいた咲は小さく謝る。
「・・・でも私も同意見、それは凄いこと。」
咎められたと思った矢先に賛同され、咲は目を丸くして蓮を見た。
「・・・何?
私は咲の意見を否定したわけじゃなく、声が大きかったから咎めただけよ。」
そう言って、蓮は少し意地の悪い笑みを浮かべる。
どうもこの少女、咲を弄って遊ぶのが好きなようである。
確かに咲は弄りやすいキャラかもしれないが。
「2人とも、楽しそうね・・・。
いえ、3人といったほうがいいかしら?
私達を笑いものにして・・・。」
玲が疲れたようにそういった。
その反応を見て、焦ったのは咲と蓮の2人である。
その実、ただテレているだけだ、と隆は見破ったが2人には本気でいっているように見えたようだ。
「い、いえっ!そ、そんなつもりでは!?」
見るからに焦りまくっている咲。
事情を知らぬ者がいれば、それはとても挙動不審に見えただろう。
「・・・笑うつもりは毛頭無かった。そう思ってたのは夏海だけ。」
と、感情を感じさせない声でそうい言う蓮。
ただし後半に罪を擦り付ける部分を入れるあたり、彼女の腹黒さを感じさせる。
「はははっ、冗談だよ、そうだよな、玲?」
と隆が助け舟を出す。
「ええ、冗談よ。
咲と蓮に怒るはずないじゃない。
夏海は別として。」
と、咲と蓮を快く許し、代わりに夏海へと詰め寄る玲。
「って、あたしっ!?」
と、突然のターゲット変更に慌てる夏海。
『何を今更・・・、原因はアンタだろう・・・。』というのは隆の心の声である。
しかし夏海は本当に悪いと思っていないようで、弁解を始める。
「いや、何でそうなるわけ!?
私はただ、騎士様の活躍を2人に語っただけでしょう?
こんな面白い話、話さないほうがおかしいよ!?」
と力説する。
恐ろしく空気の読めない発言であった。
「ふふっ・・・、私、今すごく頭にきてるの・・・。
咲と蓮は別に怒るつもりは無かったのよ。
でもね、諸悪の根源は潰さないといけないと思うの・・・。」
玲は右手に持つグラスを能力で浮かすと、
「一度、貴方には教育的指導をすべきだと前々から思ってたのよね・・・。」
そう言いながら目を細める。
両側に座っていた2人は、危険を感じたのか、隆の傍に退避してきている。
≪ねー、もしかして私、墓穴掘った?≫
≪ええ、完全に。≫
≪助けてくれないかなー、とか思ったり?≫
≪自業自得ですよ、神妙にお縄についてください。≫
と、テレパシーを飛ばしてくる夏海を一蹴し、目を閉じる隆だった。
その後、夏海の行方を知る者はいない・・・。
「って、ちょっと待ったー!?
勝手に殺さないでよ!?」
と、ナレーションに文句を入れる夏海。
だが当然のごとく皆にスルーされるのだった。
その後夏海は沈黙し、到着まで動くことは無かった・・・。
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ところ変わって歓迎会会場、という名のカラオケボックス。
正直、金持ちにしては庶民的な楽しみを知っているな、と隆はこっそりと感心していたりいなかったり。
「って、大きいトコですね・・・。」
そう、一般的なカラオケボックスと異なるところが2箇所だけあった。
そしてそれが『庶民的』という考えをすべて台無しにしてしまっている。
つまるところ、部屋が広いのであった。
ちいさなコンサートなら開けるのではないか、というほどのサイズである。
本来、カラオケボックスというものはそこまで大きなものではなかったはずである。
そしてもう一つ、その大きなカラオケボックスのすべての部屋を貸切にしたのである。
ドコにカラオケに行って全部屋貸し切る人間がいるだろうか。
尤も、ここにいるのであるが。
「さて、久しぶりに歌うなー。」
と、割と普通な反応の夏海。
「ホント、久しぶりですー。
今日は歌いますよぉー!」
と乗り気な咲。
「・・・カラオケ、暗闇、密室。」
と不穏な言葉を呟く蓮。
「まさか歓迎会をカラオケボックスでやるなんて思わなかったわ。」
と玲は溜息をつきながら、備え付けのソファに腰掛ける。
脚を組み、髪をかきあげる様子は、やはりとても絵になる光景であった。
一瞬、隆ですら見惚れるほどである。
「どうかしたかしら、隆?」
と、固まってしまった隆に玲は問いかける。
話しかけられた隆は跳ね上がるように玲に目を合わせ、
「いや、なんでもないです。
ただ、やっぱり玲は綺麗だな、と見惚れてました。」
と思ったことをそのまま告げるのだった。
完全に天然である。
ボンッ!
と、音が聞こえたかのように錯覚を覚えるほど、玲の顔は一瞬で真っ赤になった。
隆の言葉は真摯でいやらしさを微塵も感じさせなかった。
本心から言った言葉だったので当然ではあるが、だからこそ玲は素直にその言葉の意味を受け取ることが出来たのである。
尤も、だからこそ真っ赤になるほど照れることになったのだが。
「どうかしましたか?
あ、嘘ではありませんよ?
今でも力いっぱい抱き締めたいほどですから。」
と、玲に止めを刺しにいく隆。
しかし当然隆本人に自覚は無いのであった。
とてもたちが悪い天然である。
「ーーーーッ!?」
と、止めをさされた玲は、しばらく再起不能となるのだった。
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一方、傍にいるはずの夏海たちは、
「もー、自分達の世界に入らないでよねー。
むず痒いったらありゃしない。」
と友人の変わりように苦笑をもらす。
「あの玲さんが、なんて意外ですねー。」
「・・・真っ赤。」
と、3人とも苦笑しつつも楽しそうに玲と隆を見つめるのだった。
ちなみに分かると思いますが、サブタイの○○○○の部分にはカラオケが入ります。^^ノ