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心が折れそうな小説家

作者: 猫文

彼が「小説家になろう」で一番利用している機能は「ユーザの新着活動報告」だ。

それはサイトトップの右欄中央あたりに小さく表示されている。

他の欄と比べ扱いの小さな枠なのだが、なぜか心をひかれるのだった。

登場人物ではなく作者の生の声が漏れ聞こえるその書き込みに、舞台裏の匂いを感じていた。


そこに掲載されているほぼ8割は更新報告だった。

彼はソレに興味を示してはいない。いつも読まずにスルーしている。


1割は小説とは関係ない話。

私生活の近況報告や面白いネタ「なろう」に感じている事、他者の作品に感じている事が書かれていた。


シリアスな小説を投稿している作者が活動報告ではユーモア溢れる話しを披露する。

また、甘い恋愛小説を書いている作者が目を覆いたくなるような毒舌を撒き散らしている。

そのようなギャップに遭遇すると、見てはいけない物を見たようなそんな心境になり心が躍るのだった。


残りの1割が「なろう始めました」と「なろう辞めます」だった。

彼が気にしていたのは「辞める」もしくは「辞めようかな」という書き込みのほうだった。


そのような作者を見かけると、彼は「小説を読もう」の作者名検索で投稿作品一覧をチェックしていた。

そこには総合評価が四桁に及ぶ作者から一桁止まりの作者までいたのだった。


彼は信じられなかった。

総合評価が一桁ならばしかたないのかも知れない、しかし四桁もあれば十分に読者がいるだろうにと。

辞める理由も活動報告に書かれている、最も多いのは読まれないから、だそうだ。

ブックマークが百以上あるのに自己評価は読まれていないと判断している。

その作者の満足する読者数はどのくらいだろうと考えずにはいられなかった。


そんな作者に彼は、頑張って下さいと言葉をかけようか、またはその人の作品に評価を付ければ思いとどまるだろうかと一瞬考える。しかし、どちらも焼け石に水というか足枷にしかならないなと気がつき、何もできずに寂しい思いだけを募らせていたのだった。


そんな作者を救うには何か良い手はないかと彼は考えた。

読まれない読者を救うランキング、それがあれば彼らを救えるのではないか。


彼はエッセイを書き投稿した。

これが運営の目に止まれば彼らを救うことが出来ると、そう思って……。


結果は散々なものであった。


能無しは去れ、ゴミ作品を読ませるな、運営に文句を言うな、気に入らないなら「なろう」を辞めろ……。


思惑とは違う結果に彼は愕然とした。


お菓子の詰め合わせセットの袋を開く、子供達が好きなお菓子を取っていく、残ったお菓子は食べないのかと尋ねると要らないと答える。

豊かであるが故の選択、彼は納得した。

貧困に喘いでいる地域に持って行けば残さず食べ尽くされただろう、しかし子供達は満腹なのだ。

食べろと言う方がおかしい。

残ったお菓子の生産者が死のうが子供達には関心がないのだ。自分さえ好きなお菓子が食べられれば他がどうなろうと気にも留めないのだ。


彼は手を合わせて祈る。

願わくは彼らが違う地域で思う存分お菓子を振るまえる日が来ますようにと。

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