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Baby class  作者: 涼木夕
3/12

F-良クラス

『はい、それでは授業を始めます。みんな、入ってきてー』


 ハスキー美女が「オ・レ」のリズムに合わせて手を二度パンパンと叩くと、着物の下に着る襦袢のような薄布一枚を腰帯で留めたなんだかセクシーな女たちがどこからかするりするりと、大勢現れた。皆、背格好や体型がだいたい同じ、色白なキレイめな女たちだ。


「よろしくね」


 口をパクパクさせている赤ちゃんの前に1人1人そのセクシーな女がついた。目の前に来た女がそう言ってしなりと座った。自分を含む半数の赤ちゃんがモジモジとあーだかうーだか言っている。


 赤ちゃんをこんなにモジモジさせるんじゃない!ーー。


 真ん前にいる女を見ないように、わざと視線を外してモジモジモゾモゾしている小さな背中を見える範囲で観察した。たぶんあれ男だ、前世。

 その時、はらりと肩から襦袢がはだけ落ちた。とっさに、腹の臍に視線を落としたが、どうにも気になって目をやるといつの間にかととのえられてしまっていた。ただ胸元が緩く開いていて、豊かな谷間にゆらゆらと吸い込まれてしまった。文字通り、気づくと顔が谷間にあった。マシュマロのように白くて弾力のあるおっぱいが目の前に……。


「す、すいません」


 慌てて体を離して、右手で顔を覆った。手が小さすぎて右目しか隠せなかったが。


「いいのよ、おいで」


 ふわりと抱き上げられると、女の細腕の中にすっぽりと包まれた。柔らかい胸が体全体に当たって、なんだか良い匂いもして、とてつもなく気持ちが良かった。


 うわあ、いいんすか?初対面なのに、こんな、こんな美味しすぎる展開!?据え膳食わぬはなんとやら、ではーー。


 いざ、はだけた胸元に手を滑り込ませようと、

『はい、みんな抱っこしてもらいましたねー。それではこれからは抱っこしてくれてる人はお母さんだと思ってください』

 したところで慌てて引っ込めた。


 いやいや、母ちゃんじゃないでしよ?どー見ても。こんなセクシーじゃないでしょ、いやいやいやいやーー。


『では、そろそろお願いしまーす。みんなは安心して体を預けていてくださいね』


「うふふ、緊張しないでね」


 うふふと笑う妖艶な母ちゃんにどぎまぎ目が離せないでいると、今度はふわりと床に寝かせられた。首に力をいれて頭が最後に着くようにしたが、床は毛足の短い絨毯のように優しい肌触りだった。


「オムツするよー」


 手際よく尻と床の間にオムツを差し込まれ、ばかっと大開脚させられた。


「ちょっちょっと、やめてください!」


 羞恥心が半端なく、やだやだと手を突っ張った。が、どこにも届かない。足をジタバタしても抵抗及ばずオムツを装着させられてしまった。しかし穿かされると、真っ裸のときよりも幾分下半身に安心感があった。うん、穿いてます。


『はーい、みんなオムツ着けてもらいましたね。それでは本番です。赤ちゃんになってくださーい』


「オ・レ」のリズムに合わせて手を二度パンパンと叩くと、ふっと体の力が抜けてしまった。頭を上げようにも首に力が入らない。目が見えない……いや見える。見えるけど、なんだかぼんやりしてすぐそこにいる母ちゃん役の顔も輪郭がはっきりしない。

 突然のことにカーっと、体中に血が巡り体温が上昇するのを感じる。立ち上がることもできない、寝返りは……ああ、それすらできない!耳は耳は……、


「大丈夫よ、落ち着いて」


 聞こえる。耳ははっきり聞こえる。でもこんなんじゃあ、何もできない!!死!!!最悪な事態が過るが、死んでるんだからそれは平気なんだと、冷静な分析に頭を回すよう努める。

 ハッハッと浅く短い呼吸を繰り返す。深く息が吸えない。初めて感じる身体の不自由さに圧倒され、頭がうまく回らない。

「あー」大声で叫んだ。助けてくれって言ったつもりが口をついて出たのは短い一声。言葉がでない!


「大丈夫、おいで」


 再び抱き上げられ、密着した胸から全身に体温が伝わる。笑っている目、口元がさっきより見える。それに両腕に包まれている安心感!!!

 すうっと呼吸が楽になった。離されたくなくてきゅっと胸元の襦袢を掴む。ただ、握力がなさすぎてふにゃっとしか掴めなかったが。それでも抱えられている安心感は揺るがなかった。

 ……んっと、突然の放尿感。さっきオムツもしたしいいかと、しれっと放尿。トイレ以外ですることに抵抗はあるものの、ちょっと集中すればすんなりでた。

「はあ」と、気持ちよくて声が漏れでてしまう。


「しっこでたかな?オムツ換えようね」

 母ちゃん役は優しい声音でそう言って、ふわりと床におろされた。


 ギャー、背中が柔らかい床に着いた瞬間声の限りに叫んでいた。目から熱いものが次から次と溢れてくる。叫び泣いたのなんて、記憶にあるかぎり初めてかもしれない。それほどの絶望感と孤独感が背中から伝わっていた。

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