第一話 帰宅部とは
「今日からここにくることになりました、中崎拓也です。よろしくおねがいします」
教卓の隣に立っている中崎はゆっくりと頭をさげた。それと同時にパラパラとまばらな拍手音が教室中に響いた。
「じゃ、みんな仲良くな」
担任こと──鈴木が中崎の肩をたたきながら、言った。そして中崎に耳打ちをする。「んじゃ、あそこの席な」
中崎が座るらしい席に担任の人差し指が向く。
方向確認し、場所を把握した中崎は静かに頷き、好奇心でいっぱいの視線を感じながら指定された席に向かった。
その席は窓際の一番後ろの席だ。
暖かな日差しが机を照らしており、授業中眠くなってしまいそうだ。
親の転勤により高校2年に引越しをし、ここ南高等学校に編入してきた。
私立とあってか、試験はそれほど苦しくもなく楽々とはいることができた。
転勤が多いため転入ということには慣れていたが、どうにもこの好奇心の視線だけは居心地が悪くて仕方がなかった。
中崎は椅子に座り、頬杖をついた。
窓の外を眺めればグラウンドとプール場が見えた。グラウンドでは体育の授業だろうか、ひとクラスぐらいの生徒達が活動していた。
中崎の隣の席相手は女の子のようだ。
ブラウスに黒い膝までのスカートと格好はいたってシンプルだ。
スカートを短くしたり、リボンをつけたとはしてないようだ。
ここの学校は緩い規制なのか、フリフリのリボンや濃い化粧や異様に短いスカートを履く女子生徒が多く見られた。
男子生徒も髪を染めたり、腰パンしたする者が多かった。
不良生徒も多いらしく、男子トイレでたばこを吸っている生徒もいた。
そんな規制のゆるい学校ではあるが、そこまで問題がおきたこともなく、平凡な学校とあまり大差はないのだという。
学力はそれなりに高く、ここの学校から有名な大学へ行った生徒も少なくないのだという。
こんな長ったらしい情報を編入前に聞かされた。
想像と違うため途中で辞める生徒が多いらしくそれを予防するためだという。
そんな話を頭の中で蘇らせ、整理していたところで隣の席の女の子に目がいった。
染めてないのか真っ黒な髪は肩の上らへんでふわふわと揺れていた。
微かにシャンプーの香りがする。
顔立ちもそれなりといっていいだろう。
可愛らしい瞳がいったりきたりしている。
どうやら本を読んでいるようだ。
よくクラスの中には一人はいる静かな感じの子だろうか。
眺めていればふと彼女が顔をあげた。
そして、ゆっくりとこちらへ振り向いた。
淡い青い瞳がじっとこちらを見つめている。
視線が交わり、緊迫した雰囲気が漂った。
「…な、なんだよ」沈黙に耐えかねて口を開けば、彼女はすっと視線をそらした。
そして、再び文字を読み始めたのか瞳が左右にいったりきたりしていた。
一体なんだったのか、と中崎は首をかしげながらも頬杖をついた。




